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出版社:講談社(講談社現代新書)、発行:2018/07、定価:900円(税別)

著者:高槻 泰郎
神戸大学経済経営研究所准教授。ミクロ政策分析を専門としている。1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大阪大学大学院経済学研究科前期博士課程、東京大学大学院経済学研究科後期博士課程修了。著書に、『近世米市場の形成と展開―幕府司法と堂島米会所の発展―』(名古屋大学出版会)がある。

目次

    1.中央市場・大坂の誕生
    2.大坂米市の誕生
    3.堂島米市場の成立
    4.米切手の発行
    5.堂島米市場における取引
    6.大名の米穀検査
    7.宝暦11年の空米切手停止令
    8.空米切手問題に挑んだ江戸幕府
    9.米価低落問題に挑んだ江戸幕府
    10.江戸時代の通信革命

ダイジェスト

江戸時代の日本に“世界初の先物取引市場”が存在

 江戸時代の日本に、きわめて先進的な金融市場が存在したことをご存知だろうか。大坂堂島米市場である。この市場では、米切手という証券を利用した日経225先物などに近い仮想取引が行われており、主に海外研究者の間で「世界初の先物取引市場」と認識されている。市場経済の活性・発展の中心地となった同市場に対し、当初は抑圧的であった江戸幕府も姿勢を変え、両者は協働して米価の安定に努めていたという。その関係性は、現代の金融問題にも重要な示唆を与えてくれるだろう。

 本書では、実際に堂島米市場でどのような取引が行われ、江戸時代の市場経済や政治、社会にいかなる影響を与えていたか、また米価や財政をめぐり江戸幕府がどんなコントロールをしようとしていたかなどを、史料に基づき、金融に詳しくない人にもわかりやすく解説しながら論じている。江戸幕府は市場経済と向き合い、官民連携で様々な政策を打ち出し、社会の秩序を守るべく努力していたようだ。

 

ほぼ帳簿上のみで米の取引が完結する「帳合米商い」

 堂島米市場では米の取引に米切手を使用していた。米切手とは、1枚につき10石の米俵と交換できる“お米券”だ。実際の米をやり取りするよりもずっと扱いが簡便であったため、商人は市場での取引に専らこの証券を利用していた。

 堂島米市場が革新的であったのは、この米切手で… 続きを読む

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