2018.07.26 Thu

事業者都合の施策から、価値ある顧客体験の提供へ

株式会社三陽商会 IT戦略本部 ウェブビジネス部長 兼 オムニチャネル推進グループ長 安藤 裕樹 氏

 株式会社設立75周年を迎えた老舗アパレルの三陽商会。継承と革新を掲げ、総合ファッションカンパニーへ転換を目指す同社のオムニチャネル戦略をIT戦略本部の安藤氏に伺った

 

「いいものをつくれば売れる時代」は終わった

―― アパレルを取り巻く市場環境の変化と、その対策について教えてください

「いいものをつくれば売れる」という時代は終わりました。これからは“いいもの”の価値を「顧客体験」として提供できないと、お客さまは振り向いてくれません。商品をお買い上げいただく前に、まずはお客さまとのコミュニケーションを深めることが重要です。

 三陽商会では、全社的なコミュニケーション戦略を策定・推進する体制を整えるため、2017年に発表した「Sanyo Innovation Plan(SIP 2017)」において、組織の改革にも取り組みました。マーケティング&コミュニケーション本部とIT戦略本部という2つの部門を新設し、両部門が連携しながら、CRM施策やオムニチャネル施策を検討・実施しています。

―― 情報の流通スピードが劇的に速まり、ファッションもあっという間に陳腐化してしまう中、どうやって顧客のニーズをつかんでいるのですか

 データを集めて分析することは重要ですが、「何のための分析なのか?」という目的が明確でないと、単にセグメントやペルソナを設定するだけで、実体がないものになってしまうと思います。三陽商会は、デジタル(EC)だけでビジネスをしているわけではないので、リアル店舗での対面接客で得られた「お客さまの反応」も、大切な情報になると考えています。ただし、対面で得られる情報には、データ化や数値化が難しいものもあるので、現在、一部の店舗にAIカメラを導入し、購買データ以外の情報を収集し分析するテストを始めたところです。

―― リアルとECをつなげるために、どのような取り組みをしていますか

 ショールーミングの要素を含めた、複合的なデジタルショップの展開を検討しています。某外資系アパレルのポップアップショップでは、その店舗には試着用の在庫しか置いておらず、商品選択から試着予約・決済までを、すべてアプリで行うようになっています。通常は自宅への配送ですが、13時までに注文すると、その日の夕方には店舗で受け取ることも可能です。三陽商会としても、リアルとデジタルをつなぐような顧客体験を提供できる仕組みを検討しています。

 また、「SANYO MEMBERSHIP」という会員向けのアプリがあり、店舗での接客時にお客さまへインストールをお勧めしています。会員証としての機能があるので、お客さまにとっても便利ですし、今まで店舗でしか買ったことがないお客さまにも、プッシュ通知でECの商品情報などを提供することができます。いきなり「ECで買ってください」と言っても難しいと思いますが、普段から会員証として利用しているアプリから訴求すれば、自然なカタチでECへの誘導ができ、実際にアプリ経由でのEC売上は非常に伸びています。

 

AIを活用してサイトのUIを向上させる

――「SANYO iStore」が前年比20%増と伸びていますが、どのような施策を実行しているのですか

 SANYO iStore では、お客さまの購買履歴や閲覧履歴を学習して商品をお勧めする通常型のレコメンドエンジンに加えて、AIの画像認識を使ってレコメンドする仕組みも導入しています。これはお客さまが見た商品と似た画像、たとえば、商品のデザインだけでなく、画像の構図や背景、モデルのポーズや表情なども含めて、AIが画像を総合的に分析してレコメンドする仕組みです。この機能を導入してから、1人当たりの閲覧数も増え、購入率も向上しています。

 もうひとつの施策は、… 続きを読む

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安藤 裕樹(あんどう ゆうき )
1992年に学習院大学法学部を卒業し、三陽商会に入社後、営業・MD・店舗運営など、多岐に渡る業務を経験。2001年に同社を退社後、さまざまなアパレル企業でMD/ディレクター業務に従事。2005年からファッションEC事業に携わり、大手通販会社やECモール運営会社において、EC部門の責任者を歴任。2016年より三陽商会に復帰し、ウェブビジネスおよびオムニチャネル施策を推進中
◎情報収集方法
時間が許す限り、色々な人と会って直接話を聞く。Webやニュースアプリも活用し、SNSもこまめにチェックしている。
◎スキルアップのために心がけていること
「先を読む力」を強化するため、現時点で必要な特定のスキルアップだけにとらわれず、できるだけ多くの情報を収集

株式会社三陽商会について
■ 事業内容紳士服・婦人及び装飾品の製造販売 全国の百貨店、専門店、直営店での製品の販売
■ 設立年月昭和18年5月11日
■ 本社所在地東京都新宿区四谷本塩町6-14
■ 資本金150億251万742円
■ 従業員数991名(2017年12月31日現在・連結)、964名 (2017年12月31日現在・単独)
■ 業種アパレル
■ ホームページ

https://www.sanyo-shokai.co.jp

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