「良薬は口に苦し」ということわざもある通り、一昔前まで“薬”といえば「苦くてまずい」のが当たり前でした。そうしたイメージを一新し、それまでになかった“おいしいドリンク剤”というジャンルを切り拓いたのが「リポビタンD」です。発売50周年を超えるドリンク剤の先駆者「リポビタンD」の歴史をひも解きます。

 

「薬は苦くてまずい」という固定観念を逆手に取る

 「リポビタンD」の歴史は、その主となる栄養成分「タウリン」と大正製薬の出会いからはじまります。

 タウリンはアミノ酸の一種で人体のほとんどの臓器や組織に存在し、各部位が順調に機能するための潤滑油となる、人間の生命活動に欠かせない物質です。水に溶けやすく体内に吸収されやすいのも特徴で、第二次世界大戦時には急上昇や急降下を繰り返し、極度に神経を使う戦闘機パイロットの疲労回復にも用いられました。

 このタウリンの可能性に日本でいち早く着目したのが大正製薬です。同社は、1940(昭和15)年頃から、タウリンの研究を開始しました。

 やがて日本が高度成長期を迎え、疲労回復のニーズが高まる中、1960(昭和35)年に大正製薬は「リポビタンD」の原型となる「リポビタン」を発売します。同商品には錠剤とアンプル剤(小瓶に入った服用液)の2種類があり、特にタウリンとビタミンを水に溶かして飲みやすくしたアンプル剤「リポビタン液」は好評を博し、当時起こったアンプル剤ブームの火付け役にもなりました。

 「リポビタン液」が好調な売り上げを記録する中、それに満足することなくさらにその先を見据える男がいました。大正製薬の3代目社長・上原正吉です。“薬は苦くてまずい”と思われていた当時にあって「リポビタン液」が評判を集めた理由は、まだまだ薬の匂いは残るものの、他社の商品と比べれば味が良かったからです。そこに目をつけた正吉は、「量をもっと増やせば薬の匂いは薄れるし、もっと飲み応えのあるものになる。さらに味を良くすれば、よりおいしく栄養補給ができ、多くの人に喜ばれるのではないか」とひらめき、アンプル剤の大型化に取り組みます。

 そして、1962(昭和37)年に、20mLから100mLへと大容量になったドリンク剤「リポビタンD」を発売します。「リポビタンD」は、おいしく飲むために、当時高級品だったパイナップルの爽やかな味付けにするとともに、それまで常温で飲むのが当たり前だったアンプル剤を“冷やして飲む”ことにもこだわりました。薬を冷やすために当時はまだまだ普及の途上にあった冷蔵庫を、牛乳販売店用の冷蔵庫から転用するなど工夫を凝らします。

 しかし、満を持して売り出そうとした矢先、大きな壁が立ちはだかります。… 続きを読む

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大正製薬株式会社について
■ 事業内容セルフメディケーション事業 (OTC医薬品等)、医薬事業 (医療用医薬品)
■ 設立年月1928(昭和3)年5月5日
■ 本社所在地〒170-8633 東京都豊島区高田3丁目24番1号
■ 資本金298億400万円
■ 従業員数3,370人
■ ホームページ

http://www.taisho.co.jp/

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