いま求められる“顧客接点の強化”(第2回)

LINE公式アカウントにAIを導入したNTT Comの狙い

2017.12.20 Wed連載バックナンバー

 新たなコミュニケーションツールとして広く受け入れられているLINEをマーケティングに生かすため、LINE公式アカウントを開設している企業は少なくありません。NTTコミュニケーションズもその1社で、LINE公式アカウントをチャネルとして十分に生かし切れていないという課題意識がありました。そこで立ち上がったのがAIを活用して自社の格安SIMサービスである「OCN モバイル ONE」の拡販につなげるというプロジェクトです。この事例から、LINE公式アカウントにAIを組み込むメリットをチェックしていきます。

 

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LINE公式アカウントにおけるNTTコミュニケーションズの課題

 テキストによるチャットのほか、音声やビデオによるリアルタイムコミュニケーションも可能なツールとして、幅広い年齢層に支持されているのが「LINE」です。このサービスを運営するLINE株式会社では、国内の月間アクティブユーザー数を7,000万人以上としており、コミュニケーションインフラとして着実に根付いたことがうかがえます。

 最近では、個人間のコミュニケーションツールとしてだけでなく、企業と個人がつながるインフラとしても積極的に利用されています。たとえば無料スタンプの配布とともに、自社の商品やサービスのキャンペーン情報やクーポンの配信、あるいは顧客に対するサポートのための窓口としてLINEを活用している企業はもはや珍しくありません。

 こうしたLINEの新たな活用例として、注目を集めているのがAIとの組み合わせです。LINEを利用したマーケティングのメリットの1つである双方向コミュニケーションをAIで実現すれば、人的リソースの問題などを意識することなく、顧客からの問い合わせに24時間365日で応対することが可能になります。さらに電話やメールに比べて気軽に利用できるLINEであれば、顧客にとっても問い合わせがしやすいといったメリットがあります。

 実際にLINE公式アカウントにAIを組み込み、顧客からの問い合わせなどへの対応に利用しているのがNTTコミュニケーションズ株式会社です。同社は以前からLINE公式アカウントを運営しており、公式スタンプの提供などの施策により友だちの数は1,100万人に達していました。しかし、格安SIMサービスであるOCN モバイル ONEに関するキャンペーン情報の提供などにとどまっていて、マーケティングチャネルとして今まで以上に有効活用できる施策を模索していた状況でした。

AIを使ってLINE上で気軽に相談できる窓口を作る

 OCN モバイル ONEの販売施策にも課題感がありました。多くのMVNO事業者が格安SIMサービスを提供し、それに伴ってテレビCMも数多く流れるようになったことなどから、格安SIMサービスの認知は着実に広まり、従来の中核的な利用者だったITリテラシーの高い層だけでなく、それほどITについて詳しくない人々の利用意欲も高まっています。しかし格安SIMサービスについての理解が追いついていないため、「安いのは魅力だが自分には難しそう」などと考えられているのではないかという危惧があったのです。

 そこで検討されたのが自社で提供しているAIエンジンである「Communication Engine “COTOHA®”(以下、COTOHA)」を組み合わせて、格安SIMの購入を検討している人をサポートし、それによって拡販を目指す取り組みです。この施策の意図について、NTTコミュニケーションズの秋友亜利紗氏は次のように説明しました。

 「私どもは、以前からお客さまの声として『スマートフォンの料金が安くなるということで格安SIMは気になっているけれども、Webサイトには端末やプランがたくさんあって自分にあったプランや格安スマホが見つけられない。とはいえ電話で問い合わせるのはハードルが高い』といった考えがあることを相当数把握していました。そのようなお客さまに対し、使い慣れたLINEとAIによる自動対話で、いつでも気軽に相談できる環境を提供しようと考えました」

 このような人たちが気軽に問い合わせられるチャネルとしてLINEを活用し、格安SIMサービスそのものやプラン選びに対する不安や疑問を解決できれば、販売拡大につながる可能性が高まります。さらに応対窓口にAIを利用すれば、多くの人たちからの問い合わせに24時間365日で対応することが可能です。こうした考えのもと、NTTコミュニケーションズのLINE公式アカウントでCOTOHAを活用するためのプロジェクトがスタートしたのです。

AI活用プロジェクトで導入企業側に求められること

 プロジェクトはまず要件定義に必要な情報の収集から始まり、その内容を基に具体的な要件がまとめられました。その後、AIを使ったコミュニケーションの鍵を握る、シナリオの設計や設定が行われています。実際のテスト環境が構築された後、それを使って関係者内で検証を実施、その内容が開発側にフィードバックされてリリースを迎えています。

 新たに追加した機能には、COTOHAを使ったフリーワードによる「AI対話機能」と、いくつかの質問に答えるだけで最適な格安スマホや料金プランをおすすめする「ぴったり診断機能」があります。

 これを実現するシステムはAIエンジンであるCOTOHAを核としつつ、ぴったり診断機能で利用するレコメンドエンジンとコンテンツデータベースを接続した構成です。レコメンドエンジンに採用されたのは、NTTコミュニケーションズが求める要件を満たしたアクセンチュアの「アクセンチュア・レコメンド・サービス(ARS)」です。このARSにより、利用者との自然な対話から真のニーズを抽出し、最適なプランを提案することができるようになりました。また、これらのシステムとLINE公式アカウントを連携させるために、LINEが提供する「ビジネスコネクト」機能を利用しています。

LINE×COTOHAシステム構成概要

 この開発プロジェクトについて、秋友氏は次のように感想を述べました。

 「要件定義では、導入企業側の要望をしっかり組み込んでいかなくてはなりません。またプロジェクトを進める中でも、開発側に任せてしまうのではなく、特にシナリオが決まるまでは導入企業側もしっかり稼働をかけないとうまくいかないと思います。実際に今回は、かなりの回数のミーティングを重ねました」

 特にシナリオ作成は、OCN モバイル ONEの疑問や不安を解消していただき、サービス拡販につなげるために極めて重要なポイントとなります。その検討を進める上で意識したこととして挙げられたのは、利用者にいかにスムーズに購入検討まで進んでいただけるかという点です。

 たとえば今回のプロジェクトの主目的はOCN モバイル ONEの拡販であり、それに結びつくコンテンツとしてぴったり診断機能を用意しています。このぴったり診断機能にフリーワードのコミュニケーションから誘導することもありますが、あまりに診断を勧めるとしつこいと感じ離脱されかねません。そこで診断することが自然なシナリオの場合だけ誘導するといったように、利用者の視点でシナリオが練られました。

 このシナリオ作成について、NTTコミュニケーションズの上三垣英幸氏は「シナリオを作成する際は、コンタクトセンターにおけるオペレーターのトレーニングのようなイメージで作業を進めました。私たちが行ってほしいことをAIに教えて覚えてもらうイメージです」と話します。

 利用者に親近感を持ってもらうために、キャラクターにどのような口調で話させるのかも検討のポイントとなりました。堅い口調では冷たい印象を与えますが、一方で砕けた口調は誤解を招く恐れもあります。今回は友だちと話すような砕けた口調でシナリオを作成し、誤解を招かないようにキャラクターの表情を画像として会話の中に埋め込むといった工夫が行われています。

 利用者にとって使いやすいユーザーインターフェイスユーザーエクスペリエンスにも配慮されたようです。具体的には、画面に表示されているボタンを押すと何が始まるのかがわかるようにデザインを工夫したほか、フリーワードだけでなく選択肢を表示してお客さまに選んでもらう仕掛けを追加しました。お客さまが料金について知りたいといった場面において、料金の何について知りたいのかを選択肢として表示するといった形です。ただし、選択式の会話ではAIらしさが薄れてしまうため、フリーワードとのバランスは慎重に検討が行われています。

 さらに上三垣氏は、「リリース後はCOTOHAのログを分析し、答えることができなかった質問に対して回答を用意したり、あるいは問題のある導線を改善したりするといった取り組みを進めています。さらなるAI精度を高めるためのシナリオのチューニングは、常に継続的に取り組んでいく必要があります」と、運用面における取り組みについても話します。

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AIとの雑談がサービスの拡販につながる!?

 フリーワードとぴったり診断のいずれでも、応対するのは「リス太」という同社のLINE公式アカウントのキャラクターで、利用者は通常のLINE利用と同様にテキストを入力したり、あるいはチャット画面に表示された候補の中から回答を選択したりしてコミュニケーションを図ります。

最適なプランをAIが診断・提案

 フリーワードによるコミュニケーションで主に想定されているのは、OCN モバイル ONEのサービス内容に対する問い合わせです。たとえば「普通の携帯電話と何が違うの?」などと聞くと、リス太が「格安スマホでも、電話、ネット閲覧やLINE/地図/ゲームなどのアプリは普通のスマホと同じように利用できるよ」などと回答してくれます。

 ぴったり診断機能は、「音声通話は必要かな?」「動画サイト(YouTubeなど)は一日どれくらい見るかな?」など、リス太からの質問に答えると、「おすすめプラン」をレコメンドしてくれるという仕組みです。最後に表示されたおすすめプランには「詳細を見る」というリンクがあり、それをクリックすると購入ページにつながるという流れになっています。なお質問に対する回答は選択式となっていて、利用者があまり悩まずに答えられるよう工夫されています。

AIの活用で大きな成果を生み出したLINE公式アカウント

 LINE公式アカウントにCOTOHAを導入したことで、具体的にどのような効果があったのでしょうか。秋友氏は次のように答えてくれました。

 「まず24時間365日、お客さま対応が可能になったことが大きいと考えています。これにより、コンタクトセンターでは応対できない早朝や深夜帯でも問い合わせができるようになり、問い合わせ応対件数は従来の3倍に伸びています。また格安スマホセットの販売数も5倍と大きく伸ばすことができました」

 格安スマホセットの販売数が伸びた理由として、同社ではAIとのコミュニケーションによって疑問が解決できるようになり、それによって購買意欲が高まったのではないかと分析しています。特に従来との差として大きいのはコンバージョン率で、以前もキャンペーンを告知すると多くの利用者にクリックされていましたが、コンバージョン率は伸び悩んでいました。しかしCOTOHAを導入してから、クリックは若干減ったものの、LINE内で購入検討が進んだことで、コンバージョン率が大幅に上昇し、それが5倍という大きな数字につながっています。

 もう1つの効果として、顧客とのエンゲージメントの強化も大きいと話すのはNTTコミュニケーションズの西田和彦氏です。

 「多くの方がそうだと思いますが、企業のLINE公式アカウントを友だちにしても、企業側からのアクションがなければ滅多にアクセスしないケースが多いと思われます。実際、当社のLINE公式アカウントもCOTOHA導入前のアクセス数は決して多くありませんでしたが、導入した結果、一日あたりのアクセス数は以前の27倍にまで伸びました。こちらから仕掛けるだけでなく、お客さまからも来ていただけるようになったことは、エンゲージメントの側面において大きな成果だと考えています」

 LINE公式アカウントは多くの企業が開設していますが、マーケティングツールとして十分に活用できていないと課題を感じているケースは多いのではないでしょうか。確かに公式スタンプの提供などを行えば友だち数を増やすことは可能ですが、それをビジネスメリットにつなげるのは決して簡単ではありません。そのような課題を解決する上で、今回の事例のようにAIを活用することは選択肢の1つになるのではないでしょうか。

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Bizコンパス編集部

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