デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて(第3回)

IoT×ウェアラブルが長距離バスの安全運行を支援

2017.06.21 Wed連載バックナンバー

 ここ数年、ドライバーの労働環境に起因する交通事故が発生した長距離バス。その安全運行を妨げる要因として、ドライバーの疲労が挙げられます。そのような背景もあり、東レ株式会社とNTTが共同開発したウェアラブルデバイス「hitoe®」を使ってドライバーの精神疲労状況を可視化する実証実験が行われました。その模様をレポートします。

 

大きな可能性を持つウェアラブルデバイス「hitoe®」とは

 IoTデバイスのカテゴリとして、身体に装着して利用するウェアラブルデバイスがあります。これらを利用することにより、たとえばメガネ型デバイスを使ってネットワーク経由で送られてきた情報を参照しつつ作業を行う、あるいはリストバンド型デバイスを使って装着している人の行動を把握するといったことが可能になり、ITの活用範囲を大きく広げることにつながるでしょう。このウェアラブルデバイスの1つで、幅広い領域で活用され始めているのが東レ株式会社とNTTが共同開発した「hitoe®」です。

ウェア型生体センサー(機能素材hitoe®)-1

 hitoe®は電気を通す導電性高分子をナノファイバーユニットに含浸させ、心電位や筋電位などを安定的に収集することを可能にした生地であり、実際に利用する際にはシャツなど衣服型ウェアラブルデバイスに仕立てたものを着用します。これにhitoe®のデータを送受するトランスミッターとスマートフォンを組み合わせ、身体情報をリアルタイムにモバイル回線経由で収集することが可能になります。

 hitoe®の活用例として、作業員の熱ストレスを可視化して体調管理や事故防止に役立てるといったことが挙げられ、実際にいくつかの企業で実証実験が行われています。

 

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hitoe®でデータを計測し、運行中のドライバーの精神疲労度や緊張度を推定

 今回は、精神的な疲労(中枢性疲労度)や緊張度をhitoe®で計測するシステムを利用し、長距離バスの運行中におけるドライバーの状態を可視化するという検証が行われました。

 ドライバーの疲労は、とりわけ長距離バスの場合、事故につながりかねません。そのため、旅客自動車運送事業運輸規則では、疲労などによって安全な運転を継続できない恐れがある場合は、交代のための運転手を配置することが定められているなど、疲労を防いで安全に運行することが何より重要です。

 しかし、問題はどの程度疲労しているのかを把握することは困難であるという点です。精神的な疲労を検証するための方法として、一般的に使われているのがフリッカー値検査です。これは機器の中で光を高速で点滅させ、その光のちらつきを判別できるかどうかで疲労の度合いを測定します。ただしこの検査方法では、フリッカー測定器をのぞき込む必要があるため、運転中に測定することができません。

 そこで今回のシステムでは、hitoe®を使って得られるRRI(RR Interval)と呼ばれる値から精神疲労度を推定するロジックを独自に開発して利用しています。今回の検証では、hitoe®で得られたデータをリアルタイムでクラウドに送信し、そこで計算を行って精神疲労度を推定、同時に緊張度も算出しています。これにより、従来は把握が難しかったドライバーの精神疲労状態をリアルタイムに可視化することが可能になりました。

ウェア型生体センサー(機能素材hitoe®)-2

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精神疲労度や緊張度の可視化に成功、休憩ポイントの見直しにも役立つ

 実際に長距離バスのドライバーに着用してもらい検証したところ、まず心理的安定度については、運転開始時や乗客迎車、山間部走行時に緊張が高まり、高速道路のサービスエリアでの休憩時はリラックスしているという結果が得られました。精神的な疲労である中枢性疲労度については、運転し始めてから徐々に疲労が蓄積し、車両が多い区間など運転に気を遣う場面では疲労度が高まり、休憩によって回復するというグラフとなっています。

可視化データ例-1

 一方、街中の短距離を走るコミュニティバスでの分析も行われました。この検証において、車両のエンジンが故障して遅延が発生しましたが、この際にドライバーの緊張度が上昇しましたが、故障状況を運行管理者に連絡し、代わりのバスの手配を依頼し、了解を得て緊張が解けるといった心理状態を把握することができました。また道路の混雑状況により、定刻運行に遅延が生じやすい区間では、実際に遅延したかどうかに関係なく緊張が高まるといったこともわかっています。

可視化データ例-2

 こうした緊張度や疲労度を本人が自覚するだけでなく、hitoe®を使って可視化し、第三者も状況を把握できるようにすることのメリットは大きいでしょう。たとえば長距離バスであれば、単純な距離や時間ではなく、ドライバーの精神疲労度合いに応じて休憩ポイントを設定するといったことが可能になってきます。

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APIによる運行支援システムとの連携も可能な「運転者モニタープラン」

 NTTコミュニケーションズでは、このhitoe®を使ったドライバーの緊張度や精神疲労度を把握するためのソリューションとして「IoT Platform Healthcareパッケージ 運転者モニタープラン」を提供しています。特に長距離を走るバス、あるいは多くの荷物や危険物を載せて走るトラックの運行では、事故発生による影響は極めて甚大です。そこでhitoe®を活用し、ドライバーの精神疲労状況をリアルタイムに把握すれば、事故を未然に防ぐ上で大いに役立つのではないでしょうか。

 運転車モニタープランには、外部のシステムと連携するためのAPIも提供されています。これを利用し、SAP社が提供する運行管理システムである「SAP/CTS(Connected Transportation Safety)」上でドライバーの疲労度を表示する仕組みの開発が進められているほか、既存の運行システムと接続するといったことも想定されています。

 また、前述したようにhitoe®は熱ストレスも推定できることから、建設業や警備業、あるいは工場などで働く作業者の身体状況を把握し、熱中症に至る前に休憩を促すといった用途でも活用することが可能となっています。これらの業界では、熱中症対策が大きな課題となっていますが、そのソリューションとしてhitoe®は有効な選択肢となり得るでしょう。

 IoTの世界はさまざまな領域に広がりつつありますが、その1つとしてウェアラブルデバイスを使った人の状態の可視化はさまざまな課題を解決できる可能性を秘めています。ウェアラブルデバイスを使って業務上の課題を解決することはできないか、いま一度考えてみてはいかがでしょうか。

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