4年連続で、年間販売個数のギネス世界記録を更新し続けているスイーツがあります。それが、兵庫県は芦屋生まれの洋菓子ブランド「アンリ・シャルパンティエ」が提供する焼き菓子「フィナンシェ」です。

 いまでこそ、お中元やお歳暮といった贈答品として重宝されるフィナンシェですが、現在に至るまでにはいくつもの困難がありました。しかし、その度に妥協を許さず、「たったひとつのお菓子から心ときめくシーンを演出する」という使命を守り続けてきました。フィナンシェに秘められた創業者の“こだわり”、そして“精神”とは一体どのようなものなのでしょうか。今回は、アンリ・シャルパンティエのブランドヒストリーに迫ります。

 

青い炎の向こうに見た創業の原点

 高度経済成長期、大阪のとあるレストランで働く一人の男がいました。ある日、男がキッチンからホールをのぞいていると、一皿のデザートに目を奪われます。その名は「クレープ・シュゼット」。クレープをオレンジ果汁で軽く煮たデザートです。

 その店では、クレープ・シュゼットをちょっとした演出とともに提供していました。店内の照明を暗くし、そこへ、サービスマンがレストラン客の前に調理台付きのワゴンを運び、調理台の上でクレープをフランベ(度数の高いアルコールを料理に振りかけ、アルコールを飛ばす調理法)すると、青い炎が立ち上がります。男は炎の向こうで幸せそうな笑顔を浮かべる客を見て、「たったひとつのデザートがこんなにも人を幸せにするのか」と大きな感銘を受けました。

 その男こそ、アンリ・シャルパンティエ創業者の蟻田尚邦(ありた・なおくに)。尚邦は、クレープ・シュゼットを、レストランに訪れる一部の人ではなく、より多くの人々に食べてもらいたい、お菓子を通して幸せ、喜び、驚きを生み出す「うるおいあるシーン」を演出したい、と考えるようになります。

 1969(昭和44)年4月、尚邦は、阪神芦屋駅前に小さな喫茶店「アンリ・シャルパンティエ」をオープンします。クレープ・シュゼットを考案した19世紀の名料理人にちなんだ店名です(なおクレープ・シュゼットの起源については諸説あります)。

 当時の喫茶店は、待ち合わせや時間つぶしの目的で使われることが多く、窓はスモークガラスで目隠しされた閉鎖的なつくりが一般的でした。その中で、尚邦は、窓から光が差し込むオープンな空間と、調度品、食器にもこだわった「デザートが食べられる喫茶店」という新しいスタイルを打ち出します。  

 オープン後は看板料理のクレープ・シュゼットが評判を呼び、客足は順調に伸び、やがて行列のできる店になります。そこで、満席で入れない客に対してお菓子のテイクアウト販売を開始したところ、これも人気となり、いつしか喫茶店利用の売り上げをしのぐようになっていきます。

 そんなある日、評判を耳にした百貨店から、出店の声がかかります。尚邦は、百貨店の「贈答品にふさわしい洋菓子をつくってほしい」という要望を受け、ギフトに最適なお菓子の開発に着手。試行錯誤を重ね、出店の目玉商品としてフィナンシェを開発し、1975(昭和50)年、神戸そごうに百貨店第1号店をオープンします。

 

現在も受け継がれる「よろしゅうございますか」

 アンリ・シャルパンティエのフィナンシェには、こだわりと進化が詰まっています。

 フランスを起源とする焼き菓子であるフィナンシェは、材料・製法のシンプルさが特徴です。材料は薄力粉、卵白、アーモンドパウダー、バター、砂糖のみ。製法もそれらを混ぜ、型に入れて焼き上げるだけです。つまり、ごまかしはききません。アンリ・シャルパンティエは、百貨店に出店するにあたり、徹底的にフィナンシェを研究しました。

 材料で特にこだわったのが、… 続きを読む

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株式会社シュゼット・ホールディングスについて
■ 事業内容菓子・パン類の製造・販売ならびに喫茶、左記に関する付帯業務
■ 本社所在地〒662-0927 兵庫県西宮市久保町5-16 ハーバースタジオ43南館
■ 従業員数374名(2017年10月現在)
■ ホームページ

http://www.suzette.co.jp/

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