こうして同社ではAI技術を活用した法律顧問サービスの開発に着手します。予備校運営によって多数の士業有資格者を輩出してきた同社の強みは、法律に関する質の高いコンテンツノウハウです。オンラインの法律相談窓口の「要」となる、FAQのデータベースの構築に携わった弁護士の岩瀬武氏は、自社の教育事業のノウハウが生きたと語ります。
「私たちは法律の知識がない人に、法律をわかりやすく説明することに慣れています。ネットの相談掲示板に寄せられた法律相談のレベルを参考にしながら、知識がない一般の方でも、法律の基礎から理解できるFAQをコンセプトに作成を進めました」
しかし、プロジェクトは思いのほか難航します。同社代表取締役の岩崎北斗氏は、その理由がチャットボットの精度にあったと説明します。
「法律の相談は敷居が高く感じられるので、平易な言葉で問い合わせができて、迅速かつ正確にレスポンスができる直感的なUIが必要でした。しかし、当初想定していたチャットボットでは、これらの要件を満たすレスポンスも検索精度も得ることができず、ユーザーが手軽に利用できる操作性には程遠い状況でした」
従来のAIエンジンに限界を感じていた岩崎氏は、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)から紹介された「Semantic Search Engine COTOHA Chat & FAQ™」(以下、COTOHA Chat & FAQ)のデモを見たことをきっかけに、AIエンジンのリプレイスを検討します。
COTOHA Chat & FAQは、キーワードマッチ方式でなく、質問の「意味」を解釈してFAQデータベースから適切な回答を探し出します。そのため、質問に対してより最適な回答を見つけやすいのが特長です。
「2~3年前にデモを見たときは、AIチャットボットとしてすごく優れているという印象ではなかったのですが、今は格段に進化していました。レスポンスの速さ、回答精度、UIの使いやすさと、求めていた仕様だったため、従来のAIからのリプレイスを決めました」
中小企業からの法律相談は、人事労務関連、税法、会社法、商法など広範囲に渡るデータベース構築が必要となります。また一度構築すれば終わりではなく、法改正などにも対応しアップデートを続けなければなりません。
「将来的には、数万件を超える膨大なデータベースの運用がストレスなく行えることもポイントでした。COTOHA Chat & FAQは、データベースの拡張やメンテナンスが容易であったことも決め手になりました」