時代や世代を超えて愛され続けるものは、ゆるぎない思想、哲学がものづくりの根底に流れています。今回のロングセラー商品はコクヨ株式会社の事業子会社であるコクヨS&T株式会社の「キャンパスノート」。1975(昭和50)年の発売以来、40年にわたり不動の定番商品として広く知られています。シリーズ累計販売冊数27億冊。実に使用経験率は91%(コクヨS&T調べ)に達し、1億人の日本人が使ったことがある計算になります。このロングセラー商品誕生の背景には、創業時からコクヨが持ち続けている企業理念がありました。

 

コクヨの原点を築いた“カスの商売”という理念

 コクヨの創業は、1905(明治38)年。創業者の黒田善太郎が和式帳簿の表紙店を開業したのが始まり。和式帳簿とは日本の近世商業帳簿の総称で、当時の商いには欠かせないものでした。その和式帳簿の表紙の下請け製造という、ニッチな商売からスタートした黒田は「誰も手を出さない厄介な“カスの商売”でも、人に役立つことを続ければ必ず受け入れられる」という理念のもと、創意工夫を重ね、徹底的に表紙づくりを突き詰めていきます。そして“黒田の表紙”が世間に高く評価されるようになると、徐々に表紙を含む和式帳簿の一貫生産へと事業を拡大していったのです。

 明治から大正へ時代は移り、“西洋化の波”を受けた日本では、和式帳簿に代わり洋式帳簿が普及していきます。ここに目を付けたコクヨは、1913(大正2)年、当時はオーダーメイドが一般的だった洋式帳簿をメーカーとして日本で初めて既製品化して販売開始。さらに伝票や仕切書、複写簿、便箋などの製造・販売にも手を拡げ、紙製品メーカーとして確固たる地位を築いていきます。

 昭和に入ってもコクヨの躍進は続きますが、太平洋戦争による混乱の時代を迎えます。コクヨは戦時下の物資不足を解消するため、インドネシア、中国に進出。実は、この頃インドネシアに設立したジャワコクヨ商店向けに作った輸出用のノートが、コクヨの手がけたノートの第1号となるのです。

 苦難の時代を乗り越えたコクヨは、戦後の帳簿特需を受け、1952(昭和27)年ごろには戦前の最盛期の生産量にまで復活します。そして1960(昭和35)年には、スチール製品業界に参入。書類を収納するキャビネットや机、椅子を皮切りに、紙製品まわりの文具、家具、事務機器の分野に進出していきます。

 1969(昭和44)年、“オフィス用品のすべてをコクヨに”というモットーを掲げて完成した大阪の新本社ビルは、全館のオフィス用品をコクヨ製で統一。そこで社員の働く姿を見学できる“ライブオフィス”として公開したことで大きな話題を呼びました。こうして、70年代後半にコクヨは“帳簿の老舗”から“先進的な総合オフィスメーカー”へと企業イメージを一新。“次世代のワークスタイルを自社内から発信する”姿勢は、今も変わることなく東京、大阪のショールーム、全国のライブオフィスなどに受け継がれています。

マーケティングの先駆け「オマケ」をつけて大ヒット

 「消費者目線のものづくり」。そんなコクヨの姿勢を物語るエピソードの一つが、創業者自身が行ったユーザー調査に基づき、1932(昭和7)年に発売された便箋“色紙付書翰箋”です。

 当時一般的であった便箋サイズや罫幅を見直し、その使い勝手を使用人などに聞いて回りました。また、表紙に人気絵画などをあしらった意匠便箋が主流でしたが、表紙は中紙がなくなればいずれ捨てられるので2色刷りの簡単なものとし、別に切り離して保存ができる豪華な一流画家作品の色紙をオマケに付けました。

 この“色紙付書翰箋”は空前の大ヒットに。10色以上のオフセット刷りという凝った色紙は、現在のコレクターズカードの先駆けといえるかもしれません。

 

後発メーカーとして満を持してのノート事業進出

 日本における多目的利用を想定したノートの誕生は、1884(明治17)年。東京帝国大学(東京大学)前の文房具屋が販売したのが始まり。一説によると、当時、あまりにも高価だったため「学問のできる帝大生しか使えない」ということで大学ノートと呼ばれるようになったといい、多くのメーカーから発売されていきます。

 戦後、日本の教育や文化が大きく変わり始めた1950年代、コクヨは独自の価値を有するノートづくりに着手。それまでの主流は2つ折りの紙を重ねて糸でとじる糸とじノートでしたが、… 続きを読む

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コクヨ株式会社 (KOKUYO Co.,Ltd.)について
■ 事業内容ステーショナリー関連事業、ファニチャー関連事業、通販・小売関連事業
■ 設立年月1905年 (明治38年) 10月
■ 本社所在地大阪市東成区大今里南6丁目1番1号
■ 資本金158億円
■ 従業員数連結 6,673名、単体 348名(2014年12月末現在)
■ ホームページ

コクヨ株式会社:http://www.kokuyo.co.jp/

コクヨS&T株式会社:http://www.kokuyo-st.co.jp/

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