戦後間もない日本で、全国各地を巡回する宣伝カーがありました。「セロテープ」の大きな文字がよく目立つワゴンカーは、可愛いらしい形から行く先々で注目を集めたといいます。

 モノを貼る身近な道具といえば「糊」や「画びょう」しかなかった時代に、透明なセロハンでつくられた粘着テープは、誰もが初めて目にする不思議なモノで、使い方どころか名前も知らない人がほとんどでした。ニチバンは、その使い方を一から伝えるとともに、「セロテープ」の名前を日本中に広めていきました。

 今ではセロハンテープの代名詞として使われている「セロテープ」の歴史に迫ります。

 

絆創膏から日本初のセロハンテープへ

 ニチバンの創業は1918(大正7)年のこと。絆創膏や軟膏などを製造・販売する製薬会社としてスタートしました(当時の社名は「歌橋(うたはし)製薬所」)。その会社から、どのようにして日本初のセロハンテープが誕生したのでしょうか?

 きっかけは、第二次大戦後に日本に駐留したGHQが、事務用に使っていたアメリカ製のセロハンテープの輸入が遅れ、在庫が不足したことでした。当時の日本にはGHQが求める品質のセロハンテープはなく、アメリカ製と同じようなものをつくってほしいと、ニチバンに白羽の矢が立ったのです。1947(昭和22)年12月のことです。

 ニチバンにとってそれは渡りに船でした。当時の社長・歌橋憲一氏は、その数カ月前にアメリカ製のセロハンテープを目にしていたのです。それが欧米で人気を集め、幅広く活用されていることを知り、「これは日本に絶対必要になる」と確信。すでに試作品の製作に挑んでいたのです。しかも、ニチバンは1942(昭和17)年にセロハンを基材とした粘着テープの製造や、紙粘着テープの製造経験もあり、技術には自信がありました。

 ここで認められれば、GHQの評価を背景に日本のセロハンテープ市場を切り拓く大きな足がかりとなると、ニチバンは意気込みました。

「セロハンテープ」と「セロテープ」の違いは?

 「セロハンテープ」とは、セロハンを使った粘着テープの一般名称です。一方、「セロテープ」はニチバンが開発した「セロハン粘着テープ」の商品名で、1959(昭和34)年に「セロテープ」として商標登録されています。 他社製品のセロハンテープも「セロテープ」と言ってしまう人がいるほど、私たちの暮らしにすっかり浸透していますが、くれぐれもお間違えのないように。

 

不満足なできにも関わらずGHQが称賛した理由… 続きを読む

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ニチバン株式会社について
■ 事業内容メディカル事業、テープ事業
■ 設立年月1918(大正7)年1月
■ 本社所在地東京都文京区関口2丁目3番3号
■ 資本金54.51億円
■ 従業員数725名
■ ホームページ

http://www.nichiban.co.jp/

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