2020年2月27日、日本政府は新型コロナウイルスの感染症拡大を防ぐため全国の小中学校、高校、特別支援学校を対象に3月2日より春休みまでの臨時休校を要請。これを受けて、多くの教育現場でICTを活用したリモート学習への関心度が飛躍的に高まりました。
しかし、注目度の高さとは裏腹に日本における教育現場のICT化はあまり進んでいません。文部科学省の調査資料によれば、いまだ5.4人の生徒で1台のパソコンを使っているのが実情です。このようなパソコンの普及に加えて、パソコンを使用するデジタル教育のプラットフォーム整備についても、大きな課題を抱えています。
このような問題の解決を目指し、NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)ではかねてより教育ICT事業に取り組んできました。そして、2019年10月にはSmart Education推進室を設立。NTT Comが進める「Smart World」構想の柱の一つとして、「Smart Education」を推進しています。
「Smart Education」は、いつでもどこでも学ぶことができる学びのプラットフォームを通じて、学習者の意思や習熟度に応じたテーラーメイド型の教育を提供するDXソリューションです。この取り組みが描く教育の未来を、Smart Education推進室の室長である宮川龍太郎氏に聞きました。
教育先進国である日本はデジタル教育後進国!?
Smart Education推進室は、NTT Comが創業以来20年にわたり取り組んできた教育ICT事業の経験やノウハウを結集して誕生したチームです。
室長の宮川氏は「長年、教育事業に携わってきたメンバーが集まりコンサルティングからシステム構築、運用管理まで一気通貫でスピード感を持って対応できることが大きな強みになっています」と語ります。

NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部 事業推進部
Smart Education推進室 室長
宮川 龍太郎氏
現在、日本の教育現場は「学力格差の是正」「教員の負荷軽減」「不登校・いじめの抑止」といった問題を抱えていますが、宮川氏は、ここに新たな課題が加わったと指摘します。
「今回のコロナ騒動により、いかなるときでも学びを止めない仕組み作りという新たな課題が加わりました。私たちの提供するクラウド型教育プラットフォーム“まなびポケット”は一連の課題に対する1つの解答だと思っています」(宮川氏)
NTT ComのSmart Educationで中核を担うクラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」とは、総務省「教育クラウドプラットフォーム参考技術仕様」、文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に準拠し、授業・学習系システムに必要な仕様、セキュリティを具備したサービスです。
インターネットで利用するクラウドサービスのため簡単・迅速に導入でき、既存のICT環境の設定変更も不要。インターネットに接続する環境とブラウザさえあれば、プラットフォーム上にある各社のデジタル教材・授業支援ツールがいつでも、どこでも利用できるようになります。学校からメールや電話で直接相談できる専用サービスデスクも設置されており、先生や児童・生徒が1人1つのアカウントを持ち、さまざまなシーンで多様な教育コンテンツ利用を実現しています。
クラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」

日々蓄積されるスタディログなどのデータを分析。子どもたちの学びを支援し、先生たちの選択肢を豊かにする個々に最適化されたテーラーメイド型の教育を実現する。
宮川氏は、日本の教育システムや教員は非常に優れており、世界に類を見ない完成度だと評価します。
「しかし、完成度の高い成功モデルであるがゆえに、新しいスタイルへの変革に踏み出せない状況を生んでしまっています。事実、ICTを活用したデジタル教育という観点では、日本は最下位に近いのです。学校でのポータブルPCの使用率はトップのフィンランドが80%、全体平均が40%、日本は20%にも届きません」
国も危機意識を持っており、小中学校の児童・生徒1人1台のPC、全国の学校に高速大容量の校内LANを整備し、多様な子どもたちに最適化された教育を実現するGIGAスクール構想を打ち出しています。
「現在は教育委員会によるICT環境整備の段階ですが、今後は先生や児童・生徒がいかに活用するかが重要になると考えています。NTT Comとしては、使いやすいインターフェースはもちろん、先生に向けた週1回のオンライン研修や、先生のコミュニティで優良事例を共有するといったサポートを考えています」(宮川氏)
GIGAスクールパック

GIGAスクール構想の「公立学校情報機器整備費補助金」を受けてNTT Comとレノボ・ジャパンが共同開発。端末、デジタル教材、端末管理ツールとオンライン研修をパッケージ化することで、導入後すぐに活用できるようになっている