ここまで解説したとおり、Acquia Cloud Site Factoryは大規模Webサイトの基盤として広く活用されていますが、さらに昨今では「Acquia Lift」と呼ばれるプロダクトを活用したパーソナライゼーションの事例も増えています。その一例として挙げられるのが、アメリカのハンバーガーショップチェーンであるウェンディーズです。
同社のWebサイトはEコマースと連動しており、ハンバーガーやドリンクなどを購入し、デリバリーしてもらう、あるいは店頭で受け取るといったことができます。このWebサイトに、アクセスしたユーザーに最適化した商品をレコメンドするパーソナライゼーションの機能が組み込まれることになりましたが、そのユーザーに相応しくない情報を提示すればWebサイトから離脱される恐れもあると上田氏は指摘します。
「適切な情報が訪問した瞬間に表示されなければ、85%のユーザーはドロップアウトすると言われています。そこでウェンディーズでは、Acquia Liftという我々のパーソナライゼーションツールを使ってすべての顧客の嗜好を吸い上げ、過去に購入した商品の情報などに基づいてレコメンデーションを行う仕組みをAcquiaプラットフォーム上で実現しました。しかも、その実現に要した時間はわずか88日間です」
スマートフォン用のアプリ、あるいはデジタルサイネージなど、Webサイト以外の場所での情報提供も広まっています。こうしたニーズにもAcquia Cloud Site Factoryは対応しています。その事例の1つとして、上田氏が説明したのはニューヨーク市の地下鉄での利用です。
「この事例は単にコンテンツを配信するだけでなく、IoTデバイスと連動し、何分後に列車が到着するかといった情報をAcquiaのプラットフォーム上で生成して配信しています。我々のプラットフォームは完成されたアーキテクチャーであり、非常にモダンな設計となっているため高い保守性も実現しています。この仕組みを使い、Webサイトだけでなく、デジタルサイネージ、さらにはApple Watchのようなデバイスにも情報を提供しているのです」

こうした公共交通機関では台風などの自然災害が発生すると突発的にユーザーからのアクセスが増加します。数年前、大型のハリケーンがニューヨーク市を襲った際には地下鉄のWebサイトにも膨大な量のアクセスが発生しましたが、Acquia側でリソースを増強して事なきを得たことがあったとします。このようにアクセス状況をAcquia側で監視し、突発的なアクセス量の増大にも対応してくれるのは、ユーザー企業にとって大きな安心材料となるのではないでしょうか。
なお、スマートフォンのアプリやデジタルサイネージなど、Webサイト以外にCMSからコンテンツを配信することを「ヘッドレス」や「Decoupled」などと呼びますが、こうした用途でのAcquiaの利用は着実に増えています。たとえば、自動車メーカーであるテスラも自動車に備えられたディスプレイへの情報配信にAcquiaを採用しました。この事例からも、幅広いデバイスへコンテンツを配信するためのプラットフォームとしてAcquiaのサービスを利用できることがわかります。
デジタルトランスフォーメーションの時代が到来し、顧客との接点はこれまで以上に増えることは確実でしょう。その際、顧客のニーズに合わせて最適な情報を提供するためにコンテンツを統合的に管理することができれば業務負担も抑えられます。さらに顧客にはそれぞれに必要な情報がタイミングよく、スマートに提供できることが重要です。それを実現するプラットフォームに何を使うべきか、そろそろ真剣に考える時期ではないでしょうか。
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