Bizコンパス

IT戦略を語る
2015.04.23

パチンコ店の集客力を高めるデータドリブンな経営

株式会社マルハン 常務執行役員 本山 洋平 氏

 パチンコ店経営をサービス業と捉え直し、業界全体の改革に取り組んできた株式会社マルハン。20兆円市場のトップを独走する同社のIT戦略を常務執行役員の本山洋平氏が語る。

 

業界に革命を起こした「マルハンイズム」

―― 御社の事業概要と業界における強みを教えてください

 当社は、パチンコを中心とするエンターテインメント事業を展開しており、現在の売上高は2兆1,116億円、経常利益605億円(2014年3月期)の企業です。当社の強みは、3つあります。

 1つ目は「マルハンイズム」です。20年ほど前のパチンコ業界は、あまり良いイメージをもたれていませんでした。当社は、そうした業界のイメージや体質を改革するべく、“パチンコ業界を変える”という企業姿勢を持ち、大音量で流れていた軍艦マーチを止め、スタッフには制服を支給し、お客さまが入店されたら「いらっしゃいませ」、帰るときには「ありがとうございました」と挨拶することを徹底しました。

 しかし、こうした考えを多店舗展開していく中で従業員一人ひとりの意識や考え方に差が生じてくるようになりました。そこで、従業員一人ひとりの意識や考え方、目指すべき方向を揃えることが必要だと考え、社員、アルバイトスタッフを含む1,000名以上の全社員が参加する“イズムプロジェクト”を1997年に発足。550日かけて「マルハンとして大切にすべきことは何か」について徹底的に議論しました。そうして生まれたのが「マルハンイズム」です。

 これは、当社の基本的な経営指針や存在価値を示す「経営理念」と、これに基づいて目指す企業像としての「ビジョン」、社会に対する企業全体の取り組み方を表した「企業姿勢」、事業活動を通して顧客に届けるべき「提供価値」、チームとして成果を出すための「組織理念」、従業員の行動規範を記した「行動指針」、そして心構えとしての「社訓」という7つの項目で成り立っています。このイズムを記載したカードを全社員に配布し、毎朝、全店舗で唱和する取り組みを続けてきました。全社員に「マルハンイズム」が浸透していることが、当社の最大の強みだと考えています。

 2つ目の強みは、オーナー企業であることです。オーナーの一声で、正社員、アルバイトを含む1万2,000人が一気に方向転換できることは、当社の強みだと考えています。

 3つ目は、独自に開発したホールコンピュータシステムです。パチンコ業界では、業界標準のシステムがあり、当社も、以前はそれを使用していました。しかし、店舗が増えるに従い、標準システムでは対応できなくなり、ホールコンピュータの開発元に機能追加を要請したのですが対応していただけず、自社でシステムを開発したほうが早いと考えたのです。最終的に、東レエンジニアリングさまと組み、独自のホールコンピュータシステムをつくりあげました。

 このシステムは、営業データをリアルタイムに吸い上げ、翌朝には各店舗の売上高から利益、稼働状況などを“見える化”することができます。これを活用することで、他店の稼働実績と自社の状況を比較するなどが容易になり、次の一手を打てるようになりました。私どもは、今もこのシステムは業界ナンバーワンだと自負しています。

―― パチンコ業界の販促というとチラシを撒くイメージが強いですが、吸い上げたデータを活用してどのように売上増につなげるのか、教えてください

 遊技人口が減少している昨今、チラシを撒くだけでは集客は期待できません。当たり前の話と思われるかもしれませんが、データをきちんと活用して、市場や顧客の動向に合わせた店舗運営を行っていくということが大事です。たとえば、以前は新台がリリースされると全店舗に大量に導入し、これが売上増につながると考えていました。しかし、各店舗の稼働率や利益率、来客数、競合店の状況などを分析した結果、必ずしもそうではないことがわかってきました。今ではデータに基づき、店舗ごとに機種の選別や経費の振り分け、運営方針を変えることで、集客力を最適化しています。

―― パチンコ店は、コンビニのようにPOSで来店客情報を収集するのは難しいと思いますが、顧客の属性データはどのように収集するのですか

 メンバーズカードを使って玉を貯められる貯玉会員という仕組みがあり、これに入会いただく際に属性を登録していただきます。ただし、風適法の関係で、消費金額にあわせてポイントを付与するような手法が使えないので、いわゆるOne to Oneマーケティング的なレベルには達していません。

 

パチンコ業界もITなくして経営が成り立たない時代

―― 御社におけるIT部門の役割を教えてください

 約10年前までは電算課と呼んでいましたが、当時のシステムは日報がきちんと上がってくればそれでいいというレベルでした。これが情報システム部へ部署名が変わり、約5年前に位置づけもサポート部門から戦略部門に180度転換しました。今では、ITなくして経営が成り立たないといえるほど重要な部門になっています。

―― 一昔前の話かもしれませんが、パチンコ店のスタッフはITが苦手な人が多いというイメージがあります… 続きを読む… 続きを読む

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本山 洋平(もとやま ようへい)
1946年、東京出身。1969年、三菱商事入社、その後数社を経て2000年5月にマルハン入社、社長室室長を経て、2009年から情報システムを統括。
◎情報収集方法
日経新聞、日経ビジネスなどの媒体
◎コミュニケーション方法
叱るべき時はしっかり叱る。上に立つ人間は自分から話しかけないといけない。飲みニケーション
◎ストレス解消法
運動(ジョギング、ハーフマラソンは年3~4回、ゴルフ)。イタリア映画の鑑賞

株式会社マルハンについて
■ 事業内容 パチンコ、ボウリング、ゴルフ練習場、アミューズメント、シネマなどの遊技場他レジャーに関する業務の経営
■ 設立年月 1972年12月
■ 本社所在地 東京都千代田区丸の内1丁目11-1
■ 資本金 100億円
■ 従業員数 11,827名(2014年3月期)
■ 業種 サービス業
■ ホームページ

http://www.maruhan.co.jp/

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