2013.06.11 Tue

社運をかけたプロジェクトで見せた「こだわり」

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 代表取締役社長 石坂 信也 氏

 ゴルフダイジェスト・オンライン 代表取締役社長 石坂 信也

「ドットコムブーム」末期に独立起業

 1990年代後半、世の中に普及しはじめたインターネットを利用したベンチャービジネスが数多く立ち上がった。いわゆる「ドットコムブーム」だ。日本においても、雨後の竹の子のような勢いで数多くのネットベンチャーが生まれた。このブームの末期にあたる2000年にスタートした「ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)」は、当時創業したベンチャーの中で、今でも単独の会社として事業を拡大し続けている数少ない企業のひとつだ。

 GDOの創業者であり、代表取締役社長を務める石坂信也も、ドットコムブームの盛り上がりに刺激を受け、会社員から起業家に転身した1人だった。

 「学生のころから、いずれは自分の会社を持ちたいという気持ちはあった。でもそれは、本当に漠然としたものだった」と言う石坂は、大学卒業後に三菱商事に入社。入社から7年半ほど、液化石油ガスの輸入業務や輸送船の配船業務などに携わる。その後、社費でハーバード・ビジネススクールに留学しMBAを取得するが、当時は米国におけるドットコムブームの全盛期。インターネットというツールで世の中にインパクトを与えようという気概とアイデアに溢れた学生たちの中で、大いに刺激を受けて帰国する。

 帰国後は、金融部門で企業買収やベンチャー投資などに携わるものの、起業への想いはさらに強まり、結局は同社を退社する道を選ぶ。きっかけは様々だったが、留学中に他界した父親の影響もあったのではないか、石坂はそう振り返る。

 石坂の父親は、長らく日本の大手電機メーカーに務めていたが、50歳になって突然会社を辞め、ボストンでスパコンを扱うベンチャーに参加した。亡くなる前には、日本法人の立ち上げに尽力していたという。

「長年、企業に勤めていながら『サラリーマンは性に合わない』といつも口にしているような、変わった父親でした。その父親が50歳で転身したのを見ていて、自分は、自分の意思でやりたいことへ踏み出すのに、この先30年近くは待てないという思いもあったんだろうと思います。すぐやることのリスクよりも、やらないことのリスクに対する危機感が強かったですね」

ゴルフダイジェスト・オンライン 代表取締役社長 石坂 信也 起業を決め、インターネットを軸としたビジネスプランを探っていた石坂は、米国でポピュラーになっていた「総合スポーツポータル」を日本で立ち上げようと考えた。しかし、2000年以降、ネットベンチャーの多くが資本家の期待する利益を上げられず、投資は滞りだした。「ネットバブル」が終焉を迎えたのだ。そこで、当初のプランから、より対象を絞り込み、ゴルフに特化したポータルサービスをスタートさせた。それが「GDO」だった。

 雑誌「ゴルフダイジェスト」は、ゴルファーであれば、誰もが目にし、その名を聞いたことのある、高いブランド力を持ったメディアだ。そのゴルフダイジェスト社の社長が石坂の従兄弟だった。石坂は、ゴルフポータルサイトの立ち上げにあたって、高いブランド力を持つゴルフダイジェストの名を冠する一方で、会社の形態は同社から独立した形で立ち上げたいと申し出た。

「ネットメディアを展開する上で、従来型のメディアとのかかわりを深くするよりは、反対に、従来型のメディアを知りすぎないほうが、チャレンジャーらしく型破りで、一方でネットに合った、ネットユーザーにとって自然なことができるだろう、そう思っていたのです。従兄弟は、その条件を承諾してくれました。サイトの立ち上げ当時に、このブランドを使わせてもらえたというのは、本当に大きなことでした」

 

創業時から取り組む「コンテンツマーケティング」

 GDOは、メディア事業に加え、ゴルフ用品のEコマース販売をはじめとしたリテール事業と、ネット予約や営業支援といったゴルフ場関連事業を手掛けている。この「3つの柱」は、創業から現在まで変わっていない。

「ゴルフという限定された趣味の分野で、専業のサイトを展開する以上、その中で多角化していく必要があるというのは当初から考えていました。収益源としてのそれぞれの事業が、互いに支えあいながら会社全体を回していくというモデルです」

 この「3つの柱」が存在することで、GDOはゴルファーにとって「ワンストップ」のポータルサイトとなる。リテール、ゴルフ場関連事業を展開するにあたって、メディアで提供するコンテンツが充実していることは重要な条件だった。

ゴルフダイジェスト・オンライン 代表取締役社長 石坂 信也「ゴルフ場予約やクラブの買い換えというニーズがあったとしても、それだけでは1人のお客様が年に数回しか訪れないサイトになり、発展性に限界があります。GDOでは、頻繁に訪問してもらえるような魅力的なコンテンツを提供しながら、いざゴルフ用品を買いたい、ゴルフ場の予約をしたいと思ったときに、充実した品ぞろえとサービスを提供できる環境を作っています。近年、コンテンツマーケティングといったことが盛んに言われるようになりましたが、われわれはそれを創業当時からずっと続けてきたんです。このモデルは、今後も徹底的にやり続けていきます」

 

嫌われても妥協したくなかった「レビューの徹底」

 創業から、2004年の東証マザーズ上場を経て現在まで、「常に厳しい状況と戦っていた」と石坂は振り返る。ここ数年は、特にEコマース分野での厳しさを実感していたという。総合コマースサイトや既存リテールチェーンとの競争激化による利益率の悪化などが、その要因だ。… 続きを読む

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石坂 信也(イシザカ ノブヤ)
成蹊大学卒業後、1990年に三菱商事に入社。 液化石油ガスの輸入業務、輸送船の配船業務、アジア地域への貿易及びプロジェクト推進に携わる。1999年に留学先のハーバード・ビジネススクールでMBAを取得。帰国後、同社金融企画部で企業買収、ベンチャー投資・立ち上げ業務に従事する。2000年5月にゴルフダイジェスト・オンラインを設立し、代表取締役社長に就任した。2004年に東証マザーズ上場。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインについて
■ 事業内容ゴルフ関連用品やサービスの販売、ゴルフ場の予約サービスおよび営業サポート、メディア事業
■ 設立年月2000年5月1日
■ 本社所在地東京都虎ノ門3-4-8
■ 資本金8億2,400万円(2012年12月31日現在)
■ 従業員数381名(2012年12月31日現在)
■ ホームページ

http://www.golfdigest.co.jp/

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