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2017.01.25

日本企業の先行きを占う、「会社四季報」80年の歩み

会社四季報

 国内の証券取引所に上場している全企業の最新情報を、季節ごとに提供してくれる「会社四季報」(東洋経済新報社刊)。業績や株価といった企業の過去の情報だけでなく、実際の取材をもとにした業績予報を提供している同誌は、2016(平成28)年に創刊80周年を迎えた今も、企業情報誌の分野でトップシェアを守り続けています。

 「会社四季報」は、その80年を超える歴史の中で企業の未来をどのように占ってきたのでしょうか。その歩みをたどります。

 

全上場企業を一冊に収める限界の厚み

 「会社四季報」はその名前の通り、年に4回(3月・6月・9月・12月)発行される企業情報誌です。各号の発行部数は約50万部で、企業情報誌の分野では8割近いシェアを常に維持しています。

 2016(平成28)年12月に発売された、最新号の「会社四季報 2017年1集・新春号」では、3,635社の情報を掲載。そのページ数は2,032ページ、本の厚さは約45ミリに及びます。

 ちなみに2,032ページ、45ミリという厚さは、国内にある製本機で作れる限界に近い厚さ。この1冊の中に、国内の証券取引所に上場している全企業(3,600社強)の住所、電話番号、メインバンク、取引先、役員、従業者数、大株主、財務、株価といった基礎的なデータから、取材をもとにした独自の業績予想まで、多岐にわたる情報が収められています。

 そんな「会社四季報」が創刊したのは、1936(昭和11)年のことです。日本において四半期決算が広がり始めたのが2002(平成14)年のことですから、「会社四季報」は60年以上も前から四半期ごとの企業動向を届けてきたことになります。

 時代を先取りしてきた「会社四季報」は、いかにして生まれてきたのでしょうか。

 

「生きた会社要覧」を!創刊に込められた思い

 「会社四季報」を発行する東洋経済新報社が創立したのは、日清戦争が終わった1895(明治28)年11月のことでした。創立者は後に農林大臣や商工大臣を務めた町田忠治(まちだちゅうじ)です。町田は同年同月に、イギリスの経済誌「エコノミスト」を手本に、総合経済誌「東洋経済新報」(現在の「週刊東洋経済」)を創刊。「東洋経済新報」発行の趣旨には、創刊の目的を、「健全なる経済社会の発展」に貢献することであると記されています。こうした理想のもと、「会社四季報」が生まれる下地が育まれていきます。

 1930年代、既に株式投資の参考となるような企業情報誌は幾つか存在していました。しかし、どれも発行頻度は年に1回、多くても2回にとどまっており、内容も営業報告書を整理要約したものに、役員の氏名と株価の推移が載っているくらいの簡単な内容のものに過ぎませんでした。それでは投資の参考にならないと異を唱えたのが、東洋経済で関西支局長を務めていた小倉政太郎(おぐらまさたろう)でした。

 小倉は、投資対象として企業を見る場合、年に1、2回の動向を追うだけでは不十分であり、四半期ごとの動向を知らせる「生きた会社要覧」が必要だと考えました。さらに小倉は、企業が発表した過去の数字だけでなく、今後の見通しを半分盛り込んだ四半期報を出したらどうかというアイデアも加え、新しい企業情報誌を社内で提案。その発刊が1935(昭和10)年12月に承認されます。

 小倉の考案した企業情報誌は、年に4回、四季ごとに発行することから「会社四季報」と名付けられ、1936(昭和11)年6月に創刊します。

 創刊号は、新書判よりやや小さいサイズのもので、36業種298社の企業データが収録されていました。1ページに1社分の情報が掲載され、ページの上段にはその企業の業績や配当予測などを配置。下段には設立、決算期、事業内容、資本金、株数、重役、大株主、事業規模、生産高などの基本的な企業データが並ぶ構成になっていました。四半期ごとに情報を提供する「速報性」、業績を見通す「予測性」、1冊の中に豊富な情報を収める「一覧性」、という「会社四季報」の基本コンセプトは、創刊当時からその後も変わることなく引き継がれていきます。

 「会社四季報」は発売当初から、証券会社による一括注文が入るなど、その評判は上々だったようです。当時、東洋経済新報社が配布した社内報には、創刊号について「四季報は市場人の絶賛を得、大口注文が続々とあります」と記されています。

 幸先のよいスタートを切った「会社四季報」ですが、戦争が暗い影を落とします。… 続きを読む… 続きを読む

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株式会社東洋経済新報社について
■ 事業内容 雑誌事業・書籍事業・デジタルメディア事業・データベース事業・ビジネスプロモーション事業など
■ 設立年月 1895(明治28)年11月15日
■ 本社所在地 〒103-8345 東京都中央区日本橋本石町1-2-1
■ 資本金 1億円
■ 従業員数 269名(2016年9月30日現在)
■ ホームページ

http://corp.toyokeizai.net

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