未来を拓く挑戦者たち(第2回)

イルカ人工尾びれ開発リーダーが語る強いチームとは

2015.10.05 Mon連載バックナンバー

 尾びれの75%を失ったイルカのフジを救いたい! 『ドルフィンブルー もう一度宙(そら)へ』という映画にもなった、イルカ人工尾びれ開発。そのプロジェクトリーダーとして活躍したのが、当時株式会社ブリヂストンで化工品材料開発部長を務めていた加藤信吾さんです。企業の社会貢献活動で、世界初の快挙を成し遂げた加藤さんは、プロジェクトを通じて多くのことを学んだと言います。昨年、イルカのフジが亡くなるまでの12年間、技術者人生の晩年に“製品”ではなく“生物”に尽くしたエンジニアにお話を伺いました。

 

技術者としての“新たな旅”に誘ってくれたイルカ「フジ」

――世界で初めて人工尾びれを付けて泳いだバンドウイルカのフジが、昨年11月、息を引き取りました

 推定45歳。イルカとしては高齢な部類に入るらしいです。われわれが2002年にフジの人工尾びれの開発に関わってから12年。新しい尾びれを着けて元気に泳ぎ回り、お客さんの前でジャンプを披露するショーも演じてくれました。尾びれの75%を切除する大病を患ったイルカとしては、幸せな晩年だったのではないでしょうか。と言いますか、そうであったと信じています。当然のことながら、フジは人工尾びれの“着心地”を一度も語ってくれませんでしたから(笑)。

 このプロジェクトの最大の関門は、まさにこの部分でした。いくら性能のよい尾びれを製作しても、フジのストレスになっていたら全く意味がありません。ブリヂストンで多くの工業製品を開発・製造してきた私にとって、大きなチャレンジでした。その意味では、技術者としての新たな旅に誘ってくれたフジにはとても感謝していますし、そのパートナーを失って寂しいというのが今の気持ちです。

――フジの尾びれ開発に関わるきっかけについて教えてください

 沖縄・美ら海水族館の獣医、植田啓一さんがイルカの肌の感触がゴムに似ていることから、ブリヂストンに話を持ってこられたのが最初です。私は当時、化工品材料開発部長として、タイヤ以外のゴム製品やゴムと他の素材を組み合わせた製品の研究・開発に携わっていました。ゴム以外の素材に詳しいことや、その接着技術にも知見があったことから、白刃の矢が立ったようです。しかし、それまで生き物を相手にした仕事の経験はありませんでしたし、本業が忙しかったので、最初は半ばお断りするつもりでした。ところが… 続きを読む

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大平 裕之

大平 裕之

リクルートとアスキーでビジネス関連の雑誌や単行本制作に携わり、多くの企業トップ・インタビューや著名人への取材執筆を行う。
フリー転向後は、記事執筆に加え、NHK「週刊こどもニュース」などのニュースショーをはじめ、テレビのクイズやドキュメンタリー番組の企画・構成にも携わる。

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