注目を集める最新ビジネスの裏側

宇宙旅行の料金を“半額”にする日本の技術力とは

2017.01.02 Mon連載バックナンバー

 国内の飛行場から宇宙旅行に旅立てる未来が、あと10年もしないうちにくるかもしれません。

 2016年12月、大手航空会社のANAホールディングス(以下、ANA)と大手旅行会社のH.I.S.が、次世代の宇宙輸送機の開発を進めているベンチャー企業であるPDエアロスペースに出資し、民間主導による有人宇宙機の開発で連携することを発表しました。7年後の2023年12月には、宇宙旅行を事業化し商業運行を実現することを目指すとしています。

 3社が描く「宇宙旅行ビジネスの事業化」とはどのようなものでしょうか。そして、すでにある宇宙機を購入するのではなく、独自に開発する方向へ踏み切った狙いはどこにあるのでしょうか?

 

宇宙センターの発射台ではなく「空港」が起点となる

 今回の発表内容で画期的な点が、「既存の空港を利用した宇宙旅行」ができるようになるという点です。種子島の宇宙センターで行われているような大掛かりなロケットの発射台は用いず、起点はあくまでも「空港」です。

 その裏には、前述の3社による協力体制があります。ANAはパイロットの供給や、これまでに培ってきた運行実務のノウハウの提供を行います。一方でH.I.S.は、宇宙旅行の商品化や集客で協力します。そして、その2社の出資を受けるPDエアロスペースは、繰り返して使うことができる宇宙機(旅客機)を開発します。

 PDエアロスペースは、三菱重工業やアイシン精機でエンジニアとしての実績を積んできた緒川修治氏が2007年に設立した企業です。同社が開発する旅客機は、地球と宇宙空間を何度も往復できる航空機型の機体で、空気のある大気中と真空である宇宙空間の両方で推進力を発揮できる、軽量化とメンテナンス性に優れた切り替え型エンジンを搭載します。

 このエンジンには、飛行機のようなジェットエンジン機能も搭載しているため、航空機用滑走路での離着陸が可能です。そのため、宇宙機専用の空港を新規に整備する必要がありません。宇宙旅行への費用も大幅に低価格化できるため、先行している米国の宇宙旅行ビジネスに対して差別化がはかれることになります。

 宇宙機の開発状況は、2020年までにのプロトタイプを完成させ、2023年には量産を始める予定とのこと。商業運航を開始する当初は2機で運営し、年間50人の乗客を目指すとしています。さらに、運行開始5年後の2028年には5機体制で運営し、年間1,000人の乗客を目指します。なおPDエアロスペース社は、この次世代型エンジンの特許を2012年に取得しています。

 

90分間の宇宙旅行プランとは

 この宇宙機を用いて、3社はどのような旅行プランを展開するのでしょうか。12月に行われた記者会見では、以下のようなプランが説明されました。

 まず宇宙機が地上からジェットエンジンで航空機のように単独で離陸し、高度15kmに達した段階で… 続きを読む

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地蔵 重樹

地蔵 重樹

フリーライター

ニュースサイトやオウンドメディアなどのWebコンテンツや、書籍のライティングを行う。著書に『〈アウトライン記述法〉でA4一枚の文書がサクサクつくれる本』(日本実業出版社)などがある。

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