顧客からの問い合わせを受け付ける窓口の1つが、コンタクトセンター(コールセンター)です。企業の顧客接点として、導入している企業も多いでしょう。
しかし、近年のスマートデバイスの普及により、顧客との接点を取り巻く環境は、従来とは大きく様変わっています。ユーザーは実店舗だけでなく、ECサイト、アプリといったオムニチャネル(複数のチャネル)を活用するようになり、企業側もこうしたユーザー行動の変化に対応するため、メールでの問い合わせやSNSの活用など、顧客接点もオムニチャネル化を推進するケースが増えています。
このように顧客接点のオムニチャネル化が進むということは、企業はそれぞれの顧客接点1つ1つに顧客応対の仕組みを構築する必要がありますが、わざわざそのようなことをしなくても、オムニチャネルに対応したクラウド型コンタクトセンターのプラットフォームを導入すれば解決できます。
それが、今回取り上げる、ジェネシス社の「Pure Cloud(ピュア・クラウド)」です。
ジェネシス社は120カ国を超える1万社以上の企業に、コンタクトセンターソリューションを提供する企業です。業界最大規模のIT調査企業、Gartner(ガートナー)が発表する指標においても、「コンタクトセンター・インフラストラクチャ」の分野で、10年連続で“リーダー”に位置付けられています。
その日本法人である、ジェネシス・ジャパン株式会社の福井康晃氏は、オムニチャネル時代のコンタクトセンター基盤の重要な要件として、「よりよい顧客接点・関係構築をデザインする“Customer Experience”」、「スタッフが働きやすい環境を実現する“Employee Experience”」、「ビジネスを効率化する“Business Optimization”」の3点を挙げました。
福井氏は、これら3点の要件を満たすのが、ジェネシスのコンタクトセンターソリューション「Pure Cloud」であるといいます。

「Pure Cloudは、コンタクトセンター運営に必要な機能を“オールインワン”で備えています。かつ、複数のチャネルを取り扱える“オムニチャネル統合” も可能です。コンタクトセンターに必要な音声通話機能はもちろん、メール、チャット、あるいはLINEなどのSNSを統合的に扱えます。さらに、それぞれのチャネルにおける処理フローのカスタマイズも可能です。
つまり、Pure Cloudを導入するだけで、旧来の『コールセンター』が、『オムニチャネルコンタクトセンター』になってしまうというわけです」

クラウドサービスであるPure Cloudは、高い耐障害性を確保するために「マイクロサービスアーキテクチャ」を採用しています。これは、システム全体を細かなサービス(マイクロサービス)に分割し、個々に冗長性を持たせることで、高い耐障害性を確保するというものです。
例えば、同じ機能を持つ複数のマイクロサービスのうち、1つが機能不全に陥ったとします。そのような場合でも、他のマイクロサービスが補完することで、被害の拡大を最小限に抑えます。
さらに、Pure Cloudが優れているのはクラウドサービスとしての安全性だけではありません。システムの各種設定やコールフローの変更などは、外部の業者に依頼することなく、ユーザー側で設定作業を行えるツールが用意されています。
「営業時間を変更したい、あるいはIVR(音声自動応答システム)のフローを変えたいといったときも、現場のスーパーバイザーが即座に対応できます。変更にかかるコストの削減を実現しつつ、スピード感を持って顧客対応の改善を図れます」(福井氏)

さらに、Pure Cloudはクラウドサービスのため、アップデートも自動で行われ、常に最新の状態で利用が可能です。外部システムと連携するためのAPIも豊富で、自社の業務に合わせ、データベースやWebシステムなどと組み合わせて使うこともできます。
「たとえばNTTコミュニケーションズが提供する対話型AIエンジンである『COTOHA Virtual Assistant』とPure Cloudを組み合わせることで、高精度な日本語解析AIによる自動応答を実現するコンタクトセンターの構築が可能です。APIを用いて幅広いシステムと連携することで、新しい可能性が開けると考えています」(福井氏)
このPure Cloudは、すでに多くの企業で導入されています。その事例として福井氏がまず紹介したのが、たばこメーカーのフィリップ・モリスジャパン合同会社です。
同社の加熱式たばこである「IQOS(アイコス)」は、一時は品切れが続出するほどの大ヒットを記録しました。しかし、それによって、コンタクトセンターへの問い合わせが増加。従来のオペレーターによる電話応対だけでは、サービスレベルの維持が難しいという問題に直面していました。
そこで同社はPure Cloudを導入し、電話とメール、チャットのマルチチャネルで応対できる環境を整えたといいます。
「3つのチャネルを用意したことで、エンドユーザーであるお客さまが自分に合った最適なチャネルを選んで問い合わせができるようになりました。さらに問い合わせが各チャネルに分散したため、サービスレベルも改善していきました」(福井氏)

福井氏がPure Cloudのもう1つの導入事例として取り上げたのが、不動産会社の株式会社レオパレス21です。
レオパレス21ではかつて、自社のコンタクトセンターのシステム自体に課題を抱えていました。なぜなら、システム基盤が部門や拠点ごとに異なっており、オペレーション品質も部門・拠点によって大きなばらつきが生まれていたといいます。
同社はこの課題を解決するために、コンタクトセンターシステムの統合を決断、Pure Cloudの採用を決めました。
「従来は拠点ごとにシステムが異なっていたため、ある拠点でシステムがダウンすると別拠点でカバーするということができませんでした。しかし、クラウドサービスであるPure Cloudを導入したことで、問題が起きた拠点を別の拠点でバックアップができるようになりました。BCP対策としても機能しています。
もちろん、Pure Cloudの導入によってオムニチャネルでの顧客対応の基盤が整いました。トータルコストが削減できたという評価も受けています」

このように、コンタクトセンターのオムニチャネル化は、Pure Cloudを導入することでスムーズに進めることができます。
とはいえ、顧客接点におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、コンタクトセンターのオムニチャネル化にとどまりません。例えば、さらに一歩進んだ顧客接点改革を行うために、AIを活用することも1つの方法です。
AIによる自動応答の実現は、コンタクトセンターの対応時間の拡大や、人手不足の解消に貢献します。最近では、AIでユーザー満足度が高かった通話音声を分析、その結果をオペレーター間で共有することで、電話応対レベルの底上げを図るという取り組みも始まっています。
Pure Cloudをはじめとする、顧客接点改革のためのソリューションには多くの選択肢があります。自社の課題に沿ったコンタクトセンターソリューションの導入を検討してみてはいかがでしょうか。