齋藤 正勝(さいとう まさかつ)
多摩美術大学芸術学部卒。1989年野村システムサービス入社、1993年第一証券入社、1998年伊藤忠商事に入社し日本オンライン証券の設立に尽力。2001年カブドットコム証券設立し執行役員情報システム部長に就任。2003年に代表取締役COO、2004年に代表執行役社長、2005年に取締役代表執行役社長に就任、以降現職
「当社はお客さまの投資成績(信用評価損益率)を毎月すべて開示しています。なぜなら、どこよりも良い投資成績を出せる自信があるからです」とカブドットコム証券の齋藤正勝社長は豪語する。同社は、数少ない自社開発システムを運用するネット証券であり、その強みを生かして「逆指値」を始めとする「自動売買」など、特許技術を基にしたサービスを開発し顧客の高い評価を得ている。
そして今、未来に向けて新たな布石を打とうとしている。2018年には株式・先物・オプション取引に対応したAPI環境「kabu.com API」をAWS(Amazon Web Services)上に構築し、BaaS(Brokerage as a Service)として提供する方針を発表。さらにKDDIが49%の株を保有したことに伴い2020年までに社名を「auカブコム証券」へ変更する方針も明らかにしている。
Fintech企業が台頭する中、独創的なビジネスで業界をリードする同社は金融ビジネスにどのような変革をもたらすのか、齋藤正勝がすべてを語る。
プロのミュージシャンを夢見た学生時代
齋藤正勝の競争は、生まれたその日からはじまった。二卵性双生児の兄として生まれ、おかずの争奪から学校のテスト、運動、恋愛まで、すべてのライフステージで弟との競争が待っていた。
「たとえば、餃子が5個あれば3個食べられるのはどちらか1人ですから、早く食べるか、奪い取るか、何らか策が必要なわけです。だから、常に考えていたましたね、どうすれば自分が優位に立てるのかを」と齋藤は少年時代を振り返る。
齋藤は、中学、高校ともに生徒会長を務めているが、優等生だったわけではない。むしろ、その逆で、生徒会長の権限を生かして思い通りに校則を変えたり、バイトを重ねイタリア製の高級バイクに乗ったり、地元では兄弟そろって少々有名であった。
兄弟の競争は高校卒業と同時に一旦休戦となる。弟は大学へ進学せず不動産会社に就職。齋藤も親に普通科の大学へ進むことを求められたが、反対を押し切り美術大学へ進学した。
「反論もあると思いますが、天才はみんな藝大へ行くというのが僕の持論です。一流といわれる大学はいろいろありますが、そこへは努力をすれば入れるんです。でも、藝大だけは生物として本当に優れている人しか入れないと思うのです。かくいう僕も藝大にはいけなかったんですけどね」と齋藤は笑う。
多摩美術大学時代、遊びは何でもやった。その中でも一番のめり込んだのは音楽だ。キーボードとシンセサイザーの腕前はプロ級で人気バンドとツアーを一緒に回るなど本格的な活動を行っていた。とはいえ、ギャラはお小遣い程度だったので、お金には苦労させられた。
当時、シンセサイザーやシーケンサー、打ち込み用PCなどの機材が数百万円以上したため、それを購入するために肉体労働から夜のバイト、新聞の拡張営業、原油先物取引のテレアポまで、お金になるアルバイトは色々手を出した。そこまでして音楽に打ち込んだがプロへの道は険しかった。何度オーディションに参加しても結果が出ず、ついに夢を断念する。
「ちょっとうまいくらいじゃ通用しません。プロで食べて行けるのは、突き抜けている一握りの人間だけです」
ミュージシャンの道を絶たれた齋藤は、将来について祖父に相談を持ち掛けた。この時の祖父のアドバイスが、将来を決めたといっても過言ではない。テーラー職人として財を築いた祖父は資産運用を任せていた野村証券を高く評価しており、一言「これからは野村證券の時代だ」と孫の背中を押した。
会社員時代は、出世と挫折のジェットコースター
祖父の勧めを聞き入れて野村證券を受け、システム子会社の野村システムサービスに就職した。
「野村時代の5年間は人生で一番働いた時期ですね。月曜の朝カバンを持って出社して帰ってくるのは土曜日でした。とにかく仕事が楽しくてしょうがなかったんですよ」
がむしゃらに仕事をするだけではなく、美大出身のセンスを活かしてプリンター用紙を角丸にしてみたり、デザインを工夫して読みやすくしたり、クリエイティブな提案ができるところが、同期の理系出身者にはない個性として重宝され、部内での評価が高かった。
「今でこそ当たり前になっていますけど、表組みの行に白と網掛けを交互に使ったのは、たぶん僕が最初だと思うんですよ。誰に頼まれたわけでもなく、そういう仕事を楽しくしたり、良くしたりする工夫やアイデアがいくらでも湧いてくるんです」
そんな齋藤を突然悲劇が襲う。… 続きを読む
齋藤 正勝(さいとう まさかつ)
多摩美術大学芸術学部卒。1989年野村システムサービス入社、1993年第一証券入社、1998年伊藤忠商事に入社し日本オンライン証券の設立に尽力。2001年カブドットコム証券設立し執行役員情報システム部長に就任。2003年に代表取締役COO、2004年に代表執行役社長、2005年に取締役代表執行役社長に就任、以降現職
カブドットコム証券株式会社について | |
■ 事業内容 | インターネット専業証券業 |
■ 設立年月 | 1999年11月19日 |
■ 本社所在地 | 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館6F |
■ 資本金 | 71.96億円(資本準備金119.13億円) |
■ 従業員数 | 141名 |
■ 業種 | 証券業 |
■ ホームページ |
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