企業が顧客接点のチャネルとして、電話やWeb、メールなどの窓口を設け、窓口ごとにコンタクトを運営するケースは少なくありません。しかし、このような縦割りの運営では各センターが持つデータの集約・分析が困難なため、経営判断の指針となる「率先して取り組むべき、優先度の高い課題」が見えにくいという問題が出てきます。複数のコンタクトセンターをクラウド基盤に全面的に集約したローソンの狙いは、接客品質を高めるための課題の可視化でした。
「いま店舗で何が起きているか」を把握したい
全国に約14,000店舗のコンビニエンスストアフランチャイズチェーン展開を手がける株式会社ローソン。同社が2016年より3カ年計画で取り組んでいるのが、顧客の生活全般のニーズを満たす商品力、売場力、接客力などの強化に向けた「1000日全員実行プロジェクト」です。その一環として、取り組みの輪を広げていった施策の1つがコンタクトセンター統合プロジェクトでした。
同センターの窓口は大きく顧客向けと加盟店向けがあり、年間約160万件の問い合わせがあります。顧客向けには電話やメール、Webフォームの窓口を開設し、商品やサービス、接客などに関する問い合わせを受け付けています。一方、加盟店向けの窓口は電話のみとなっています。理由は「システム系」「什器等の修繕系」「什器系」「オペレーション系」など、項目が多岐にわたり、急ぎの応対が求められるケースが多いためです。
同社では従来のセンターの各対応窓口間で発生していた「たらい回し」を解消した業務効率化、複数拠点にまたがるシステムの運用コスト削減、故障復旧時間の短縮、セキュリティ対策の強化などをセンター統合で解決したいと考えていました。加えて、センターに寄せられる声を集約、分析し、組織の迅速な経営判断に活用することも大きな狙いでした。
経営戦略本部の関沙織氏は「もちろん、業務効率化、コスト削減、セキュリティ強化は重要です。しかし、それにもまして、弊社のビジネスにおいて、今何が起こっていて、ステークホルダーからどういう声が集まっているのか、スピーディーに経営に垂直報告する仕組みを作ることが狙いでした」と真の目的を明かします。
複数の担当部署がそれぞれ委託先のセンターにデータを預けている状態では、要望やクレームなどの情報の集約・分析ができず、迅速な経営判断ができません。複数のセンターを統合し、すべてのデータに経営陣がいつでもリーチできる環境づくりが急務でした。