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 日本人なら誰もが知っている乳酸菌飲料「ヤクルト」。子どもの頃、冷蔵庫に常備された甘酸っぱく、さっぱりした味わいの「ヤクルト」を楽しみにしていた方も多いのではないでしょうか。そして、飲み干した後に「ちょっと物足りない」と感じた方も少なくないと思います。この味や容量には、創始者の想いが込められています。

 現在、関連商品を含めると世界中で1日3,000万本以上も飲まれている「ヤクルト」の約80年にわたる足跡をたどります。

 

予防医学を先取りして誕生した乳酸菌飲料

 「ヤクルト」の歴史を振り返るためには、「ヤクルト」のベースとなる乳酸菌がどうやって誕生したのかを振り返る必要があります。少し長くなりますが、大事なことなので順を追って紹介します。

 ヨーグルトは、牛乳などに乳酸菌や酵母を接種してつくる発酵食品のひとつ。その発祥は、ヨーロッパ、アジア、中近東など諸説ありますが、人類が家畜を飼いはじめた約7,000年前に、生乳の入った容器に偶然、乳酸菌が入り込んだのがはじまりだと考えられています。その後は傷みやすい生乳を発酵させて日持ちさせる保存食として利用されてきました。なお、語源はトルコ語の動詞であるヨウルト(かき混ぜる)に由来しています。

 日本では、奈良時代の貴族に珍重されていた「酪(らく)」と呼ばれる乳製品がヨーグルトのはしりといわれています。日本に広くヨーグルトが普及するのは、戦後になってからのことです。それよりも先に普及したのが、ヨーグルトに甘味料、香料や果汁などを加えて飲みやすくした乳酸菌飲料でした。大正時代、世界に先駆けて日本で初めて発売された乳酸菌飲料は、たちまち評判を呼び、広く一般家庭に普及していきます。

 これを受けて日本では乳酸菌飲料の研究開発が進みました。ヤクルトの創始者、代田 稔(しろた みのる)もそうした研究に取り組んだ1人です。

 当時の日本は決して豊かとはいえない状況で、衛生環境の悪さ、栄養不足などによる感染症で命を落とす子どもが少なくありませんでした。そんな現実に心を痛めていた代田は、京都帝国大学(現・京都大学)に進学。病気にかかってからの治療ではなく、病気にかからない身体をつくる「予防医学」を志し、微生物研究の道に入ります。そこで代田は「菌をもって菌を制す」の考えのもと、腸内の悪い菌を退治する乳酸菌を発見し、この菌を生きたまま腸に届ければ人々の健康に貢献できると確信しました。

 しかし乳酸菌は胃液、胆汁などの消化液に弱く、生きて腸に届く強い菌をつくる挑戦は困難を極めます。試行錯誤の末、1930(昭和5)年に代田は世界で初めて乳酸菌の強化培養に成功。その生きて腸に届く菌には、代田の名をとって「乳酸菌 シロタ株」(以下、シロタ株)と名付けられました。

 その後、代田はシロタ株を1人でも多くの人々に届けるため、有志とともに生きたシロタ株を含む乳酸菌飲料の商品化に着手します。そして1935(昭和10)年、福岡市に設立した代田保護菌研究所で、「ヤクルト」の製造・販売をスタートします。

ヤクルトの語源は世界共通語?

 「ヤクルト」という名前は、ポーランドの言語学者・ザメンホフが世界共通語として考案したエスペラント語において、ヨーグルトを意味する「ヤフルト」に由来しています。それを日本人にも発音しやすいようアレンジした造語です。現在、世界33の国や地域で飲まれている「ヤクルト」は、世界の共通語といえるのかもしれません。

 

店売りをせず手売りにこだわる理由… 続きを読む

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株式会社ヤクルト本社について
■ 事業内容食品、化粧品、医薬品などの製造販売、その他
■ 設立年月1955(昭和30)年4月9日
■ 本社所在地〒105-8660 東京都港区東新橋1丁目1番19号
■ 資本金311億1,765万円
■ 従業員数2,913名(2015年3月末日現在)
■ ホームページ

http://www.yakult.co.jp/

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