ちょっとした振動や、わずかな歪みを電力に変換してしまう物質がある。その名を圧電素子という。半永久的に電力を生み出し続けることから、IoTのセンサなどへの活用に向けて研究が進んでいる。

 この圧電素子を塗料化し、塗るだけであらゆるものに「発電する機能」を与える技術が開発された。それを開発したのは、プラスチック製品の設計開発から完成品の組立までを得意とする、あるメーカーだった。

 

次代の塗料が生まれたのはプラスチック工場だった

 ムネカタグループは、福島県福島市に本社を置くプラスチックメーカーで、国内3社、海外2社の5つの会社で構成されている。今回は、その主力生産拠点のひとつである福島ファクトリーを訪ねた。

 同グループでは、プラスチック製品の企画・設計から金型、成形、塗装、完成品の組立まで、製造工程すべてに対応する「統合生産システム」という生産体制を敷いている。金型だけ、成形だけと専門分野に特化したプラスチックメーカーが多い中、一社で全工程に対応するケースは珍しいという。

「一社で全工程に対応することで、各工程間の連携がスムーズになり、工程間の不要な戻りやコスト削減が期待できます。なにより、プラスチックに関する総合的な知見が得られますので、製品開発に力を入れることができますし、要望を聞いてゼロから一緒にものづくりができるというメリットもあります」(ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社 グループ企画室の宗形俊氏)

 福島ファクトリーでは、国内外のメーカーから依頼を受け、自動車、オフィス機器、映像機器などのプラスチック部品を生産している。特に自動車については、軽量化の観点からプラスチックの利用が広がっており、エンジンに空気を送り込む「インテークマニホールド」、電気自動車のバッテリーケースといったさまざまな部品を供給している。

 加えて、近年は自社ブランド製品の開発に力を入れている。代表的な製品が、異材を使わず母材を有効活用する点溶着機「インパルスウェルダー」、さらに溶着面から空気が入り込まないように密閉する内面溶着機「フラットフュージョンシステム」だ。

 圧電塗料は、次なる自社ブランド製品として、ここ、福島ファクトリーで開発が続けられている。

インパルスウェルダーとフラットフュージョンシステム

 

苦しい製造業の海外生産移転、そこから始まった
 
 なぜプラスチックメーカーのムネカタグループが圧電塗料の開発に踏み切ったのか。その理由は、日本のものづくり企業を苦しめてきた、製造業の海外生産移転にあるという。

 10年程前まで、ムネカタグループの主力事業は、液晶やプラズマなどのプラスチック製テレビ枠の製造だった。テレビは見栄えも求められる製品だが、成形したプラスチックをそのまま使うと、質素な外観になってしまう。そこで、同社では、プラスチックの表面を安価かつ高品質に仕上げるため、塗装技術の研究開発に力を入れていた。

 ところが、グローバルでの企業間競争が激しくなると、家電メーカーは製造コストを抑えるため、テレビの生産拠点を海外に移すようになっていった。さらに、プラスチック製品の塗装にかかるコストを削減するため、加工無しでも光沢や金属のような質感が出せる塗装レス樹脂製品の開発も進んだ。

 結果、ムネカタグループは、ビジネス展開の変更を余儀なくされる。当時、塗装の研究開発を担当していた海野氏は振り返る。

「私は、入社してから塗装の研究開発を専門としていたため、窮地に追い込まれていました。塗装を事業として継続するためには、これまで研究してきた成果を活かし、新しい付加価値を持った技術を生み出すしかない状況でした」

 転機が訪れたのは、海野氏が母校の山形大学を訪問したときのことだった。… 続きを読む

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ムネカタグループについて
■ 事業内容「自動車・OA機器などプラスチック成形部品製造及び成形用金型の設計・製造」 「樹脂溶着機の設計・製造・販売」 「圧電塗料を用いた製品開発」 「不動産、住宅の設計施工、OA・家電の販売」
■ 設立年月1959年3月
■ 本社所在地〒960-8506 福島県福島市蓬莱町一丁目11番1号
■ 従業員数454名 ※2018年3月時点
■ ホームページ

https://www.munekata.co.jp

https://www.munekata.co.jp/eh/ (圧電塗料紹介サイト)

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