全国に約700の保険薬局を展開するクオール株式会社。セルフメディケーションの推進役として期待される保険薬局事業の現状と今後について専務取締役の岡村氏に伺った。

 

薬歴データに加え処方履歴情報を活用してアドヒアランス向上に取り組む

―― 保険薬局におけるデータ活用の重要性について教えてください

 今は、ほとんどの薬局が電子薬歴システムを導入していて、さまざまな情報が個々の薬局に格納されています。クオール薬局では、患者さんから同意を得られた個々の諸情報をクラウドのデータセンターに集約し蓄積しています。これを使うことで、クオールグループの薬局であれば、全国どこでも薬剤師が患者さんの過去の処方履歴情報、体質の情報などを参照でき、その情報を踏まえ服薬指導に活かしています。

 データを生かすという意味で、もうひとつ重要なのがアドヒアランス(内服遵守)の向上です。これは、患者さんに治療方針を理解していただき、自らがきちんと服薬を続けていただくことを意味します。患者さんの中には、薬が効いているのかわからないからと途中で服薬をやめてしまう人が少なくありません。これが糖尿病患者だった場合、症状が悪化すれば透析が必要になり、結果的に医療費増大につながってしまいます。そのためにアドヒアランス向上は、国としても重要な課題と認識しているのです。

 米国には、アドヒアランスを向上させるため、患者さんと薬剤師が面会し、服薬あるいは療養指導を定期的に続けるプロジェクトがあります。カウンセリングを続ければ患者さんは医療費の自己負担金が無料になり、同時にカウンセリングを行う薬剤師には、市からカウンセリングフィーが支払われるといった仕組みです。ところが日本にはそのような仕組みはありませんので、我々ができる事としては、薬局でパンフレットを配布したり、薬剤師が電話をかけたりして患者さんのアドヒアランス向上に取り組んでいます。その取り組みの成果は、薬歴データを参照すればわかります。データ分析によれば、きちんと指導した群は何もしない群と比較してリピート率(一定期間に患者さんが再度来局する率)が10%以上高くなりました。

 我々はこうしたデータを、現場に提示することでアドヒアランス向上の重要性を伝えたり、メーカーを通じて全国の薬局にこの取り組みを広めてもらうなどの活動に使っています。

―― 保険薬局のIT活用として電子お薬手帳がありますが、御社もスマホアプリは戦略的に使っていく方針ですか

 電子お薬手帳は、薬を飲む時間になるとメールがきたり、アラームが鳴ったりする機能があり、アドヒアランス向上にもつながるといわれています。我々もNTTドコモさんが開発したアプリをカスタマイズして使っていますが、最低限の機能を用意しつつも過剰なサービスへの投資は行っておりません。なぜなら、2016年4月に実質解禁された電子処方箋の普及が進めば、お薬手帳は要らなくなる可能性もあるからです。我々が提供するクオールアプリは、お薬手帳機能だけではなく、声でその日の体調がわかるちょっと遊び心のあるコンテンツや、食事のアドバイス、血圧管理、処方箋を写真に撮って薬局に送れるなど、健康管理ができるさまざまな機能を併せて提供しています。

―― ローソンやビックカメラ、JR西日本などの異業種と積極的に連携していますが、その狙いを教えてください

 少し前まで、処方箋は院内の薬局か門前薬局で受け付けするものだと思われていましたが、今の消費者は、どこの保険薬局でも受け付けてくれるとわかっているので、門前薬局が混んでいたり、時間がなかったりすると、家の近くや通勤途中の駅など、患者さんにとって利便性の高い場所へ処方箋が分散しています。私は、これを「浮遊処方箋」とか「流動処方箋」と呼んでいますが、これをつかまえるためにはじめたのが、ローソンさん、ビックカメラさん、JR西日本さんとの連携です。要は、人が集まるところに出店し、処方箋を受け付けられるようにしたということです。

 

変わりゆく保険薬局を巡る市場環境

―― 医薬品医療機器等法の改正で、在宅医療や24時間対応の薬局に優遇措置が取られるようになったそうですが、御社の対応状況はいかがですか

 クオールは、私が入社した19年前から在宅医療に対応していたので、同法改正後も特別な対応はしていません。我々の在宅医療の特徴は、… 続きを読む

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岡村 章二(おかむら しょうじ)
1958年生まれ。埼玉県出身。薬剤師として新卒でマツモトキヨシに入社、漢方を学ぶために入社した薬日本堂で本社業務を経験し、40歳でクオールに入社、現在に至る
◎情報収集術
新聞や業界紙の購読、Webメディア。メーカーやいろいろな業者の方々との情報交換
◎スキルアップするために心掛けていること
自宅の薬局、ドラッグストア、漢方、調剤と50年以上業界で積み重ねてきた経験を集約し、地域の方々にとって“良い薬局”とは何かを常に考え続けること

クオール株式会社について
■ 事業内容調剤事業をはじめCSO(医薬品販売業務受託機関)事業やCRO(医薬品開発業務受託機関)事業などBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)受託事業を展開
■ 設立年月1992年10月13日
■ 本社所在地東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー37階
■ 資本金28億2,855万円(2016年3月31日現在)
■ 従業員数正社員3,778名・臨時雇用者1,572名(2016年3月31日現在)
■ 業種小売業
■ ホームページ

http://www.qol-net.co.jp/

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