2018.09.14 Fri

“AI搭載のヘルスケアアプリ”を作った青年社長が狙うもの

株式会社FiNC 代表取締役 CEO 溝口 勇児 氏

 高齢化社会が進行している日本において、医療費の削減、予防医学の普及は重要な課題のひとつである。そのため、最新テクノロジーと医療を組み合わせた「ヘルステック」といわれる分野に挑戦している企業に、社会的な注目が集まっている。

 その中で、約100億の資金調達に成功し、次々とイノベーティブなサービスを打ち出しているベンチャー企業が、株式会社FiNC(フィンク)だ。10月からはさらに技術面に特化し、「株式会社FiNC Technologies」に社名変更をする

 同社が2017年にリリースした「FiNCアプリ」は、AI を活用することでユーザーひとり一人に合わせた健康や美容アドバイスを提供するヘルスケアアプリで、ダウンロード数はすでに330万を超えている。同社は人工知能に関連した出願数は100件を超え、19件の特許を取得し、NECなどと健康分野におけるソリューションの共同開発も進めている。

 同社を率いるのは、現在33歳の溝口勇児だ。溝口はヘルステックの分野を開拓する狙いについて、「医療、健康は日本の最大課題であるとともに、日本が強い分野です。ヘルステックで日本の課題を解決できれば、世界を変え、社会に大きく貢献することになります」と語る。

 しかし、溝口は元々エンジニアではなく、トレーナーの出身である。溝口はなぜ、ヘルステックで世界を目指すことにしたのか。その背景を、彼の人生の足跡とともに探る。

 

罵倒されることよりもショックだったこと

「現代ではまれに見る貧乏な家庭で育ちました」

 溝口は自身の生い立ちをこう語る。高校を中退した母親が19歳のときに、孤児院出身の父親との間に生まれたのが溝口だ。溝口が3歳のとき、母が家を出て妹と3人で暮らし始めた。生活に余裕はなく、学生の時から溝口は家計を支えるため、新聞配達や運送業の手伝いをした。

 高校に進学する気はなかったが、中卒で仕事を見つけるのにいつも苦労をしていた母の願いもあり、自分で学費を稼いで通った。在学中、知人がフィットネスクラブに勤務していたことで、トレーナーとして働きはじめる。

「体を動かすこととスポーツは好きだったので、一生懸命仕事に取り組みました。若かったこともあり、年配の方から可愛がられ、応援してもらえました。僕に会うためだけにクラブに来てくれる方もいました。

 貧乏でやさぐれた日々を歩んでいたこともあり、周囲の人に疎まれたり、邪険にされたりすることはあっても、自分が周りから必要とされていると感じられることが少ない人生だったので、この仕事をすぐに天職だと思うようになりました」

 その後もトレーナーとして働き続けた溝口だが、23歳のとき、新しくできたフィットネスクラブの経営を任されることになる。元々はトレーナーの責任者としてその店に配属されたが、経営状態が悪く、溝口にお鉢が回ってきたのだ。

 溝口の奮闘もあり、クラブの売り上げは回復した。しかし、閉鎖の方針は溝口が配属された時点で決まっていたため、店は半年で潰れてしまう。溝口は20人の従業員と50人のインストラクターやトレーナーひとり一人と面談し、そのことを伝えた。訪れる顧客に対しても、1週間ほど店の入口に立ち、謝罪し続けた。

「罵倒されたり、つかみかかられたりと辛く苦しい日々でした。でも一番辛かったのは、毎日のように来てくれていたご年配のお客様に泣かれたことです。唯一に近い居場所を奪ってしまったことが悲しく、ものすごいショックでした」

 

彼らが再建の障壁になった背景を想像したことはあるか

 ただ、最後まで逃げずに真摯に再建に尽くした溝口を、オーナーが評価。不調だった本社の再建を託される。かつては大きな利益をあげていた同社も、閉鎖したクラブに投下した5億円もの資金が消えてしまったこと、加えてリーマンショックの悪影響と競合他社の出現により、既存事業も大赤字を出す状況に陥っていた。

「とにかく再建しなきゃと、業界経営誌のバックナンバーを全て読み漁り、また業界の経営者や有識者に手当たり次第“うちの会社はこのままだとつぶれるので何とか助けてください”と必死でお願いをし、アドバイスをもらいました。業績向上につながりそうなことは、何でもやりました」

 やがて溝口が打った手が功を奏し、顧客は戻り始める。最終的に、元の水準以上の利益が出るまでになった。シニアな経営者ばかりの業界の中で、20代で会社を再建した溝口は、途端に業界の有名人になる。執筆や講演、コンサルの仕事が沢山舞い込むようになった。

 だが代償もあった。… 続きを読む

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溝口 勇児(みぞぐち ゆうじ)
高校在学中からトレーナーとして活動。今日まで数百人を超えるトップアスリートや著名人のカラダづくりに携わる。業界最年少コンサルタントとして、業績不振企業の再建や、新規事業の立ち上げにも取り組んできた。2012年4月に株式会社FiNCを創業。一般社団法人アンチエイジング学会理事。

株式会社FiNCについて
■ 事業内容アプリ事業・健康経営支援事業・EC事業・広告事業・トレーニングジム事業
■ 設立年月2012 年4月11日
■ 本社所在地東京都千代田区有楽町1丁目12−1 新有楽町ビル 5階
■ 資本金1,370百万円
■ 従業員数221名
■ 業種サービス業(ヘルスケア×IT)
■ ホームページ

https://company.finc.com/

FiNCアプリ:https://finc.com
FiNCプレミアム:https://ow.finc.com/finc_premium
FiNC for BUSINESS:https://corporate.finc.com/business/
FiNCモール: https://mall.finc.com/
FiNC ダイエット家庭教師: https://dietcoach.finc.com/
パーソナルジムFiNC Fit:http://fincfit.com/

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