法改正の波に乗り遅れるな!(第2回)

民法改正で「未完成だけどお金ください」が可能に?

2017.02.22 Wed連載バックナンバー

 現国会では、民法が120年ぶりの大改正を行うべく作業が進められています。国会で可決されれば、2019年に施行される見通しとなっています。前回は民法における「債権法」の改正について解説しましたが、今回は同じく民法の「報酬請求権」について詳しく紹介します。

 報酬請求権の改正は、請負契約に大きな影響を与えます。前回、改正点を解説した「契約不適合責任」が、ITベンダー側の責任を増大させる方向の改正であるのに対し、報酬請求権については、ITベンダー側を保護し、反対に顧客側の負担を増大させる方向で改正されようとしています。その意味で、報酬請求権は前回とは反対に、顧客側がより注意すべき改正だといえるでしょう。

 今回は、報酬を発生させる「仕事の完成」に関する定義を見直し、改正点を確認しましょう。

 

現行法では「仕事が完成していなければ支払請求権は発生しない」

 報酬の支払いは、顧客とITベンダーいずれにとっても重要なポイントです。現行の民法における請負契約では、「仕事の完成」の約束が報酬の成立要件の一つであるため(632条【請負】)、報酬の支払いは仕事の目的物の引渡しと同時に行う、と規定されています(633条【報酬の支払時期】)。

 これをシステム開発契約の場面に置き換えると、契約内容を満たす成果物と引き替えに、ITベンダーには報酬請求権が、顧客側には支払義務が、それぞれ発生することになります。

 しかし、現行法には、仕事を完成することができなくなった場合の請負人(ITベンダー)の「報酬」の扱いについて規定がないことから、どのように解釈すべきなのか長年の問題とされてきました。

 現行法に規定されている「報酬請求権あるいは支払義務は、仕事が完成して初めて発生する」という原則を貫くと、たとえば、ITベンダーが契約した仕事の8割を満たす成果物を作成した段階で、開発が不可能となった場合でも、「完成」はしていない以上、報酬請求権は一切発生しないということになります。

 

改正後は完成度に応じた支払い義務が発生する?

 とはいえ、完成はしていなくても8割を満たす成果物の引き渡しが可能であり、また顧客側の利益になるとすれば、8割についての報酬請求権を認めるのが「公平」の観点から望ましい場合もあるでしょう。

 そこで、債権法改正案では、第632条【請負】について、以下のような「仕事を完成することができなくなった場合等の報酬請求権」に関する条文を新設することが提案されています。… 続きを読む

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なかむら いちろう/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

なかむら いちろう/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

情報学博士・ITコンサルタント・テクニカルライター

ITと法律分野の多彩な知識を生かして「情報学」の博士号を取得し、企業や自治体でのコンサルティングや各方面での執筆をこなす。
著書に『「俺の酒が飲めねーか」は犯罪です』(講談社)、『あなたの知らない「ヘン」な法律』(三笠書房)がある。

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