騒音に邪魔されず、快適に音楽が楽しめるノイズキャンセリングヘッドホンを、世界で初めて広く普及させたのがボーズ社です。街中や航空機、電車の中など、騒音がある中でも音楽を快適に聴くことができるノイズキャンセリング技術は、どのようにして誕生し、世に広まっていったのでしょうか。その歴史をたどります。

 

人間の耳が気持ちよく感じる音を求めて

 ボーズ社はMIT(マサチューセッツ工科大学)の教授であった、アマー G.ボーズ博士により、1964(昭和39)年に設立された研究開発型の企業です。

 クラシック音楽が大好きで、自身でもバイオリンを弾いていたボーズ博士は、MITの大学院生時代に、当時最高のスペックを誇るステレオシステムを購入しました。早速そのステレオシステムで音楽を聴いてみると、ボーズ博士はショックを受けます。そこから流れてくるバイオリンの音が、生の演奏を聴いたときの音色とは全く異なるものだったのです。

 そのことがきっかけで、ボーズ博士は生演奏の臨場感をスピーカーで再現するため、電気的な数値やスペックよりも、人間の耳にいかに気持ちよく聞こえるかといった心理音響学、部屋の環境などによって音が受ける影響を明らかにしていく室内音響学も併せて研究を始めました。それがボーズ社の設立につながります。

 以来、ボーズ社は半世紀以上にわたって、いつでもどこでも、人間の耳が気持ちよく感じる音を求めて、研究開発を続けることになります。

 1964(昭和39)年の設立当初、ボーズ博士とその教え子である2人の従業員は、昼間は事業の中心であった米国国防省やNASAなど、政府機関の向けの電力調整システムを開発し、夜になると自らの夢である音響特性やスピーカーの設計をしていました。

 1966(昭和41)年に、民生用ブランド「Bose」の第1号となる「2201」というスピーカーを発売します。「2201」は、22個のスピーカーユニットを配置するなど、当時としては画期的な技術が採用されていましたが、価格の高さや営業ノウハウが不足していたことからあまり市場には受け入れられませんでした。

 1968(昭和43)年には、心理音響学の分野にまでわたる広範囲な研究から生まれた「スピーカー901」を世に送り出します。生演奏の音の広がりを高い精度で再現する独自の工夫を備えていることで、ヒット商品となりました。

 民生用のスピーカーで成功を収めたボーズ社ですが、さらに飛躍の時を迎えます。

夢と情熱から生まれたスピーカー

 製品第1号となった「2201スピーカー」は、8分の1球体という独特の形状をしていましたが、これは部屋の角に納まるよう考えられたものです。上述の通り販売は伸びなかったものの、奇抜な形状と斬新な音響理論がオーディオ業界で大きな反響を呼びました。

 そして「スピーカー901」には、直接音と間接音のバランスを工夫することで、コンサートホールのような臨場感を再現するボーズ社独自の「ダイレクト/リフレクティング理論」を採用。スピーカーユニットを前面1つ、背面に8つ配置した、当時の常識を破るスピーカーシステムでした。いずれも「コンサートホールで聴いた、生演奏の感動を再現したい」、そんなボーズ博士の夢を実現するために生まれた製品でした。

 

航空機内での一瞬のひらめきから生まれた技術… 続きを読む

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ボーズ・コーポレーションについて
■ 事業内容音響など、さまざまな分野の技術の研究開発
■ 設立年月1964年
■ 本社所在地The Mountain, Framingham, MA 01701-9168
■ ホームページ

https://www.bose.co.jp

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