一般的なAI翻訳サービスの選定では、翻訳の精度やツールとしての使いやすさ、導入や運用コストなどが重視されます。しかし同社では、以前よりクラウド型AI翻訳サービスの導入を検討する際、その都度セキュリティの壁に阻まれていました。
顧客情報を含むグループ内の機密情報を安全に管理するために、クラウドの利用には慎重になっていたのです。しかし業務の効率化や高度化のために、クラウド型AI翻訳サービスの導入は欠かせない条件でした。
「デロイト トーマツ グループは非常に厳格なセキュリティ基準を定めていますが、今回はSAML認証によるシングルサインオンを実装すれば、クラウドサービスを導入できると判断しました。キャリア、ベンダー各社から受けた複数サービスの中で、その条件を唯一クリアしたのがNTTコミュニケーションズ株式会社からの提案だったのです」(安本氏)
同社が選定したのは、AI翻訳プラットフォームサービス「COTOHA® Translator」です。ニューラル機械翻訳技術によりTOEIC960点超レベルの翻訳精度を実現し、さらに翻訳に要する時間を人間の数十分の一から数百分の一に短縮できます。さらに業界特有の専門用語を登録できる辞書機能も備えており、使いながら翻訳精度を高めるチューニングができることも大きな強みでした。
「機能的には甲乙つけがたいサービスはあったのですが、やはり決め手はセキュリティと利便性を両立できるSAML認証に対応していたということです。加えてDLSはもとより、全社展開を想定した場合に定額制で利用できるコストパフォーマンスの高さも評価しました」(安本氏)
「COTOHA® Translator」は、手始めにDLSを含むコーポレート機能内のスタッフ600名に試験導入されます。
「いきなり全社に展開するとシステムの負荷が大きいと判断し、運用の感覚や課題感をつかむために1カ月ほど回してみました。ここで一定の手ごたえをつかんだため各ビジネスの現場にアナウンスし、全社展開しています」(真鍋氏)
導入から約半年が経過し、現在はグループ内で約2,000 IDが利用されています。真鍋氏は、急速な普及の理由は“使い勝手の良さ”にあると述べます。
「マニュアルを読まなくても直感的に操作できて、OfficeやPDFのファイルをドラッグ&ドロップすれば、ファイル形式を保ったまま翻訳できる利便性の高さが好評です。本来、新たなツールを社内導入する際には大々的に研修が必要になりますが、今回はグループ内への告知しかしていません。簡単に使いこなせるようになるため、どんどん利用者が増えています」