2013.10.01 Tue

変化と向き合う経営の極意は「こだわらない」こと

ジェイアール東日本フードビジネス株式会社 代表取締役社長 明智 俊明 氏

代表取締役社長 明智 俊明

 

「エキナカ」の飲食店が持つ独特の役割

 仕事の合間や帰宅途中に、ふと目にとまる「エキナカ」のカフェ。軽くお腹を満たして次の仕事に備えたり、目的地にたどり着く前に乾いた喉を潤したりする休憩場所として、利用している人も多いのではないだろうか。

 ハンバーガー&サンドイッチ「Becker’s」、コーヒーショップ「BECK’S COFFEE SHOP」、ジューススタンド「HONEY’S BAR」をはじめ、JR東日本各線の「エキナカ」に展開する多数の飲食店舗の企画・運営を行っているのが、ジェイアール東日本フードビジネス(JEFB)である。

 JR東日本グループの中で、JEFBはファーストフードを基軸とする、駅構内における飲食事業会社として位置づけられている。ハンバーガーショップやコーヒーショップだけでなく、洋食、和食、中華など、取り扱う店舗の様式も多彩で、業務提携も含めると展開する店舗のブランドは50を超える。

「鉄道というのは、本来『輸送業』であり、駅は単なる通過点に過ぎなかったんです。駅構内での飲食事業というのは、駅という場所で、スムーズに移動してもらいながら、お客様のニーズを満たすという点で、一般的な飲食業とは若干違った役割を持って始まった、特異なサービスだと思っています」

 そう語るのは、JEFBの代表取締役社長を務める明智俊明だ。

 明智は、1977年に当時の日本国有鉄道に入社。鉄道施設系の技術者として、東北新幹線の建設や、トンネルや橋のような土木構造物のメンテナンスといった、鉄道そのものの安全性に関わる業務に携わった。その後、鉄道関連施設の合理化に伴って空いた敷地を有効活用するためのステーションホテルの建設、グループの物流会社におけるサプライチェーンマネジメント(SCM)システムの構築などを担当。2004年から2008年にはニューヨーク事務所長として海外の鉄道事業者との情報交換の責任者を務める。帰国後は東京駅をはじめとする大規模なターミナル駅の開発を推進。2012年にJEFBの社長となる直前までは、錦糸町ステーションビルの社長として、駅ビルの開発と経営に携わった。

 駅ビル開発においては、デベロッパーとしての立場でテナントを選び、アレンジすることで、ビルを訪れる人々に喜んでもらい、最大限の売上を出すことがミッションだった。JEFBにおいては、テナント経営の立場で、立地と店舗の持つポテンシャルを最大限に引き出し、利益を上げていくことが目標になる。

 

繰り返してきた「試行錯誤」

 JEFBは、設立から25年目を迎える。その間、様々な試行錯誤が行われ、出店の業態も変化してきた。駅を利用する生活者に対して「エキナカ飲食」の新しい価値を提供しようとするチャレンジは、必ずしも成功したものばかりではない。中でもJEFBにとって「大きな2つの谷」があったと明智は言う。

 そのひとつは、2004年度に取り組んだ、フレンチの著名シェフとのコラボレーションによる新業態の店舗だ。本格的なフランス料理の店舗を、エキナカに展開しようとしたこの事業にJEFBは大きな投資を行ったが、結果的に採算のめどが立たなかったという。

 もうひとつの谷は、2010年から2012年という長い期間にわたってJEFBを苦しめた。意外なのは、これがJR東日本グループ自身で展開する「エキナカ開発」の余波を受けての不振であるという点だ。この時期の不振について、明智は「JEFB自身の動きが遅かったことも原因のひとつ」とする。 発端は、JRグループが2000年に発表した「ニューフロンティア21」と呼ばれる中期経営構想だった。この計画の中で、利便性や快適性を向上させることで、駅そのものが高収益を生みだすという新しい駅づくりのコンセプト「ステーションルネッサンス」が掲げられた。
 やがて、その取り組みの成果として、「エキュート」や「グランスタ」といった新たな「エキナカ商業施設」が生まれ、注目を浴びたが、こうした新たな施設は、これまでJEFBをはじめとする駅構内事業者が多くの店舗を展開していた場所を再開発して作り上げられたものだった。
 JEFBでは、再開発に伴う店舗の閉店が増えたことで、収益に大きな打撃を受けてしまったというわけだ。

「新たな商業施設が作られた場所にあった店舗は、社内でも『横綱』と呼ばれるほどの高収益を上げているものが多かったのです。その横綱店舗の収益に依存してしまう状況があったのだと思います。再開発が大規模に進む予兆は2005年から2007年にかけて既にあったわけですから、それ以外の、駅のラッチ(改札内)やコンコースといった良い立地にある多くの店舗の収支の改善、収益構造の確立に、もっと早くから取り組んでおくべきでした」

 環境の変化に即した新たな収益構造の確立に出遅れたことから落ち込んだ収支は、様々な努力の結果、2012年に黒字に回復した。実に、3年がかりでの立て直しとなった。… 続きを読む

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明智 俊明(アケチ トシアキ)
1955年1月生まれ。1977年日本国有鉄道入社。入社以来、鉄道施設系の技術者として新幹線の建設、跳梁・トンネル等の土木構造物のメンテナンスにおいて重責を担う。2004年にはニューヨーク事務所長として、米国等での海外鉄道事業者との情報交換等の責任者を務め、2008年に帰国後、JR東日本本社にて東京駅などの大規模ターミナル開発を推進した。2010年、(株)錦糸町ステーションビル社長を経て2012年6月にジェイアール東日本フードビジネス(株)代表取締役社長に就任、現在に至る。趣味はゴルフと音楽鑑賞。

ジェイアール東日本フードビジネス株式会社について
■ 事業内容ファーストフード、和食・洋食・中華等の多様なレストランの経営など
■ 設立年月平成元年4月17日
■ 本社所在地東京都北区田端6-1-1田端ASUKAタワー13階
■ 資本金7億2,100万円
■ 従業員数社員581名、キャスト4,741名(平成24年度末)
■ 業種外食業
■ ホームページ

http://www.jefb.co.jp/

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