ケータイ業界の最新動向に迫る(第38回)

なぜPHSは現在まで生き残れてきたのか?

2017.06.20 Tue連載バックナンバー

 ソフトバンクのワイモバイルブランドが展開しているPHSが、来年3月31日をもって新規契約・機種変更の受付を停止することを発表。事実上終了に向かうことが明らかとなったが、20年以上にわたって1つの通信方式が利用し続けられることは稀なことである。

 なぜPHSは、これだけ長い間生き残ることができたのだろうか。

 

サービス開始直後から深刻な危機に陥ったPHS

 多くの人がさまざまな形で接したことがあるだろう、モバイル通信方式の1つ「PHS」。コードレス電話の発展形として生まれたもので、屋内ではコードレス電話の子機として、外出中は携帯電話のようにして使えることを特徴として、日本で開発された通信方式でもある。

 そのPHSを2017年現在、唯一提供しているのはソフトバンクのワイモバイルブランド。だがそのワイモバイルが、来年3月31日をもってPHSの新規契約・機種変更を終了すると発表したのだ。その後もPHSのサービス自体は提供されるようだが、端末自体は2015年以降新機種が登場していない。事実上、PHSのサービス終了に向けソフトバンクが一歩踏み出したことは明らかだろう。

 だがPHSは、いくつかの改良が加えられているとはいえ、20年以上前に作られた通信方式であり、データ通信速度も現在のスマートフォンで利用するには性能が低すぎる。にもかかわらず、これだけ長くサービスが続いていることは、ある意味で奇跡ともいえるのではないだろうか。

 そもそもPHSがこれだけ長く利用されるきっかけとなったのは、スタート時点でのつまづきが大きかったからだと考えられる。PHSは携帯電話と比べ、インフラや端末にかかるコストが安いことから、サービスを開始した1995年当初は、携帯電話より安価に利用できるサービスとして爆発的な人気となった。だがPHSはその人気が仇となり、すぐ利用が低迷することとなる。

 その理由は、PHSの仕様上、基地局1つ当たりの電波出力が弱く、その分カバーできるエリアが狭かったためだ。1つの基地局で携帯電話は数km程度カバーできるのに対し、PHSは数百メートル程度しかカバーできなかった。

 そのため広いエリアをカバーするには整備に時間がかかるにもかかわらず、その途上でユーザーが急増したことから、利用できないエリアが多く発生。「PHSはつながらない」というイメージが定着したのに加え、PHSに対抗して料金を下げてきた携帯電話にユーザーが奪われたことで、PHSを提供する事業者は深刻な危機に陥ったのである。

 

負荷分散に優れたインフラでデータ通信の先駆けに

 そこでPHS事業者は、2つの施策によって挽回を図ろうとした。… 続きを読む

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なぜPHSは現在まで生き残れてきたのか?
佐野 正弘

佐野 正弘

ライター

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著作:『Windows&iPhone連携テクニック Windows 8.1対応』(共著、インプレスジャパン)、『今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ 大事典』(共著、技術評論社)、『ポケット百科 Xperia arc 知りたいことがズバッとわかる本』(共著、翔泳社)など

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