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京セラはなぜ「AI翻訳」の全社一斉導入を決めたのか
2020.03.27

デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて第36回

京セラはなぜ「AI翻訳」の全社一斉導入を決めたのか

著者 Bizコンパス編集部

多言語展開でコミュニケーションの壁を打破したい

 現在、同社は国内と海外をあわせて約25,000人の社員がCOTOHA® Translatorを利用できる環境になっています。

 「実際に利用した社員は7,000名弱、アクティブユーザーは研究開発、法務などを中心に2,000名ほどです。月ベースで見ても、多少の上下はあるのですが、平均してかなりの頻度で利用されている印象です」(上田氏)

 利用ログの分析によると、現在はA4原稿換算で週に約15,000~20,000枚、月に約70,000枚のテキストが翻訳されています。岡本氏は、すべてを外部委託すれば膨大なコスト削減効果になりますが、導入による効果を試算するのは非常に難しいと語ります。

 「中国に赴任していたころは通訳が不足していたため、絶対に翻訳が必要な文書以外は漢字をななめ読みしてニュアンスで把握するしかありませんでした。COTOHA® Translatorは、今まで諦めていたことが解決できる画期的なツールなので効果を試算しづらいのです」

 平野氏は社内に専門の翻訳部署はないとしながらも、翻訳にかかる人的稼働は大幅に軽減できていると分析します。

 「1日3,500枚、1人100枚の翻訳に8時間かかると仮定すれば、35人がかかりっきりになる計算になります。それは極端かもしれませんが、目に見えない付加価値やコミュニケーションが活性化し、品質も上がっている。効果は出ていると思います」

 日本語・英語、日本語・中国語の翻訳サービスに加え、同社では多言語翻訳サービスも全社に導入しました。これは翻訳需要の多い23言語のペア(該当言語を日本語に翻訳/日本語を該当言語に翻訳すること)をピックアップしたものであり、一般的な日本企業が必要とする翻訳ニーズの約97%をカバーできるオプションサービスです。

 「英語、中国語はもとより、多言語の翻訳で言葉の壁を壊すことができれば、世界中で働いている社員がストレスなく円滑にコミュニケーションできるようになるでしょう。その効果は大きいはずです」(上田氏)

 今後、同社ではAI翻訳サービスのグローバルでの利用促進を図っていく計画です。岡本氏は、多言語対応のスタートにより、さらに社内の普及スピードを上げていきたいと意気込みます。

 「トライアンドエラーで進めていくスピード感が、世界のデジタルトランスフォーメーションの常識です。石橋を叩いて渡る従来のやり方は通用しません。この先もAI翻訳と他サービスを組み合わせるなど、よりスピーディなフットワークで便利な仕掛けづくりにチャレンジしていきたいと考えています」

 昨年、経営情報システム部ではデザイン思考に基づき自由な発想で新しいアイデアを生み出すプロジェクト「KJ2020」を立ち上げました。これは8割の労力を本業に、2割の労力を新しいプロジェクトに挑戦させる取り組みです。

 「KJ2020では、部門をまたぐ自由なチーム編成で自発的なチャレンジができます。私たちは音声認識による議事録の自動作成、AIアシスタントによる業務の自動化など、新たな発想でプロジェクトを先導していく部門を目指していきます」(平野氏)

 古くからアメーバ経営による小規模チームで事業の多角化を図ってきた京セラにとって、AI、IoTといったデジタライゼーションの潮流は大きな追い風になっています。AI翻訳サービスの導入でコミュニケーションの質や速度、密度の向上を目指す同社の新たな挑戦に注目です。

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