グッドデザイン賞から読み解く、時代を変えたデザイン(第3回)

ボールペンなのになぜ消える?フリクションの秘密

2016.03.28 Mon連載バックナンバー

 最近、ビジネスの場でも頻繁に見かけるようになってきたのが“こすると消えるボールペン”です。その特性上、証書類や手紙の宛名など重要なやりとりに使用することはできませんが、打ち合わせ時のメモや手帳への記入など、日常的に重宝する存在となっています。現在“こすると消える筆記具”として世界中で最も普及しているのが、パイロットコーポレーションの「フリクション」シリーズです。同社の開発の歴史を見ていきましょう。

 

原点は、温度で色の変わるインク

 パイロットコーポレーションの創業は、1918年にさかのぼります。東京商船学校教授の並木良輔が、資産家である和田正雄の援助を受けて、株式会社並木製作所として創業。設立当初は木軸に14金ペンを取り付けた「パイロットペン」を売り出し、銀行や事務所などで好評を得たといいます。オフィスで使う実用的な万年筆を販売するメーカーとして、当初から注目される存在でした。

 同社は1938年(昭和13年)パイロット萬年筆株式会社と社名変更しブランド名と社名を統一。1950年には旧名古屋インキ工場を母体とするパイロットインキ株式会社を設立します。1975年、パイロットインキは「温度で色の変わるインク」、その名も「メタモカラー」を開発します。これが、後にフリクションシリーズを支える「フリクションインキ」へと進化していくのです。

 当初、メタモカラーは「温度が上がると色がゆるやかに消え、温度が下がると再びゆるやかに色が戻る」というものでした。そのため、冷たい水を入れると絵が浮かび上がる紙コップや、ビールの飲み頃がわかる温度表示や玩具など、文具以外の限られた製品への応用だけでした。しかし、その後も粘り強く研究を重ね、ついに2005年、筆記具への応用に成功します。書いた文字を付属のラバーでこすると、その摩擦熱で文字が無色になるフリクションは、こうして誕生にこぎつけました。

 

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草野 恵子

草野 恵子

フリーランス編集者、ライター

大学卒業後、音楽/IT系出版社にて雑誌や単行本等の編集を手がけたのち独立。現在はデザイン、アートなどのジャンルで編集者、ライターとしてさまざまな企画を手掛ける。著書に『ショップで見つけたとっておきの文房具』(ロコモーションパブリッシング)。昨年、編集を手がけた『かわいいドイツに、会いに行く』(久保田由希著/清流出版)が好評発売中。

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