企業と顧客の新たな関係性

大手も利用、クラウドファンディングの新たな可能性

2017.01.19 Thu連載バックナンバー

 インターネットを通じて個人・企業にプロジェクトの投資を募る「クラウドファンディング」が盛んだ。その目的は、アーティストの支援や新製品の開発、政治活動から、アート、スポーツなど多岐にわたる。

 プロジェクトに共感した人々から少額ずつ資金を集めるこの手法は、資金力に乏しいベンチャー企業にとって有効な資金調達の方法のひとつである。しかし最近では、資金調達に留まらない、初期プロモーションを兼ねるプロジェクトとしても注目されている。ファンドの開催自体が新製品の宣伝となると同時に、ファンに応援してもらい、愛着を持ってもらうための手段となり得るのだ。

 今回は、単なる資金回収に留まらない、クラウドファンディング利用のメリットについて紹介したい。

 

クラウドファンディングがアニメ業界の資金難を救う!?

 近年、アニメ作品の製作のために、クラウドファンディングで資金回収を行う例が増えている。近年の例でいうと、現在公開ヒット中の劇場用長編アニメ『この世界の片隅に』がその成功事例の一つである。

 アニメ業界は、常に資金確保に頭を抱える業界だ。TVアニメの放映や劇場公開では元が取れず、ブルーレイやDVDでの売り上げでやっとプラスになる現状だ。スタッフの賃金も安く、待遇の改善が望まれているほどである。

 アニメのクラウドファンディングの場合、主に実績のある製作者による新作制作に向けたファンドのほか、作品の別メディアへの展開や続編制作のために行われるケースが多い。「続きが見たい」「この監督や製作スタッフを応援したい」「いい作品をもっと見たい」と思うファンにアプローチし、支援を募るのだ。

 『この世界の片隅に』のクラウドファンディングは、ものづくりをテーマとしたクラウドファンディングのプラットフォーム「Makuake」で、片渕須直監督の呼びかけにより始まった。

 監督の想いに共感した支援者からは次々とファンドが集まり、プロジェクト開始からおよそ2ヵ月で支援者数の日本国内記録を塗り替えた。支援者には映画本編のエンドロールへの名前掲載などの特典があり、制作者のひとりとして間接的に作品に関わることができた。最終的にはサポーター3,374人の支援を得ることができ、目標金額としていた21,600,000円を大きく超える59,582,000円が集まった。

 集められた資金は制作スタッフの確保やパイロットフィルムの制作に使われ、2016年11月には日本全国の劇場で公開された。映画のエンドロールには、出資者の名前が刻まれている。

 公開後は評判を生み、劇場も徐々に拡大。この1月には映画雑誌「キネマ旬報」の第90回キネマ旬報ベスト・テンにて、見事日本映画1位に輝いた。公開後の11月22日には、片渕監督が海外へ渡航する資金を集めるファンドもスタートしたが、わずか11時間で目標金額である1,080万円を達成した。

 Makuakeではこのほか、人気TVアニメの続編や、地上波放送を実現するためのファンドも募集されており、いずれも目標を達成している。

 

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小島 沙穂

小島 沙穂

株式会社Playceに所属。大手電鉄グループ社内報の編集・ライティングを担当する。また、経営者や新規事業担当者をターゲットにした雑誌『事業構想』にて、連載「パイオニアの突破力」を執筆。アスリートに取材を行い、組織作りやセルフマネジメントのコツを聞き出している。http://www.playce.co.jp/

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