物流現場の課題を解決したIoTプラットフォーム

クラウドを駆使してユーピーアールが物流に新風を吹き込む

2018.08.17 Fri連載バックナンバー

 ネットワークでつながったモノとモノが相互通信を行い操作や計測、制御などを行うIoT。効率化や省力化を実現するため、さまざまな分野での導入が急速に広がっています。輸送用パレットのレンタルを中心に事業を展開するユーピーアール株式会社では、ワイヤレス通信に対応したタグをパレットに取り付け、在庫や入出庫の管理を行う「スマートパレット」を提供していますが、そのサービス基盤をクラウドに移行しました。どのような背景や狙いで同社はクラウド利用に舵を切り、さらにはどのようなクラウドサービスを選択したのでしょうか。

【ユーピーアール株式会社について】

 1979年に山口県宇部市で創業。現在は、コアビジネスであるパレットや物流機器のレンタル業に加え、カーシェアリングやパワーアシストスーツなど、幅広い事業を推進しています。東京と宇部に本社を置き、全国に営業所やパレットのデリパリーポイントを広く展開。2011年にはシンガポールに現地法人を設立し、パレットレンタル事業をアジア圏へ拡大させました。「地球と人を尊重する会社」を経営理念に掲げ、環境問題へ貢献すると同時に、あらゆる分野にチャレンジするユニバーサル企業を目指しています。

 

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パレットのスマート化が紛失や管理コストに貢献

 今、物流業界は、インターネット通販の拡大による需要増大やサービスの高度化が求められる中、ドライバー不足という大きな課題を抱えています。その中で、ITやIoTを活用した効率化や省力化に大きな注目が集まっています。

 ユーピーアール株式会社は、倉庫や工場といった物流現場で商品を運搬する際、荷物をまとめて乗せ、効率よく運搬するための荷役台である「パレット」のレンタル事業を全国に展開しています。同社は、IoTにいち早く着目し、パレットの自動管理を行うサービスを提供しています。

 物流事業本部のスマートパレット事業部長である中野正樹氏は、そのサービス開発の背景を紹介します。

「パレットのレンタル事業で最も大きな課題となっていたのは、お客様の現場におけるパレット管理でした。従来、伝票を発行して手動で入力を行うアナログ的な管理手法で運用されてきましたが、手間がかかることに加え、どうしても現場でパレットを紛失してしまうというケースが多くありました。

 お客様からも『自動でパレット管理ができないか』という要望を頂戴しており、無線ICタグを用いたRFIDシステムによる自動パレット管理手法を開発しました。当初は電池を必要としないメンテナンスフリーのパッシブRFIDを検証していたのですが、通信距離が数メートルと短く、読み取り率が低いという問題点があって、利用があまり拡大しませんでした。

 そこで当社では、数百メートルの通信が可能なアクティブRFIDを用いたシステムをあらためて開発し、2017年2月から『スマートパレット』という名称でサービスの提供をスタートさせました」

クラウドサービスへの移行は将来を見据えた決断

 アクティブRFIDを用いたパレット管理システムは、ユーピーアール株式会社が世界に先駆けて開発・導入したもので、パレットに取り付けられたアクティブRFIDが発信するID情報を倉庫などに設置したリーダーで読み取り、自動管理を行います。

「スマートパレット」では、半径最大300mの読取範囲において、1つのリーダーに対し同時に最大5万個のパレット管理が可能です。利用者は、伝票への記載や入力をすることなく、パレットの在庫や入出庫の状況をリアルタイムで把握することができます。

 従来の課題の1つであったパレットの紛失を削減することも可能となり、提供開始後すぐに多くの顧客から採用されることになりますが、利用が拡大するにしたがい、システム運用において新たな課題が浮上したといいます。

 スマートパレット事業部の部長として実際のシステム運用を統括する川島正氏は、その課題や解決のための方策を説明します。

「サービス提供を開始した時点では、システムの基盤を社内で構築して運用していたのですが、急速な利用拡大にともない、基盤を拡張する必要に迫られました。そのまま自社運用で規模を拡大するには多くの投資や労力が必要ですし、IoTブームという流れの中で、サービスとしてクラウド上のプラットフォームが提供されていたので、外部のサービスを利用する方針を決定しました」

サービス選定は“完成度”にこだわり

 ユーピーアールでは、複数のクラウド事業者を候補として検討を進めた結果、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)が提供するIoT Platformサービス「Things Cloud®」の採用を決定しました。

「Things Cloud®」は、デバイス接続からデータ収集、可視化、分析、管理など、IoTに必要な機能やプロセスを簡単かつ短期間に実現できる開発・運用基盤です。

「『Things Cloud®』は既にサービスとして完成されており、この基盤の上で何ができるか、ということが非常に明確でした。同時に費用も体系化して明示されており、その点でも安心感がありました。

 新しいプラットフォームをクラウド事業者と一緒に構築していくような時間や余裕はありませんでしたので、既存サービスとして高い完成度を有していることが最も大きな採用の決め手となりました。加えて、以前からNTT Comのサービスをいくつか利用しており、それまでの実績や信頼感、事業規模なども選択の理由となりました」(川島氏)

 同時に、モバイル通信環境として、NTT Comの「OCN モバイル ONE」を採用。「Things Cloud®」と一元化して提供されることに加え、費用面でも従来の通信環境よりもコストダウンが図れることが採用の決め手になったといいます。

 それでも、ユーピーアール株式会社が既に開発して運用していた「スマートパレット」のシステムと「Things Cloud®」のデータ連携をどのように実現できるか、当初は少し不安があったといいます。

 しかし、「Things Cloud®」は、ソフトウェアを共有するインターフェースであるAPI(Application Programming Interface)が豊富に備わっており、連携の不安もすぐに解消。同社の基盤移行プロジェクトもスムーズに進行し、2018年2月に新しい環境での稼動がスタートしました。

 7月から検討開始し2月のリリースまで、わずか8ヵ月程度。この移行期間の短さも、クラウド利用のメリットといえるでしょう。

「スマートパレット」への導入イメージ

ユーザー拡大にも動じない導入効果とは

「スマートパレット」の新しい基盤は、稼動以降、「Things Cloud®」と「OCN モバイル ONE」に支えられ、トラブルもなく順調に運用されています。

「最も大きな導入効果は、当初の目的でもあった拡張性です。柔軟性の高いクラウド基盤を利用することで、今後はユーザーの拡大をまったく気にすることなくシステムを運用していくことができます。加えて、APIを介したほかのシステムとの連携も期待されるところで、いまいくつか話が進んでいます。

 たとえば、既存の『スマートパレット』の管理画面で満足できないお客様には、『Things Cloud®』の各種ウィジェット機能等を利用いただくという提案もできます。このようにサービスの可能性が広がることも、大きな効果といえるでしょう」と、川島氏はクラウド移行によって得られた効果を挙げます。

 また、自社で運用を行っていた以前と比べ、社内の運用負荷が格段に軽くなったことに加え、管理画面上でシステム全体の状況をすぐに把握できることも、運用の効率化に寄与しているようです。

 技術・マーケティング部のマーケティンググループ長を務めている原大輔氏は、「お客様に満足していただくためには、顧客ニーズに寄り添いながらサービスを先鋭化させることやスピード感を持った対応が不可欠です。

 今回、基盤として完成されていた『Things Cloud®』を利用することで、サービス展開として最初の一歩が違いました。従来とはまったくスピード感が変わってくるということです。今後、市場や顧客のニーズ変化にも柔軟かつ迅速に対応できるという意味でも、クラウド移行の意義は大きいと感じています」と、マーケティング部門ならではの視点で評価します。

 移行プロジェクト成功の鍵は、完成度の高いクラウド基盤を採用したことにあるようです。基盤構築に手間をかける必要がない分、ユーピーアール株式会社側は、お客様の管理画面の見せ方など、自社で提供している「スマートパレット」のアプリケーションに注力できた、と川島氏は言います。

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IoTプラットフォームのフル活用で新規ビジネスに期待

 ユーピーアール株式会社は、IoTプラットフォームを武器に、今後どのように新たな事業に活用していくのでしょうか。

「我々はまだ『Things Cloud®』の豊富な機能のうち10%程度しか使っていない感覚です。今後は残りの90%をいかに新しいビジネスに活用していけるのか、考えていきたいと思います。

 現在はパレットの在庫や入出庫の管理を行っていますが、たとえば、AIと連携して需要予測まで踏み込むといったことも今後の可能性として考えられるでしょう。NTT Comには、90%を占める部分の活用法提案や他社事例の紹介など、パートナーとしてのサポートを期待しています」(川島氏)

 中野氏は事業部長の視点から、今回のクラウド移行の成果と今後の展望で言葉を結びました。

「これまでお話ししてきたように、拡張性やスピードという面で基盤を強化できた意義は大きいと思いますが、より高い安定性を得たことにより、事業継続性という側面でも安心してサービスをお客様に提供できるようになりました。

 物流業界においてパレット自体の歴史は古いのですが、まだパレットを用いない“ばら積み”で荷物を運搬するケースも多くあり、効率化を図る目的でパレットの需要は今日でも伸長しています。人手不足を補う自動化や省力化を実現するサービスへの期待は高く、さらに付加価値の高いIoTサービスを提供したいと考えています」

 ユーピーアール株式会社の新たなIoTプラットフォームを活用し、パレットの在庫管理「スマートパレット」以外にも、パレット運搬時の移動軌跡、現在地の確認など、機能拡張を検討しているとのことです。インターネット通販が一般化する中、労働力不足による物流コストの高騰は消費者にも影響が大きいものです。NTT Comのクラウド基盤を活用したユーピーアール株式会社の新たなサービス展開が期待されます。

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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Bizコンパス編集部

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