「アパホテル」といえば、国内・海外に多数展開するビッグホテルチェーンとして、広く知られる存在です。2020年の1月末現在で、チェーンは全607ホテル、約9万8000室以上を展開しています(建設・設計中、海外、フランチャイズ、パートナーホテル含む)。
全国にホテルを展開するアパホテルでは、各店舗のフロントに、日々多くの電話がかかってきています。しかし、フロントが混雑する時間帯やコールが重なる時間帯は、すべての電話に応対できないこともあります。
「電話でもフロントでも、しっかり応対したい」という思いを抱いていた同社は、電話システムに“あるもの”を導入します。結果、業務が効率化・最適化され、電話でもフロントでもより効果的な顧客対応が可能となりました。
アパホテルは電話システムにどのような工夫を施したのでしょうか?アパホテルを運営する、アパグループ株式会社 代表取締役社長の元谷一志氏に話を聞きました。
【アパグループについて】
アパグループは、都市開発を始め、建設、不動産、ホテルなど幅広い事業を展開。中でもホテル事業は「アパホテル」のブランド名で広く知られている。1984年12月に第1号ホテルとなる「アパホテル〈金沢片町〉の開業以来、年々ホテル数を拡大している。
アパホテルは土地・建物・運営を一体で経営している点を特徴としており、迅速なチェーン展開、サービスの高度化、ブランド力向上のための施策も素早く展開できる体制になっているという。
スピーディーなチェックインにも力を入れており、アパ直(アパホテルの公式サイトやアパアプリ)で予約済みの会員は、フロントの機器にQRコードをかざすだけでチェックインができるサービスも導入している。
「電話が集中するピーク時間帯でも、対面の接客をしっかり対応したい」
電話問い合わせの内容は多岐にわたり、宿泊の予約やホテルまでのアクセスはもちろん、近隣の催事に関する質問を受けることもあります。
特に多いのが、「チェックイン時間の変更」に関する電話問い合わせです。
顧客がホテルを予約する際には、チェックイン時間をホテル側に伝えますが、その時間をオーバーする場合、ホテル側に遅延する旨を連絡するのが一般的です。しかし、同じ時間に多くの電話がかかってきてしまうと、フロント側で電話応対ができないケースもあるようです。
たとえば、千葉市美浜区の大規模店舗『アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉』(以下、東京ベイ幕張)では、沿線の遊園地で花火大会が終わり、ホテルに到着する22時~23時のタイミングで、電話問い合わせが多くなるといいます。その時間帯はフロントに行列ができるほどチェックイン待ちの来客も多く、フロントのスタッフがすべての電話に出られないケースが見られたといいます。
「お客様からチェックイン前に電話をいただけること自体は、ホテルにとっては大変ありがたいことです。というのも、ホテル側としては『No Show』(無断キャンセル)が最も怖いからです。電話をいただけることで、キャンセルであればその部屋を再販できますし、キャンセルでなければ安心して来店をお待ちできます。
しかし、チェックインや荷物の受け渡しなど、対面の接客が重なる時間帯は、電話が取れないことがありました。現場のスタッフから『電話も対面の接客も、しっかり対応したい』という声が上がっており、弊社もこの問題を経営課題として捉えていました」(元谷社長)