幅広いパートナーとの協創に向け、NTTドコモが2018年2月に立ち上げたのが「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」です。プログラムでは、5Gに関する情報共有を促す技術参考資料の提供、参加者同士のマッチングの機会をつくるワークショップの開催、そして最新の設備により5Gの実証実験ができる環境を提供しています。
「いまやプログラムには、3,000社を超える企業・団体にご参加いただいています。すでに200件以上のソリューション協創事例もあり、地方創生、医療介護、防災・防犯、労働力不足、一次産業などの広い領域で多くの成果を上げています」(中村氏)
まず中村氏が事例として紹介したのが、東京女子医科大学との協創による「遠隔高度医療」です。同大学では、手術室内の医療機器をネットワークでつなぎ、可視化する医療システムを運用しています。
従来は手術室の執刀医に対し、手術室外で待機しているベテラン医師が助言を行うというシステムでした。そこに高速・大容量、低遅延の5Gを組み合わせることでロケーションにとらわれない遠隔高度医療を実現しています。
「例えば、ベテラン医師は外出先から端末で分析結果を見て、執刀医に指示が出せます。さらに手術室を大きなトラックなどに載せ、移動性を持たせれば災害現場でも手術ができるようになります」(中村氏)

ソニーとの協創では、モビリティと映像配信を組み合わせた新しい広告が生まれました。そこで開発されたカートには、前後左右に超高感度カメラセンサーが搭載され、360度の4K映像が撮れるようになっています。
「4K映像を5G経由でサーバーに送り、カートの周囲にいる人の属性を画像認識AIで分析し、属性に最適な広告をカート外部のサイネージに配信します。広告だけではなく、5Gを介したカートの遠隔運転の実証実験も進めています」(中村氏)

住友電工との協創例は、「ドライバーや歩行者の安全・安心」に向けた取り組みです。これは、自動車だけでなく、道路や建造物といった交通インフラにもセンサーを設置し、5Gでリアルタイムに情報を収集、解析することで自動車や歩行者の事故を回避するものです。「さらにコネクテッドカーに搭乗するドライバーの快適な運転をサポートする役割も担います」(中村氏)

自動車部品メーカー、ヴァレオとは「遠隔運転」の実現に取り組んでいます。予期しない障害物など自動運転では対応が困難な状況が発生した場合、遠隔運転に切り替えて回避するというものです。
「横須賀にある自動運転車両を、東京モーターショーの会場に設置したコックピットから遠隔運転する実証実験を行いました。これは(特定の場所でシステムがすべてを操作する)自動運転レベル4の実現に向けた取り組みです」(中村氏)

5Gの実証実験のごく一部を除くだけでも、DXのタネは各方面で着実に広がりつつあることが分かります。