田中洋が語る、世界に通じるブランディング(第2回)

なぜレッドブルは「ない市場」を創造できたのか?

2017.11.27 Mon連載バックナンバー

 2000年代中ごろに日本で販売された「レッドブル」は、エナジードリンクという新しいカテゴリーを作り出し、このカテゴリーのリーダーブランドとして君臨し続けている。しかも、自動販売機では210円(185ml、税込)というプレミアム価格を維持している。

 なぜレッドブルは、このようなマーケティングとブランディングを実現できたのだろうか。そのブランド戦略を【構想】、【スポンサードマーケティング】の2つの側面から考察してみよう。

 

なぜ日本の製薬会社のトップが高額所得者に名前を連ねているのか?

 レッドブルのビジネスはオーストリア人、ディートリッヒ・マテシッツ氏(1944~)によって創業された。氏はグローバル企業のマーケティングマネージャーとして、世界各国で多くのマーケティング経験を積んできた。

 1980年代前半、マテシッシ氏はタイのビジネスの席で、ある情報を見せられた。それは日本の高額納税者のリストだった。高額納税者の第一位は大正製薬会長の上原正吉氏である。

 日本と言えば、電化製品や自動車が有名だが、なぜ製薬会社のトップが日本の高額所得者に名前を連ねているのか? マテシッシ氏がリサーチして知ったのは、大正製薬がリポビタンDという製品を発売しており、栄養ドリンク剤が日本で巨大な市場を形成しているという事実だった。また、栄養ドリンク剤は、日本だけでなくアジア市場全体を席巻している独特のカテゴリーであったことも氏は見出した。

 タイで同じような栄養ドリンク剤のライセンスを持っている経営者を発見して、氏はコンタクトを取った。務めていた会社を辞め、1985年、新しいドリンクをタイ人経営者のチャリアオ・ユーウィッタヤー氏と、 “クラティンデーン”=「赤い雄牛」というブランド名のドリンクをタイで売り出した。このタイ語のブランド名が、のちのレッドブルのネーミングの基になる。

 

市場はない。これから創造する… 続きを読む

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田中 洋

田中 洋

中央大学ビジネススクール(大学院戦略経営研究科)教授

1951年名古屋市生まれ。京都大学博士(経済学)。日本マーケティング学会会長。マーケティング論・ブランド論・広告論・国際マーケティング論専攻。(株)電通でマーケティングディレクターとして21年間実務を経験して後、法政大学経営学部教授、コロンビア大学研究員などを経て、2008年より現職。社会人のためのビジネススクールでマーケティングとブランドの教鞭を執る。以下のグローバル企業への戦略アドバイスや社内講師を行っている。GE、マイクロソフト、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、メルセデスベンツ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、資生堂、味の素、日清食品、ソニー、日立製作所、パナソニック、ニコン、日本銀行など。

主著として『ブランド戦略論』(有斐閣より2017年11 月刊行予定)、『消費者行動論』(2015)、『マーケティングキーワードベスト50』(2014)、『ブランド戦略全書』(編著、2014)、『ブランド戦略・ケースブック』(編著、2012)、『マーケティング・リサーチ入門』(共著、2010)、『消費者行動論体系』(2008)、『企業を高めるブランド戦略』(2002)など。日本広告学会賞(3回)、中央大学学術研究奨励賞、日本マーケティング学会ベストペーパー賞、東京広告協会白川忍賞などを受賞。
(編集:株式会社ネクストアド)

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