未来を拓く挑戦者たち(第5回)

車椅子バスケ・京谷氏が語る!挑戦と出会いの半生

2016.12.28 Wed連載バックナンバー

 Jリーガーとして将来を嘱望されながら、交通事故のために車椅子の生活となった京谷和幸氏。失意の底から車椅子バスケットボール選手を目指し、4大会連続のパラリンピック出場を果たしました。現在は、車椅子バスケットボール男子日本代表チームのアシスタントコーチ、城西国際大学サッカー部外部コーチを務めるかたわら、講演活動にも精力的に取り組んでいます。今もなお挑戦を続ける京谷氏に、人とのつながりの大切さやチャレンジすることの意義など、ビジネスの世界にも通じる貴重なお話を伺いました。

 

指導者として初めて臨んだリオ・パラリンピック

――まず、最近の京谷さんの活動をご紹介いただけますか。

 車椅子バスケットボール男子日本代表チームのアシスタントコーチとして、リオ・パラリンピックに参加しました。選手としては、シドニー、アテネ、北京、ロンドンと4大会連続で出場しましたが、指導者として参加したのは今回が初めてで、選手時代とはまた違ったプレッシャーや緊張感がありました。

 残念ながら決勝トーナメントには進めず、9位という結果でしたが、収穫は大きかったと思います。前回のロンドン大会も同じ9位でしたが、今回は内容も意味もまったく違うと感じています。世界の強豪を相手に接戦を演じ、失点率では12の参加国中第3位でした。選手たちにも、この結果は4年後の東京大会につながると伝えました。当初は6位以上を目指していたので結果には決して満足していませんし、世界の壁の高さをあらためて痛感しましたが、次に向けてのベースとなるものは確実にでき上がってきています。

 コーチとしては、選手たちに“伝える”ことの難しさを実感しました。試合中に自分がベンチで考えていることを選手たちに伝えることが難しい。会場は歓声がものすごいので、短時間に簡潔に、大きな声で伝えなければなりません。指導者の資質として、まず伝える力が重要であることを実感しました。

 リオ・パラリンピックは、どの競技会場も満員で、観客の皆さんは非常に情熱的に声援を送ってくれました。非常にいい大会だったと言えると思います。

 

夢や目標を見失っていたJリーガー時代

――これまでのことを伺いたいのですが、サッカー選手時代のことをお聞かせください。

 小学校の時にサッカーを始め、地元の室蘭大谷高校へ進んで、全国選手権にも出場しました。1991年、高校卒業と同時に東日本JR古河サッカークラブ(現在のジェフユナイテッド市原・千葉)に入団。ずっと夢だったプロのサッカー選手になることができました。しかし1993年のJリーグ開幕前にけがをしてしまい、待望の開幕をピッチ上で迎えることはできませんでした。復帰に向けてリハビリを励み、けがは治ったのですが、なかなかトップチームに上がることができませんでした。

 当時、私は「自分が一番、自分は天才だ」と本気で思っていました。ですから、試合に出られないことを周囲の人や環境のせいにしていたのです。「自分を使わない監督が悪い。俺のパスをちゃんと受けない仲間が悪い」といった具合です。さらにもっと良くなかったことは、プロ選手になれたことに満足して、その先に向かう夢や目標を失っていたことでした。それまでいろいろなものを犠牲にして、努力を重ね、子どものころからの夢を実現し、高校卒業では得られない待遇も手に入れていました。燃え尽きたというよりも、それに有頂天になって自分を見失っていたのです。

 そんな時、チームのコーチだった岡田武史さん(元サッカー日本代表監督)にかけられた言葉あります。当時、U-23のバルセロナオリンピック代表候補に入っていた私をつかまえて、「今はオリンピック代表という目標があるが、それは時期が来たら解散する。その先の目標を考えておかないと大変なことになるぞ」と言ってくれたのです。しかし、その時の私には響きませんでした。「うるせえよ」と思って聞く耳を持たなかったのですが、その言葉は心の奥に残っていて、その後の人生に大きな意味を持つようになります。

 

車椅子生活を宣告された自分を支えてくれた妻の覚悟と言葉

――交通事故のことや、その後の入院生活についてお話しいただけますか。

 事故を起こした1993年11月28日のことを忘れることはできませんし、決して忘れてはいけないと思っています。当時私は婚約しており、その日は結婚式の衣装合わせが予定されていたのですが、… 続きを読む

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田川 接也

田川 接也

フリーランス・ライター

企業の情報誌・Webサイト、自治体の広報誌などをメインに取材・原稿執筆を行う。これまでIT系の導入事例記事を多く手がけているが、ITの他、行政、教育、飲食など、幅広いフィールドにおいても活動している。

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