2019.01.18 Fri

 あらゆるサービスや商品が、一人ひとりのTPOに合わせて提供される時代が目の前に来ています。

 スマホやIoTから得られるさまざまな情報によって、顧客満足度を高めるCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)のテクノロジーが、クラウドやAI(人工知能)の進化によって新たな局面を迎えているためです。

 その一例を示したのが、クラウド型のCRMサービスを世界15万社に提供する米セールスフォース・ドットコム(以下セールスフォース)です。12月5日に都内で開催された年次イベント「Salesforce World Tour Tokyo 2018」では、企業が持つさまざまな顧客データを統合、連携させることで、ひとりの顧客を全方位的に把握できる新サービス、「Customer 360」を発表。またイベント会場では、スポンサー企業によるセールスフォースのサービスを活用したソリューションのブース展示やプレゼンテーションも実施されました。

 これら新しいデジタルテクノロジーによって「顧客と企業の関係」はどのように変化するのでしょうか。「Salesforce World Tour Tokyo 2018」のイベントの模様を通じてひも解きます。

 

顧客を360度で把握する「Customer 360」

「これは我々のアプリケーションをすべてつなげるものです。顧客一人ひとりに対してユニークIDを付与し、紐付くデータは1カ所で確認することができます。それによって顧客をより深く理解することにつながります」

 イベント基調講演に登壇した、セールスフォース社CTOでCo-founderであるパーカー・ハリス氏はこう切り出しました。

 セールスフォースでは、顧客情報の一元管理による営業支援を出発点に、カスタマーサービスやマーケティングの自動化、eコマースといったサービスを展開しています。「Customer 360」は、企業内で縦割りになった組織やプロセス、インフラを越えて「顧客とのそれぞれのタッチポイントを連携させたい」というユーザーの声に応えるため開発されたカスタマーサクセスプラットフォームです。

「これによって、自社顧客の一連のアクションを流れの中で捉えることを可能とするのです」(パーカー氏)

 

「MuleSoft」によって、あらゆるビジネスデータを統合

 とはいえ、セールスフォースのサービスだけではなく、別のシステムで管理している顧客情報もあるでしょう。こうした外部の顧客情報を取り込むために、同社はデータ統合プラットフォームを手がけるMuleSoftを買収し、そのテクノロジーを用いることを発表しました。このテクノロジーは、セールスフォースの各サービスや別のクラウドサービス、あるいはオンプレミスに構築されているシステムなどを接続します。

 接続した後、顧客情報をセールスフォースのプラットフォームに取り込めば、「Customer 360」のユニークIDで顧客データを統合的に管理できます。ハリス氏は、「これによって非常にパーソナライズされたOne to Oneのアプローチが可能になります」と述べました。

 さらに紹介されたのが、ビジネスユースの音声アシスタント「Einstein Voice」です。ユーザーがセールスフォースのアプリを起動したスマートフォンに向かって、商談の内容や会議でのメモなどを読み上げると、AIエンジン「Einstein(アインシュタイン)」がその音声内容を解析して、セールスフォース上に入力されているスケジュールや商談完了予定日、商談金額などを自動で更新してくれます。

「Einstein Voice」を使ったデモも行われました。百貨店の購買担当者に扮したスタッフがスマートフォンに「春の洋服のラインについてのミーティングメモ。フォローアップミーティングは購買チームと金曜日までにやること」と話しかけると、Einstein Voiceが、「購買」「金曜日」などの用語を理解して、金曜日にミーティングのタスクを設定。購買チームのメンバーに自動通知されるというものです。このデモにより、AIがすでに身近なものであることを来場者に印象づけました。

 

顧客ニーズを先回りするWILLERのサービス

 基調講演では、高速路線バスを多数運行しているWILLER株式会社の事例も紹介されました。

 同社のデモでは、夜行の高速バスで大阪に向かう女性客の様子が再現されました。車内が肌寒いと感じた女性客がスマートフォンのチャットでその旨を伝えると、オペレーター画面には「Customer 360」に登録されたその女性客の情報が表示され、オペレーターは情報を確認しながら空調を調節するなどのサポートを実施します。

 さらに、AIエンジン「Einstein」がその女性客のサービス利用歴などから、好みに合いそうな現地のレストランを解析。バスが目的地に到着する時間帯にレコメンドレストランのクーポンを送るという、顧客ニーズを先回りして提案をするシナリオが紹介されました。

 WILLER取締役である横溝英明氏は、デジタルテクノロジーを駆使しながら、顧客ニーズを先回りする取り組みについて、次のように話します。

「顧客が欲していることを予測して届けるため、現在は顧客属性などに合わせてカスタマージャーニーを組み、One to Oneで提案しています。また我々は、旅マエ、旅ナカ、旅アトで顧客の声を積極的に集めています。これをしっかり分析して、関連部署に伝えて改善していくことを繰り返しています」

 顧客一人ひとりのニーズを把握し、先回りしてサービスを提案することで新たなニーズを発掘することは、多くの企業が、今後取り組むべき課題だと認識しています。またVOC(Voice of Customer)と呼ばれる顧客の声の活用も、経営課題として挙げられることが多い項目です。WILLERの事例は、そういった従来からの手法をデジタル技術により効果的に実現している例と言えるでしょう。

 このほかにも、「Customer Success Expo」と名付けられた展示エリアでは、セールスフォースや89社のパートナー企業のブースが並び、最新のプロダクトやソリューションを紹介していました。

 また、各社がソリューションのプレゼンテーションを行う講演エリアもあり、パートナー企業の1社であるNTTコミュニケーションズは、「デジタライゼーションの壁を乗り越えろ」というテーマで、プレゼンテーションを行っていました。

 

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Bizコンパス編集部

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