「自由貿易」の先に待つ未来とは

日欧EPAを単純に喜べない理由

2017.08.28 Mon連載バックナンバー

 2017年7月6日、日本と欧州連合(EU)は、経済連携協定(EPA)の大枠合意に達したことを発表。この日欧EPAにより、関税が撤廃され、輸入品が安くなり、消費者に大きな恩恵をもたらすことが、多くのメディアで強調して報道されました。

 しかし日欧EPAは、必ずしも喜ばしい面だけではありません。今回は、日欧EPAのデメリットにスポットを当てます。

 

「世界最大規模のEPA」のメリットとは

 そもそもEPAとは、ある国や地域との間で、関税や企業への規制を取り払うことで物やサービスの流通を促進し、さらには投資の促進、知的財産権の保護、競争政策におけるルールづくりも行うなど、より幅広い分野での経済連携を目指すものです。日本と欧州の合計人口は6億3,000万人となり、世界でも最大規模のEPAとなります。

 日欧EPAのメリットとしては、欧州からの輸入品の関税が下げられる、もしくは撤廃されることで、一部の輸入商品の値段も下がる点があります。具体的にはチーズ、バター、脱脂粉乳、ワイン、豚肉、牛肉などが挙げられます。

 一方で、輸出側の関税も引き下げ・撤廃されることで、輸出産業のEUでの競争力が高まると期待されています。具体例としてはお茶、ブリなどの水産物、酒類、塩などです。

 さらに工業製品では、テレビに課せられていた14%の関税が、5年後に撤廃されます。同様に乗用車は、現行税率10%が7年後に撤廃され、自動車の部品も、9割以上の品目において、現行の税率である3~4.5%が即時撤廃されます。

 

未来の日本は、チョコレートや公共事業もEU企業が担う?

 以上、日欧EPAが歓迎されている理由について見てきましたが、これはあくまでも日本側のメリットだけを取り上げたものです。当然、従来のやり方が変わることによるデメリットも考えられます。

 たとえば輸入品が安くなるということは、同時に国内産業へのダメージを与えることになります。特にチーズの市場開放は、先行していた環太平洋連携協定(TPP)では米国やニュージーランドからの関税撤廃要求を拒否していたにもかかわらず、日欧EPAでは大きく譲歩しています。国内酪農産業へのダメージは少なくないでしょう。

 豚肉や牛肉については、畜産業がダメージを受けるだけでは済みません。国内の畜産業が衰退すれば、政府が補助金を出している飼料用米の売り先が無くなってしまうため、米作農家にもダメージを与えてしまいます。

 加えて、パスタやチョコレートといった加工品の関税も、11年後に撤廃されるため、これらの加工業も打撃を受けます。さらに、公共事業にもEU企業が参入するようになると、社会インフラも低価格競争に曝される可能性が高まります。

 

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地蔵 重樹

地蔵 重樹

フリーライター

ニュースサイトやオウンドメディアなどのWebコンテンツや、書籍のライティングを行う。著書に『〈アウトライン記述法〉でA4一枚の文書がサクサクつくれる本』(日本実業出版社)などがある。

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