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マーケティングの「今」
2019.08.02

次世代のビジネスは「材料」×「情報」で生まれる

三井化学株式会社 理事 次世代事業開発室長 コーポレートベンチャリンググループリーダー 善光洋文 氏

「材料」×「情報」が次世代事業のキーワード

―― ポートフォリオ変革に取り組まれた背景を教えてください

 三井化学のルーツは、1912年に発足した三井鉱山の石炭化学事業です。人口増に伴う食糧問題解消に貢献する肥料生産にはじまり、藍色文化の存続、プラスチック技術の導入など、常に時代のニーズに対し革新的技術と製品でソリューションを提供してきました。今、世界は人口爆発や高齢化、気候変動などの問題を抱えた変革期にあり、我々は原点に立ち返り、社会に貢献するソリューションを生み出し、ポートフォリオを変革していかなければなりません。

―― 次世代事業は“飛び地”“地続き”、どちらで進めるのでしょうか

 次世代事業開発の使命は、オープンイノベーションなどにより、既存の成長事業領域の境界・外縁領域のソリューション事業を創出することです。各事業本部、新ヘルスケア事業開発室、新モビリティ事業開発室、次世代事業開発室、ロボット材料事業開発室がそれぞれ連携しながら、既存のアセットを元に各施策を進めているので“飛び地”というより“地続き”に近いですね。

 たとえば、再生可能エネルギー分野で、我々は30年前に太陽電池封止シート「ソーラーエバ」を開発し、世界で初めて事業化しました。その後、10数年前にドイツとスペインでフィードインタリフ(FIT)制度が始まり、世界中で太陽光発電所の開発がはじまります。そのビジネスモデルは20年発電して初めて利益が出るため、太陽電池が本当に20年持つのか、耐久性を確認できないことが問題視されました。

 その課題に応えるため、我々は30年前から沖縄や四国、北海道で運用してきた太陽光発電のパネルを集め、劣化状況を調べ、当社のエラストマーを活用した従来品を大幅に上回る耐久性を持つ封止材の開発に成功しました。ここまでは当社のアセットを活用した従来事業の新製品ですが、この過程で我々は次世代事業のシーズを手に入れました。それは太陽光パネルの寿命と発電量を正確に予測する技術とノウハウです。

 最初は、発電所を建てる事業者への提供を考えましたが、その技術と情報を欲していたのは投資家や金融機関でした。たとえば、50メガワットの太陽光発電所の建設には、200億円以上かかりますが、その資金の提供者は投資家や金融機関です。200億円を融資する彼らにしてみると、たとえば10年間で発電が止まると返済が焦げつ いてしまいますから、20年間にわたる正確な発電量と耐久性を知ることは極めて重要だったわけです。

このように、材料の製造販売で培った技術を活かしインフォメーションビジネスをやろうというのが、次世代事業のひとつのアプローチです。そのベースは材料に基づいているので、我々は「材料」×「情報」というキーワードを掲げています。

――ベンチャーやスタートアップとも積極的に連携しているそうですね

 太陽光発電の診断ビジネスも、我々はパネルの予測技術を持っていましたが、発電所の診断技術はなかったので、ドイツのスタートアップと組んでスキームをつくりました。

 オープンイノベーションで敗血症の診断ビジネスを立ち上げました。敗血症は… 続きを読む… 続きを読む

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善光 洋文(ぜんこう ひろふみ)
1991年、三井東圧化学(現、三井化学)入社。自動車用材料開発、精密射出成型、電子・情報材料用フィルムのプロセス開発を担当。2002年成形加工学会青木固技術賞を受賞。2009年より三井化学ファブロ(現三井化学東セロ)にて産業用・食品用フィルム・シートの開発に従事。2016年三井化学東セロ新事業開発室長経て、2017年三井化学次世代事業開発室長として新事業の創出を担当
◎情報収集方法
毎日の通勤時に銀座のディスプレイを眺める
◎スキルアップ
スタートアップとの会話を機に社会にどのようなペインがあるかを深堀する

三井化学株式会社について
■ 事業内容 ヘルスケア事業、モビリティ事業、フード&パッケージング事業、基盤素材事業
■ 設立年月 1955年7月1日(創立1997年10月1日)
■ 本社所在地 東京都港区東新橋一丁目5番2号 汐留シティセンター
■ 資本金 125,205,581,299円
■ 従業員数 17,277人(連結 2018年3月31日現在)
■ 業種 化学
■ ホームページ

https://www.mitsuichem.com/jp/

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