このような状況で、データ利活用をはじめとする部分最適によって生じる課題を解決するためには、どういった取り組みが必要になるのでしょうか。寄藤氏は「お客さまをはじめとする社外とつながる外部プロセス、そして社内で完結する内部プロセスを一体化し、大きな1つのシステムの流れとして捉えるべき」と指摘しました。
「それぞれのプロセスから生み出されるデータを統合し、それを分析することによって、よりよい考察を得てアクションの精度を高める。こうした取り組みを進めるべきでしょう」
IDCの提唱する「DXプラットフォーム」

このように話した上で、「こうした全体最適を実現できるのは、全社視点で物事を考えられて、なおかつ既存のITシステムとつなぐことができるCIOや情報システム部門です。そのため、あらためて情報システム部門の役割を見直し、またそこに在籍している人たちが積極的に役割を果たすべきではないかと考えています」と、情報システム部門に対する期待を述べます。
ただし同じITであっても、それまでの業務アプリケーションの開発/運用などといった業務と、デジタルトランスフォーメーションの推進では大きく性格が異なります。そのため、情報システム部門自身のカルチャーも変革しなければなりません。そのために必要なこととして寄藤氏が話したのは、「Fail Fast+Small Success」と「ともかく、やらせてみる」でした。
Fail Fast+Small Successについて、寄藤氏は「デジタルトランスフォーメーションがそんなに簡単に成功するわけはない、だから早く失敗しておこう。こういったことがデジタルトランスフォーメーションのプロジェクトで言われます。とはいえ、失敗ばかりしていたら疲弊してしまいます。そこで、小さな成功を積み上げてモチベーションを高めていくことが求められます」と説明します。
このような失敗、あるいは成功を積み重ねるためにはまずチャレンジする必要がありますが、情報システム部門にそれだけの余裕がないことも珍しくありません。寄藤氏は情報システム部門の現状を認めつつ「2人でも3人でも、情報システム部門の人材を普段の業務から引き離して、失敗してもいいので小さな成功を目指す新しいプロジェクトをやらせてみる。そして、そのメンバーを中心に組織全体を変えていく。こうした方向性の取り組みも重要です」と話しました。
最後に寄藤氏は、IDC Japanの提言として次の3点を示しました。
1. デジタルトランスフォーメーションとはデータの有効活用のこと。データを持ち、その利用に習熟している情報システム部門が中核的な役割を果たすべき
2. デジタルトランスフォーメーションの中核を担うべき情報システム部門は、技術、人材、カルチャーの3つの視点で変革を進める必要がある
3. 「自己変革」した情報システム部門が、事業部門、デジタル推進部門とともにデータの有効活用を行うことで、自社の業務変革、ビジネス創出をリードすべきである
デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組み、そして情報システム部門のこれからを考える上で、寄藤氏が示したこの3つのポイントは大いに参考になるのではないでしょうか。
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