2018.01.23 Tue

丸亀製麺は、わずか8坪の小さな焼き鳥店から始まった

株式会社トリドールホールディングス 代表取締役社長 粟田貴也 氏

 つるつる、もちもち。打ちたて、茹でたてにこだわる丸亀製麺は、国内に約800店舗、海外に約200店舗展開されており、今や日本が世界に誇るうどん店である。

 丸亀製麺をチェーン展開するのが、株式会社トリドールホールディングス(以下、トリドール)である。同社代表取締役社長の粟田貴也は、事業の成功を喜びつつも、それに満足する素振りは見せない。

「世界で成功している日本の企業は多くありますが、外食産業ではなかなか見当たりません。トリドールは今、日本発の世界で通用する外食企業になるための道をまい進しています」

 トリドールを“世界企業”にすることを目標に掲げる粟田だが、事業をスタートしたときには、そのようなことを語れる状況にはなかった。粟田は大学を中退し、開業資金をためて地元に焼き鳥店を開店したが、しばらくは閑古鳥が鳴く日々が続いていた。粟田は当時を「立地も深く考えず、素人同然でお店を始めたため、お客さんが来てくれませんでした」と振り返る。

 そんな“素人同然”の店長が、なぜ1,000店舗を超える外食チェーンのリーダーになれたのだろうか。

 

「仕事は我慢」と思い込む青年が、飲食業を“楽しい”と感じるまで

 粟田が生まれたのは1961年10月のこと。出生地は兵庫県神戸市だが、3歳から同県加古川市に移った。警察官である父の故郷は香川県で、小さいころは毎年のように家族で実家に訪れていたという。

 粟田が小学6年生のとき、父が病に倒れ亡くなった。母は体が弱く、フルタイムで働けなかったこともあり、その後は苦しい生活を余儀なくされた。粟田は大学の夜間部に進学し、昼間はアルバイトに精を出した。建設作業員や工場の流れ作業員など多くのアルバイトを経験するうちに、仕事というものに対し「嫌なことを我慢し、その代償に収入を得ること」と、マイナスに考えるようになった。

 その考え方が変わったのは、喫茶店でウェイターのアルバイトをしたときだった。ウェイターは客と会話することも仕事になるため「我慢」がなく、とても楽しかった。“飲食の仕事は楽しい。この道に進もう”と考えた粟田は、大学を2年で中退。喫茶店を経営する資金を得るため、給与が高い宅配会社で働き始めた。

 宅配会社の仕事は、朝早くから夜遅くまで働くという厳しいもので、粟田はくたくたになって独身寮に戻る毎日を送っていた。しかし、深夜に近所の屋台で、仕事仲間と酒を飲み、店主と話すことは楽しかった。そのうちに、屋台に行くのは空腹を満たすためではなく、カウンター越しに店主と言葉を交わすために通っているのではないかと気付き、喫茶店ではなく、居酒屋をオープンすることを決意する。

 宅配会社に約1年間務め、400万円弱の金を手にした粟田は、続けて炉端焼きのチェーン店に入る。1年ほど働き、飲食業の手習いを受けたあと、1985年8月に加古川市に焼き鳥店「トリドール 三番館」を開業。わずか8坪の小さな店だった。

 「(初めての店なのに)店名に“三番館”と付けたのは、将来、3つ店を持てればいいなと考えていたからです(笑)」

 

誰かがやっていることを追いかけても、競争に勝てない

 ところが、経営は順風満帆とはいかなかった。店の周りには古参の焼き鳥店が何軒もあり、素人同然の粟田の店に客はなかなか訪れなかった。

 ここで粟田は、ある作戦に出る。… 続きを読む

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粟田貴也(アワタ タカヤ)
1961年10月生まれ。神戸市出身。神戸市外国語大学中退。1985年、焼鳥店「トリドール三番館」を創業。1990年有限会社トリドールコーポレーション(現・株式会社トリドールホールディングス)設立。近年はセルフ式讃岐うどん専門店丸亀製麺を中心に店舗を展開。積極的に海外市場への進出を進めている。

株式会社トリドールホールディングスについて
■ 事業内容飲食業を中心とする傘下子会社の経営管理
■ 設立年月1990年6月(前身の有限会社トリドールコーポレーション設立)
■ 本社所在地兵庫県神戸市中央区小野柄通七丁目1-1 日本生命三宮駅前ビル11階
■ 資本金39億9501万3000円(2017年3月31日現在)
■ 業種飲食業
■ ホームページhttp://www.toridoll.com/

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