なぜ今も残る?京都花街の伝統的ビジネスシステム(第8回)

伝統は革新により創られる、京都花街のダイナミズム

2015.03.31 Tue連載バックナンバー

 3月も下旬となり、何かと慌ただしくもある年度末になりましたが、京都では四つの花街で催される春の踊りの会(舞踊公演)のトップを飾る上七軒の「北野をどり」がすでに始まっています。そうして月が替わり、祇園甲部の「都をどり」が始まり、宮川町の「京おどり」が続く頃になると、京都の市中でも桜の花が咲き誇る季節を迎えます。そして先斗町の「鴨川をどり」が初夏の訪れを告げてくれるまで踊りの会は続きます。

 この一連の踊りの会は、芸舞妓さんたちが日頃磨いた芸の研さんの結果を披露する場です。が、同時に、こういう機会に見る、自分より経験を積んできたお姉さんたちがさらに芸事に打ち込む姿に、「あんなふうになりたい」と自分の将来の姿を重ね合わせることができて初めて、年端もない女の子がやってきた見ず知らずの花街で、5年後10年後を見据えて努力ができるようになるのです。

 

コピーのコピーは劣化する

 師走から回を重ねてきた本連載も今回が最終です。ここまでお話ししてきた京都花街のおもてなしビジネスの仕組みをまとめてみたいと思います。

 今日まで350年以上も続いてきた京都花街には、お茶屋、置屋、お母さん・お姉さんという疑似家族関係、学校、一見さんお断り(お客さまの存在)といった仕組みがあることをお話ししました。そして、前回は花街にはお茶屋がさまざまなサービス素材をアウトソースする取引業者を含めた一種の共同体(花街共同体)が存在するということを図でお示ししました。

 そのようにして、京都花街はおもてなし文化を伝統としてきましたが、伝統は守るだけで伝統になるわけではありません。コピーのコピーを繰り返していくだけでは、劣化して段々とぼやけたり滲んだりしますよね。伝統は革新や改良を積み重ねてこそ維持できるのです。そして、そのためには上記のような仕組みが有効に働くことが重要です。仕組みはそれがあることだけでは有効にはなり得ず、情報と取引の関係によって、きちんとキープされること、そして、高付加価値なサービスをお客さまに提供するために、常に見直されることが一番大事です。

 仕組みがつながりながら成立していくには、お母さんやお姉さんという、長期的に後進の育成をすることに責任を結んだ人間関係と、毎年一度開示される売り上げの評価が表わす信頼関係がベースとなっています。

 

「お茶屋バー」というイノベーション

 また、変革のための新しい取り組みもなされています。現在、新しい仕組みで一番定着しているのは「お茶屋バー」というシステムです。… 続きを読む

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西尾 久美子

西尾 久美子

京都女子大学現代社会学部教授

京都生まれの京都育ち。京都府立大学卒業後、民間企業勤務を経て、滋賀大学経済学部へ社会人入学。卒業後、神戸大学大学院経営学研究科博士課程へ進み、博士(経営学)を取得。京都女子大学現代社会学部准教授を経て、2013年より現職。著書『京都花街の経営学』(東洋経済新報社)『舞妓の言葉―京都花街、人育ての極意』(東洋経済新報社)『おもてなしの仕組み―京都花街に学ぶマネジメント』(中公文庫)。ホームページ『京都花街CMS』(http://kyotohanamachi.biz/)

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