発売から1年半で4,000万個以上を売り上げた「明治ザ・チョコレート」。何度もの失敗を経て辿り着いたヒット商品の開発秘話を菓子商品開発部長の伊田覚氏に伺った。

 

失敗の歴史を乗り越えて誕生した「明治 ザ・チョコレート」

―― 「明治 ザ・チョコレート」とは、どんな商品ですか

 カカオ豆の特徴を最大限に引き出し、添加物を極力減らし、豆そのものを味わえるようにつくったチョコレートです。この商品を開発できた最大のポイントは、良い豆を入手できたことに尽きます。そのために、我々は10年以上前から豆の産地へ足を運び、生産者と連携し品質改良や継続的な調達ができる関係づくりに努めてきました。そういった長年の取り組みの集大成として誕生したのが、「明治 ザ・チョコレート」です。

―― 開発の経緯を教えていただけますか

 弊社スタッフは、調達や技術情報の収集のため頻繁に海外へ出かけており、以前からヨーロッパと日本のチョコレート市場の違いを実感していました。彼らは、日本でもヨーロッパのようにハイグレードなチョコレートを定着させたいと考え、これまで何度もチャレンジを続けてきました。

 ところが、過去7回の挑戦は失敗の連続でした。それでも、彼らは諦めず、その魂を持ち続けました。そうした中、近年、輸出入の障壁が下がり、このままではヨーロッパのハイグレード品が押し寄せて、日本市場を席巻するかもしれないという危機感が湧いてきました。

 そこで、失敗の歴史を乗り越え「もう一度挑戦するぞ!」と意を決して開発したのが「明治 ザ・チョコレート」です。実は、今の商品は2代目で、先代は別のパッケージデザインと商品内容で販売したところ、初年度は好調だったのですが、2年目から売上が低迷していたのです。

―― 失敗の歴史とは、想い通りの商品が開発できないのか、それとも消費者意識の問題なのか、どちらでしょうか

 一言で言えば、棚を維持できる売上を上げられなかったということです。我々はリニューアルにあたり、どこに課題があるのか、ディスカッションを繰り返し、消費者にもヒアリングを行うなど徹底した調査を行いました。その結果「パッケージも含め、商品の価値がお客さんに伝わってない」ことが見えてきました。

 そこで、商品の価値をきちんと理解できるよう全体を組み直したのが、この「明治 ザ・チョコレート」です。普通は商品をリニューアルするとき、パッケージは今まで以上にわかりやすくするのが常套手段ですが、今までとは逆のアプローチをしました。

―― むしろ抽象的なデザインになり、チョコレートらしさがわかりにくくなったとも感じます

 そう言う意味では今までと真逆です。パッケージというのは、店頭に並んだとき「今までと違う」という気付きを与えることが重要です。気付きがあってこそ、その次の説明が生きてくるので、説明は裏側でいいとわりきって考えました。さまざまなデザインが候補に挙がりましたが、気付きを与えられるパッケージとは何かを突き詰めた結果、要素を削ぎ落としてシンプルにし、中心にカカオを置いて「これが我々の魂です」とシンボリックに表現したデザインになりました。

 

豆の確保と特徴を引き出す条件出しが商品化のポイント

―― ハイエンドなチョコレートはショコラティエが手づくりするというイメージがあります。それを大量生産するには、相当な苦労があったのではないですか

 一番難しかったのは、… 続きを読む

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伊田 覚(いだ さとる)
1960年、山形県出身。1983年明治製菓株式会社に入社し、東海工場配属。1991年より本社商品企画や研究所開発部門で菓子・健康志向商品を担当、2017年に執行役員 菓子商品開発部長に就任、以降現職。
◎情報収集方法
ネット、新聞、雑誌など雑食。オーガニック、ナチュラルフード系の情報は、特に興味を持って調べている
◎スキルアップ
通勤途中にデジタルツールを使って英会話を勉強

株式会社明治 について
■ 事業内容牛乳・乳製品、菓子、食品の製造販売等
■ 設立年月2010年11月8日
■ 本社所在地東京都中央区京橋二丁目2番1号
■ 資本金336億4千万円
■ 従業員数10,802人(平成29年3月31日現在)
■ 業種食品製造
■ ホームページ

http://www.meiji.co.jp/

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