エバンジェリストに聞く!これからのクラウド戦略

デジタル化推進プロジェクト、IT部門は何をすべきか

2017.05.26 Fri連載バックナンバー

 デジタルトランスフォーメーションによる変革が強く求められている中、企業におけるクラウドの位置づけや、IT部門に求められる役割も変化しています。クラウドをデジタル戦略の中略と位置づけて推進している企業はどの程度いるのか、企業は今後どのような舵取りが必要なのか。NTTコミュニケーションズのクラウド・エバンジェリストである林雅之氏に、伺いました。

 

クラウドのハイブリッド化に潜む「落とし穴」

 ITを活用して新たなビジネスを創出する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の実現、そして既存システムの運用効率向上を図る上で、もはやクラウドは欠かせない存在となりました。実際、クラウド化の波は幅広い領域に押し寄せており、たとえばオンプレミスのままで運用されることが多かった基幹系システムも、将来的にはクラウドシフトが進むとされています。

 昨今のトレンドとなっているのが「ハイブリッドクラウド」。システムの要件に合わせて最適なクラウド環境を使い分けることを目的に、複数のクラウドサービスやプライベートクラウドを組み合わせるもので、特定のクラウドサービスのみを利用するよりも柔軟にシステムを構築できるというメリットがあります。
 

 

ハイブリッドクラウドのイメージ

 しかし、NTTコミュニケーションズのクラウド・エバンジェリストである林雅之氏は、無秩序なハイブリッドクラウドの構築には落とし穴があると警告します。

 「確かにハイブリッドクラウドには、システムに応じて適材適所でクラウドを使い分けられるというメリットがあります。とはいえ無計画にさまざまなクラウドを導入してしまうと、さまざまな連携コストが発生する点に注意すべきです」

 

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7割近くの企業が見直している!――“連携コスト”に着目したネットワークとは

 具体的な連携コストの1つとして、大きな割合を占めることになるのがネットワークです。異なるクラウドで運用されている複数のシステムをデータ連携したいといった場合、当然ですがそれぞれのクラウドがネットワークで接続されている必要があります。このクラウド間を接続するネットワークも企業にとって大きな負担となるほか、接続先となるクラウドの数が増えればITインフラの複雑化を招くことにもなりかねません。

 ネットワークの品質にも意識を向けるべきでしょう。ネットワークにトラブルが発生すればクラウド上のシステムにアクセスできなくなるほか、システム間連携にも支障を来すなど、業務に大きな影響を与えることが十分に考えられるためです。IDC Japanの調査によれば、WANを構築している企業のうち、クラウド導入に伴ってWANの見直しを行った企業は66.9%に達しているとしています。この数値からも、クラウドにおいてネットワークがいかに重要な存在であるかがわかります。

国内法人ネットワークサービス利用動向調査

 さらに林氏は、コストや品質に加え、ネットワークを柔軟にコントロールできるかどうかもポイントになると話しました。

 「SDNSD-WANといった新たなテクノロジーが広まりつつあり、これらを採り入れたサービスも登場し始めています。こうした技術を利用し、ネットワークを柔軟にコントロールできる環境を整えることも今後のクラウド活用において重要な要素になっていくと考えています」

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“成熟度ステージ5”の企業はわずか6.3%という実態

 デジタルトランスフォーメーションを実現するためのツールとしても、クラウドは重要な役割を担っています。ITを活用して新たなビジネスを創出するといった場面では、試行錯誤を繰り返しつつベストな解を見つけていくことになるでしょう。この際、「必要なときに必要な分だけ使える」クラウドであれば、無駄な投資を抑止することが可能となり、新たなビジネスの創出にチャレンジしやすい環境を整えられます。

 しかしながら、現状ではこうした“攻めのIT”を実現する、あるいは既存の経営課題を解決するためのツールとしてクラウドを活用している企業は決して多くないようです。IDC Japanが公表しているクラウド利用の成熟度を調査した結果によれば、最も成熟しているとされるステージ5の「継続的革新」にまで至っている企業はわずか6.3%であり、多くの企業が「限定的導入」のステージ2から「標準基盤化」のステージ3にとどまっているとしています。

国内クラウドにおけるデジタル化の成熟度

 この点について林氏は「海外と比べると、国内におけるクラウド利用の意識に差が生じているという状況です。クラウドをデジタル戦略の中核と位置付け、推進して行くようなアプローチがもっと必要になるでしょう」と述べました。

 デジタル化が進めば、ITサービスのデリバリーモデルや収益モデルも変わる可能性があるようです。

 「従来、ITベンダーは企業の情報システム部門に対してアプローチするケースが多かったわけですが、デジタル化が進めばターゲットが広がり、エンドユーザーに直接提案するといった形が増えるなど、IT活用の枠が大きく広がっていくと見ています。同様にクラウドがターゲットとする領域も、主に情報システムが中心といった状況から、デジタル化を推進するエンドユーザーを含む形に変わっていくはずです」

デジタル化による新しいビジネスモデル例

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IT部門がデジタル化を推進する組織になる――デジタル時代のIT部門の役割とは

 それでは、デジタルトランスフォーメーションの役割はどの組織が担うべきでしょうか。ガートナーの「『バイモーダル』なIT組織に関する調査結果」では、「デジタル・テクノロジの実装プロジェクトを担当する組織」はどこなのかを調査した結果、「従来のIT組織とは別の組織」は29.4%、「従来のIT部門内の専門チーム」が40.6%、そして「プロジェクトチーム(ビジネス部門とのタスクフォース)」が28.1%だったとしており、回答が割れています。この点について林氏は、「情報システム部門がデジタル化を推進する組織になることが望ましい」との見解を示します。

デジタルトランスフォーメーション推進組織

 「これまでの情報システム部門は事業部門の要求に応じてシステムを構築したり、既存のシステムを効率的に運用したりすることが中心でした。しかし今後は、全社的なクラウド活用の推進、あるいはITを活用した新しいサービスを開発するといったミッションにシフトし、イノベーションを担う組織に変わっていくべきだと思います」

 そのために何が必要かを尋ねたところ、林氏は「外に出て、積極的に情報収集を行う」ことだと話しました。

 「たとえば金融業界であれば、現在FinTechに関連したコミュニティがいくつも立ち上がり、積極的に情報交換が行われています。こうした社外のコミュニティに参加し、アンテナを高くして情報を収集する。それによって得られた知見を自社のビジネスや業務改善などにつなげていくといった営みが大切でしょう。それに加え、自社のビジネスにおいてコアな部分については、外部に開発を任せるのではなく、アジャイル開発の手法などを採り入れて内製するといったことも検討すべきです」

 クラウドやビッグデータIoT、AIといったテクノロジーが登場したことで、ビジネスにおけるITの役割が大きく変わりつつあるのは事実でしょう。このような変化を捉え、ITの専門家として組織を牽引できるかどうかは、今後の情報システム部門を考える上での大きなポイントとなりそうです。

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Bizコンパス編集部

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