デジタルトランスフォーメーションの実現へ向けて(第1回)

ビジネスリーダー500人に聞く!DXへの取組み実態

2017.06.07 Wed連載バックナンバー

 AIをはじめとする先進的な技術を活用してビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメーション」が企業の間で広がり始めています。実際どのような企業が、どの程度取り組んでいるのでしょうか。今回、デジタルトランスフォーメーションについて調査を行ったIDC Japanの寄藤幸治氏にお話を伺いました。

 

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デジタルトランスフォーメーションは“脅威”ではなく“機会”

 ビッグデータIoT、AIを活用して新たなビジネスを創造、あるいは既存の事業を変革する、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が浸透しつつあります。スマートフォンを活用することでタクシー業界に大きな変革をもたらした「Uber」、あるいはインターネットと民泊を結びつけて大きな市場を切り開いた「Airbnb」などの例からも分かるとおり、大きな可能性を秘めたデジタルに期待が寄せられているというわけです。

 このデジタルトランスフォーメーションについて、国内企業はどのように捉えているのでしょうか。今回、デジタルトランスフォーメーションに対する各企業の取り組みを調査したIDC Japan株式会社の寄藤幸治氏は、企業はデジタルトランスフォーメーションを“機会”と捉えていると話します。

 「従業員数500人以上の企業500社に対して、デジタルトランスフォーメーションについての調査を行いました。その中で、デジタルトランスフォーメーションが自社のビジネスにどのような影響を及ぼすのかを尋ねたところ、『自社の業務プロセスを変革できる』、『新規事業を作り出せる』という理由でプラスの影響があると回答した割合が43.2%に上りました。一方、『競合他社が競争力を強化する』などの理由でマイナスの影響だと回答した割合は14.2%に留まり、プラスの影響だと考えている企業が約3倍も多かったのです。この結果を見ると、国内企業はデジタルトランスフォーメーションを“脅威”ではなく、“機会”と捉えていることがわかります」

DXが自社事業にもたらす影響

6割以上の企業がすでにプロジェクトを推進

 すでにデジタルトランスフォーメーションに向けた具体的な取り組みを進めている企業も少なくないようです。寄藤氏はアンケート結果から見えた、各企業におけるDXの取り組みについて次のように説明しました。

 「今回のアンケートでは、67.4%の回答者が自部門で何らかのデジタルトランスフォーメーションに向けたプロジェクトを行っていると回答しました。まず営業やマーケティング、顧客サポート関連では、データ分析を通じたターゲット顧客の特定や顧客の与信、市場動向の把握、クロスセルやアップセルが上位に並んでいます。製造関連ではIoTやAIを活用した製造プロセスの改善や設備管理が上位を占めました」

実施DXプロジェクト:顧客接点

実施DXプロジェクト:製造

 今後注目度が上がってくるであろうデジタルトランスフォーメーション関連のプロジェクトとして、営業/マーケティング関連ではARやVR、AIの活用、製造関連では技術伝承の問題を解決する取り組みが挙げられました。

 「たとえばARやVRを活用した体験型の店舗や顧客へのプロモーション、AIを活用した業務の効率化といったものが、今後注目度が上がってくると考えています。製造関連では、労働力不足を背景として、製造部門が持つさまざまな技術を若手スタッフにどう伝承していくのかが課題となっています。そこでITを活用して技術伝承を実現するといったプロジェクトも注目度が高まると見ています。異物混入防止や購買品検査など、熟練スタッフが自らの目を使って行っていた作業工程をITでどう実現していくのかということもポイントとなり、そのためのプロジェクトも今後増えていくでしょう」

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デジタルトランスフォーメーションの推進には経営層の関与が重要

 それでは、デジタルトランスフォーメーションに取り組むための予算はどの部門が負担しているのでしょうか。従来のIT投資であれば、まずIT部門が負担するのが一般的でしたが、デジタルトランスフォーメーションでは少し様子が異なるようです。調査結果では、IT部門の予算と事業部門の予算、そして全社予算のそれぞれが1/3ずつと分かれました。

 さらにデジタルトランスフォーメーションの推進部門についても、IT部門主導、IT部門と事業部門の混成部隊、さらに事業部門主体がおおよそ1/3ずつであり、デジタルトランスフォーメーションを誰が推進するのか、誰の予算を使うのかが、定まっていない状況が伺えます。

DX推進組織

 デジタルトランスフォーメーションを推進する責任者について尋ねた設問では、「事業部門の責任者」と「役員/経営層」、「事業部門のマネージャー」の合計が8割を超えました。一方、情報システム部門の責任者やマネージャーと回答した割合は14%程度にとどまっており、デジタルトランスフォーメーションが従来のIT投資とは異なる位置付けとなっていることがわかるでしょう。

DX推進の責任者

 デジタルトランスフォーメーションを促進する要因としては、「効果の見える化」と「経営層の推進/リーダーシップ」が上位に並びました。この結果を踏まえ、寄藤氏は「こうした設問では、必ず効果の見える化や経営層の関与が挙がりますが、実際に経営層が責任を取るという企業は1/3程度にとどまるのです。そもそもデジタルトランスフォーメーションは自社の事業や業務を大きく変革するという施策であるため、積極的に取り組むには経営層のリーダーシップが必要になってくるのではないかと思います」と語りました。

DX促進要因

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ベンダー選びもデジタルトランスフォーメーションのポイント

 前述の調査結果から、デジタルトランスフォーメーション関連のプロジェクトはビジネスに直接関与する、事業部門の存在感が大きいことがわかります。とはいえ、当然ながらITの専門家ではないため、事業部門だけでビッグデータやクラウド、IoTおよびAIといったIT技術を駆使して課題を解決するのは難しいでしょう。そこで重要となるのが相談相手です。

 「デジタル化を進めるにあたり誰に相談するのかを聞いた結果、最も多かったのは社内の情報システム部門ですが、外部のベンダーやコンサルタントも2割以上という結果になっています。さらに外部のパートナーに求める要件についても聞いたところ、コンサルティングから実行支援まで一貫して提供してくれることを多くの人が挙げました。つまりアイデアだけで実装は請け負わない、その逆でアイデアがあれば実装はしますといったベンダーではなく、上流工程から最後の実装までしっかり責任を持って対応してほしいというわけです」

DXの相談相手

DXのパートナー要件

 こうした調査結果を示しつつ、寄藤氏は「共創」の考え方も採り入れるべきだと提言します。

「デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みは各企業で始まったばかりであり、ITベンダー側においても十分な知見が蓄積されているとは言い難い状況です。そのような中、ITベンダー側でも、徐々にデジタルトランスフォーメーションのための取り組みが進んでいます。そこで企業とパートナーとなるITベンダーが対等な立場で、場を共有しながらアイデアを作り上げていく『共創』の考え方を採り入れ、外部のパートナーを活用すべきではないでしょうか。その際、事前にパートナー候補を精査して選び、活用していくことが大切でしょう」

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積極的にデジタルトランスフォーメーションに取り組むリーダー企業

 もうひとつ寄藤氏が取り上げたのは、業界内での自社の位置付けと、マーケティング領域におけるデジタルトランスフォーメーションへの取り組み案件数をクロス集計した結果です。この結果を見ると、自社がリーダー企業(市場シェアや製品/サービスの先進性の点からリーダーポジションにいる企業)であると回答した人の方が、チャレンジャー企業(リーダー企業に挑むチャレンジャーのポジションにいる企業)やその他の企業(フォロワー、ニッチャー、分からない、の合計)よりも、デジタルトランスフォーメーションにつながるプロジェクトを数多く行っていることがわかったと言います。

 「自分たちはリーダー企業ですと回答した人は、現時点で平均して3.73件のデジタルトランスフォーメーション関連のプロジェクトに取り組んでいて、今後の計画も3.11件あります。全体の平均はそれぞれ2.96件と2.57件であり、リーダー企業の方が積極的にデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいることがわかります。もし、この状況が続けば、リーダー企業がどんどんと事業を拡大させ、2番手以下との差が開いてしまうことになるかもしれません。そうならないために、チャレンジャーやフォロワーの企業においても、デジタルトランスフォーメーションに積極的に投資すべきではないでしょうか」

 ITの普及は私たちの生活やビジネスを大きく変えましたが、今後さらにAIに代表される革新的な技術が浸透すれば、社会は大きく様変わりしていくでしょう。このような大きな変化に追従するために、デジタルを活用した自社のビジネスの変革について、そろそろ真剣に考えるべき時が来ていると言えそうです。

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Bizコンパス編集部

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