いま求められる“顧客接点の強化”(第3回)

顧客接点刷新で現場の課題を可視化したローソン

2018.01.26 Fri連載バックナンバー

 企業が顧客接点のチャネルとして、電話やWeb、メールなどの窓口を設け、窓口ごとにコンタクトを運営するケースは少なくありません。しかし、このような縦割りの運営では各センターが持つデータの集約・分析が困難なため、経営判断の指針となる「率先して取り組むべき、優先度の高い課題」が見えにくいという問題が出てきます。複数のコンタクトセンターをクラウド基盤に全面的に集約したローソンの狙いは、接客品質を高めるための課題の可視化でした。

 

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「いま店舗で何が起きているか」を把握したい

 全国に約14,000店舗のコンビニエンスストアフランチャイズチェーン展開を手がける株式会社ローソン。同社が2016年より3カ年計画で取り組んでいるのが、顧客の生活全般のニーズを満たす商品力、売場力、接客力などの強化に向けた「1000日全員実行プロジェクト」です。その一環として、取り組みの輪を広げていった施策の1つがコンタクトセンター統合プロジェクトでした。

 同センターの窓口は大きく顧客向けと加盟店向けがあり、年間約160万件の問い合わせがあります。顧客向けには電話やメール、Webフォームの窓口を開設し、商品やサービス、接客などに関する問い合わせを受け付けています。一方、加盟店向けの窓口は電話のみとなっています。理由は「システム系」「什器等の修繕系」「什器系」「オペレーション系」など、項目が多岐にわたり、急ぎの応対が求められるケースが多いためです。

 同社では従来のセンターの各対応窓口間で発生していた「たらい回し」を解消した業務効率化、複数拠点にまたがるシステムの運用コスト削減、故障復旧時間の短縮、セキュリティ対策の強化などをセンター統合で解決したいと考えていました。加えて、センターに寄せられる声を集約、分析し、組織の迅速な経営判断に活用することも大きな狙いでした。

 経営戦略本部の関沙織氏は「もちろん、業務効率化、コスト削減、セキュリティ強化は重要です。しかし、それにもまして、弊社のビジネスにおいて、今何が起こっていて、ステークホルダーからどういう声が集まっているのか、スピーディーに経営に垂直報告する仕組みを作ることが狙いでした」と真の目的を明かします。

 複数の担当部署がそれぞれ委託先のセンターにデータを預けている状態では、要望やクレームなどの情報の集約・分析ができず、迅速な経営判断ができません。複数のセンターを統合し、すべてのデータに経営陣がいつでもリーチできる環境づくりが急務でした。

統合先に可用性を重視しクラウド基盤を選択

 同社ではシステム・インフラ選定において、複数社にRFPを提示し、各社の提案を検討。パートナーにNTTコミュニケーションズを選びました。関氏は選定の決め手を下記のように語ります。

「選定の決め手となった部分は、オンプレミスよりも可用性の高いクラウドサービスを提供されていること、セキュリティ面の条件を満たしていること、席数、エージェント数などの利用実態に合わせた内容でサービス契約が結べることなど、私たちの要求に高いレベルで応えていただけたことです。さらに信頼できる国内キャリアとしてIP電話、ネットワーク、クラウド基盤、システムを一気通貫で運用監視していただける点も大きな魅力でした。課題であったコスト削減が見込め、万一の故障障害発生時にも迅速に切り分けができるところを高く評価いたしました」

 同社が導入を決めた「Arcstar Contact Center」は、コンタクトセンターに必要な機能をワンストップで提供できる通信キャリアならではのクラウド型コンタクトセンターサービスです。クラウド基盤上に短期間での構築が可能であり、状況に応じた席数の増減など、利用者側で容易に設定変更ができるカスタマーポータル機能も特長となっています。

 センター機能のクラウド基盤への統合が決まり、関氏が最初に取り組んだのはナレッジを高いレベルで標準化するためにFAQや応対マニュアルなどを構築することでした。従来のセンターではFAQやマニュアルが個別に異なる媒体で存在し、古いまま更新されていないケースもあったと言います。

「各部署に確認しながら、現業に沿った内容に一新し、一元的に管理、一括更新できるCRMに新たなナレッジを収容しました。また、24時間365日稼働のセンターでは、既存システムから新システムへの切り替えが大きな課題となるのですが、今回の物理的な切り替え作業においては、利用者の少ない深夜帯に、ディザスタリカバリ用電話回線への迂回ルートを活用し、業務を1秒も止めることなく移管することができました。極めて短期間の移行計画だったにも関わらず、クラウド基盤へのセンター統合は大きなトラブルなく完了しました」(関氏)

ローソングループ コンタクトセンターのシステム構成イメージ

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データの突合で見えた課題を改善できる環境に

 新たに刷新されたローソングループコンタクトセンターは一部の特殊なセンターを除き、BCPの観点から大阪と沖縄の2拠点で運営しています。原則的にオペレーターの席をワンフロアに配置して加盟店からの電話に関しては「たらい回しをしない」方針を徹底。加盟店が問い合わせ窓口を間違えた場合も、同フロアで応対できる業務であれば、担当窓口に引き継ぐ応対を実現しています。応対完遂率や応対品質は飛躍的に向上しました。

 運用にかかるトータルコストについても大幅に削減されました。「従来と比較し運用面で約3割のコストリダクションを実現しています」と関氏が語るように予想以上の効果が出ています。さらにセキュリティ対策、システムトラブル時の迅速な切り分けによる復旧対応品質も想定通りの成果を得ています。

 しかし、これらは副次的な効果にすぎません。やはり最大の成果は電話、メール、Webといったチャネルを束ねた応対履歴を自社で管理、分析できるようになったため、ビジネス課題の「可視化」が実現できたことです。

 関氏は「すべての応対履歴を集約して蓄積していますので、ボタンひとつで問い合わせ件数などのデータを把握できます。加盟店さま、お客さまの声を突合した分析や抽出が容易なため、課題を明確化した経営レポートを定期的に出すことができます。それにより、課題解決速度アップに大きく貢献しています。担当部署にも具体的な根拠を示せますので、トラブルが起きると担当者が走ってくるようになりました」と劇的な変化の手応えを語ります。

 コンタクトセンターの縦割り個別最適な運営から、すべてに横串を通す面的な全体最適な運営へ移行したことで、確実に接客品質は高まっています。主な顧客接点が店舗である同社にとって、これは大きな収穫と言えるでしょう。

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能動的なサービス改善に向けた次の取り組みへ

 今後、同社ではトラブルやクレームへの迅速な対応といった“守り”の領域だけではなく、より良いサービスを提供する“攻め”の領域でも集約したセンターの応対履歴を活用していく予定です。

「現在は、専任の担当者を置き、テキストマイニングしたお客さまの声をクラスター分析にかけています。これによりお客さまの反応するキーワードからトレンドが見えるようになるため、能動的なアクションが可能になります。たとえばクレームとして顕在化しない声でも件数が多ければ分析して改善したり、時系列で把握できたりするので、成果を推し量ることもできます」と関氏は次なる展望を見据えます。クレームのみならず、ポジティブなキーワードを分析すれば新たな商品開発などのヒントにもつながっていくでしょう。

 現在、コンタクトセンターにAIを導入して顧客対応力を高めるケースが増えつつあります。しかし、関氏は異なる視点での活用を考えているようです。「人材減少が加速するこれからの時代は、ご来店時にお客様のご要望、ご質問に即時対応ができるよう、店舗でのAI活用も今後大きな課題であります。現在はAI実装の布石としてBIツールを強化して、人手を介すことなく店舗で問題が解決できる仕組みをつくる検討に着手しています。テクノロジーはお客さまのそばで、お客さまの満足度を高めるために使うのがベストです」と関氏はAIへの見解を語ります。

 同社では店舗以外の顧客接点についても電話、メール、Webの窓口に加え、SNSなどの新たなチャネルを追加していく方針です。もちろんSNSではAIによる自動応対から有人オペレーターへのエスカレーションなど、ハイブリッドな応対も検討しています。さらにローソンIDへの登録ユーザーを増やすことでチャネルを横断したさらなるオムニチャネル化にも取り組んでいく計画です。

 関氏は「電話をかけてきたお客さまに確認のメールを送る、SNSで補足・追加案内を送るといった、フレキシブルな対応ができる仕組みを考えていく必要があります。きめ細やかなサービスはお客さまの来店を促し、満足度を高めることができます。今回のセンター統合にも言えますが、そうした革新を支えるのがITであり、今後もお客さまにご満足いただけるシステム、サービスの開発に力を入れて行きたいです」と締めくくります。

 トップの鶴の一声でビジネスをダイナミックに革新させる企業が急成長を遂げています。迅速な革新のためには明確な意思決定の根拠となる判断材料が必要です。ITを使って現場で起きていることをリアルタイムでありのまま「可視化」したローソンの狙いは、そこにありました。革新のヒントは見えにくいだけで、現場にいくらでも転がっているのかもしれません。

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Bizコンパス編集部

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