Bizコンパス

IT戦略を語る
2015.04.16

心臓疾患に苦しむ患者さんを救うため、ITを活用する

エドワーズライフサイエンス株式会社 代表取締役社長 加藤 幸輔 氏

 人工心臓弁と血行動態モニタリングの世界的リーダーである医療機器メーカー、エドワーズライフサイエンス社。同社のIT戦略を日本法人代表取締役社長の加藤幸輔氏が語る。

 

人工心臓弁と血行動態モニタリングの世界的リーダー

―― 御社の事業概要についてご紹介をお願いします

 米国カリフォルニアに本社を構えるエドワーズライフサイエンスは、現在約100カ国で事業を展開し、2014年度売上高は23億2,300万USドルのグローバルカンパニーです。事業ドメインは、治療技術とモニタリング技術で、主要な製品は人工心臓弁等の弁膜症治療用製品と血行動態モニタリング製品です。人工心臓弁の中でも、我々が特化しているのはウシの心臓を包む心のう膜を使った生体弁です。外科弁膜症治療に使う人工弁と、開胸せずにカテーテルという細い管を使って人工弁を心臓まで送り届ける「TAVI(タビ)(経カテーテル大動脈弁治療)」用生体弁という2つの治療法に対応した製品を提供しています。これらを含む弁膜症治療用製品において我々は世界的なリーダーであり、カテーテルを用いた「TAVI」用生体弁に関しては、現在、日本で唯一の提供者です(2015年3月時点)。

 一方の血行動態モニタリング製品は、手術中やその前後、あるいは集中治療室に入っている重篤な患者さんの循環動態、たとえば体内を血液がどれくらい巡っているのか等をモニタリングするための機器です。こちらの分野でも我々が世界をリードしています。

―― 日本では現在御社しか提供していない生体弁を使用する「TAVI」について、もう少し詳しく教えてください

 心臓には4つの弁があり、その中に全身へ血液を送り出す位置にある大動脈弁という非常に重要な弁があります。この弁が、石灰化などが原因で、開きが悪くなるのが大動脈弁狭窄症です。これは心臓弁膜症のひとつで、病状が進むと、全身へと流れる血液量が少なくなるため、より多くの血液を送り出そうと心臓に負荷がかかって次第に弁だけではなく、心臓全体の病気になります。重症になると失神や突然死に至ることもあります。これは進行性の病気で、男女を問わずお年寄りの方に発症しやすい病気といえます。

―― 心臓に先天的な疾患を抱えている方でなくても、高齢になると発症する可能性があるということですか

 そうですね。かつては、先天性のものやリウマチ熱の後遺症が原因の心臓弁膜症が多かったのですが、近年、高齢化が進むにつれ、弁に動脈硬化と同じような変化が起きて硬くなり、うまく開かなくなる大動脈弁狭窄症が増えています。日本における、大動脈弁狭窄症を含む心臓弁膜症の患者数は推定200~300万人(※)とされており、高齢化が進む日本では患者数が年々増加しています。ただ動悸や息切れ、疲れやすいといった症状は老化のため、ととらえられることも多く、症状に気付かず受診に至らない患者さんが多いといわれていることも特徴といえます。

 大動脈弁狭窄症に対する従前の治療法は、薬を服用しながらの経過観察、そして重症化すると開胸して人工弁に取り替える外科的手術でした。現在もその治療法が主流ですが、ご高齢の患者さんですと、数時間の全身麻酔を用いる開胸手術に耐えられないと判断されることがあります。また、以前に別の病気で開胸手術を受けていると、癒着が起きている等で、再度の開胸手術は困難なことが少なくありません。「TAVI」は、このような患者さんに適した治療法といえます。「TAVI」は、太ももの付け根にある血管等から折りたたんだ生体弁を装着したカテーテルを入れて心臓まで運び、広げる治療法です。バルーンを使って人工弁を開くと硬化したもともとの弁が押し広げられ、それを足場に人工弁が留置され、患者さんの新たな弁として機能します。開胸を伴いませんし、心臓を止めずに治療を行えるので、患者さんの負担が少なく術後の回復が早いというメリットがあります。

(※)Nkomo et ai. Burden of valvular heart diseases: a population-based study. Lucent 2006; 368: 1005-1011の米国における弁膜症有病率を、日本の18歳以上の人口に適用し算出した推定数

―― 大変素晴らしい技術ですが事業を成長させるには、「TAVI」が増えることが必要ですよね。医療機器メーカーとして、手術を増やすために医療機関へどのような働きかけをされるのですか… 続きを読む… 続きを読む

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加藤 幸輔(かとう こうすけ)
1960年、兵庫県出身。1986年リクルート入社、リモートコンピューティング事業に携わる。1989年、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。1998年バクスター株式会社(2002年にエドワーズライフサイエンス株式会社として分社独立)に入社、2013年より現職
◎情報収集方法
仕事に直結する現実的な話より、ぶっ飛んだ話を聞き、次の一手を考える(先日は、MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏の講演を拝聴)。「MIT Technology Review」などの雑誌。業界外の方との意見交換
◎コミュニケーション方法
傾聴。人の話を最後まで聞く。国内11拠点に足を運ぶ
◎ストレス解消法
毎晩寝る前の30分、「昇運(お香)」を焚き、音楽を聴く

エドワーズライフサイエンス株式会社について
■ 事業内容 人工心臓弁(生体弁)、血行動態モニタリング機器、経カテーテル大動脈弁治療用製品などの販売・サービス
■ 設立年月 2002年10月(製品取扱は1968年)
■ 本社所在地 東京都新宿区西新宿6-10-1 日土地西新宿ビル
■ 資本金 11億3,200万円
■ 従業員数 約340名
■ 業種 卸売業(米国本社製医療機器の輸入販売)
■ ホームページ

http://www.edwards.com/jp/

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