テレビのチャンネルを変えていると、常にテレビショッピングを放送し続けている「QVC」という放送局に辿り着いたことがある人は多いだろう。これは、テレビショッピングを24時間365日、自社スタジオから生放送している、株式会社QVCジャパンによるものだ。

 QVCジャパンは、米国の「QVC Inc.」と三井物産が合弁で設立した企業で、放送は2001年4月1日からスタートしている。取り扱う商品は、ジュエリーから衣料品、寝具、ヘルス&ビューティケア、食品まで、およそ2万4,000アイテム。本社内にコールセンターを設け、視聴者からの反響もリアルタイムに放送しており、このライブ感のある「対面販売」のようなスタイルが人気を集めている。2013年には、売上高1,000億円の大台を突破した。

 そのQVCジャパンを率いるのが、代表取締役社長の佐々木迅である。

 

テレビと共に生まれ、オリンピックを見て海外へ思いを馳せる

 佐々木は子供の頃から、テレビと妙なめぐり合わせがあった。佐々木が生まれた1953年は、NHK(日本放送協会)が日本初のテレビ放送をスタートした年。そして5歳の時には、子ども向け番組「テレビのおばちゃま」(日本テレビ系列)に出演している。

「実は内容も、自分が出演して何をやったのかも、全く覚えていないのです。ただ、スタジオはライトが物凄く強いので、とても眩しかった印象だけが残っています」

 佐々木が小学校4年生だった1964年には、東京オリンピックで日本の家庭に一気にカラーテレビが普及。佐々木家には、それとともに当時としては珍しい、ちょっとした国際化の波もやってきた。

「オリンピックの時には文化交流目的の外国人が多く日本に滞在しており、うちの家にもスウェーデンの作曲家の方が1ヶ月くらいホームステイしていました。オリンピックの開会式は、うちのテレビで一緒に見ていたのですが、彼はラジオのFEN(米軍向けのラジオ局、現AFN)の英語放送を聞いていて、その様子がとても印象的でした。間近で外国人にふれた経験が、海外への憧れにつながっていったように思います」

 大学は慶應義塾大学法学部へ進学したが「海外に行きたい」という気持ちが抑えきれなくなり、バックパッカー(低予算での海外個人自由旅行)をしながら、一人でアジアの国々を放浪した。資金を貯めるためアルバイトに励み、お金が貯まれば大きなリュックを背負って旅に出る、そんな学生生活を送った。

 初めて訪れた国は韓国。東京から下関までヒッチハイクで移動し、下関からフェリーで釜山まで渡った。「こんなに近いのに、こんなに日本と違う国があるとは」と驚き、その後1年間留学して韓国語を習得した。

 

激動の時代を海外で体験したことで身に付いた教訓

 海外への憧れは、進路にも大きな影響を与えた。1977年、大手商社の三井物産に入社すると、大阪の営業部に配属され、佐々木はスポーツウェアメーカーのPRの仕事に携わることになる。

「就職して2年ほど経った頃、取引先のスポーツメーカーの宣伝部から声がかかり『中国でCMが撮れないだろうか』という相談がありました。もちろん規制などが厳しい国ですから、何度もやり取りを繰り返してやっと許可が取れました。スポーツウェアを着たアメリカ人のモデルが、万里の長城を走るというテレビCMで、撮影が終了した時は心底ホッとしました」

 当時の中国は、文化大革命を主導した政治家が次々失脚、追放された時期。時代のうねりを間近で見た佐々木は、ある思いに至る。… 続きを読む

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佐々木 迅(ササキ ハヤシ)
1953年生まれ、東京都出身。1977年慶應義塾大学法学部を卒業し、同年三井物産株式会社に入社。1996年株式会社ムービーチャンネル取締役、1998年株式会社キッズステーション社長に就任。2000年6月、株式会社QVCジャパンの設立と主に社長に就任、現在に至る。趣味はテニスとゴルフ。

株式会社QVCジャパンについて
■ 事業内容テレビショッピングを主体とした通信販売業
■ 設立年月2000年6月
■ 本社所在地千葉県千葉市美浜区ひび野2丁目1番1
■ 資本金115億円
■ 従業員数1,600名(2015年5月現在)
■ 業種通信販売業
■ ホームページ

http://qvc.jp

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