なぜ今も残る?京都花街の伝統的ビジネスシステム(第5回)

顧客の潜在的ニーズを掴む、京都花街の”座持ち”とは

2015.02.18 Wed連載バックナンバー

 全国的に寒波が襲う中、京都花街では節分恒例の「お化け※」の行事も終わりました。一年中で一番寒い季節の到来ですが、雲間からさす陽の光は確実に春が近いことを告げる明るさを増しています。芸舞妓さんたちの着物も春が感じられる色合いや柄ゆきに変化しています。

※元々は、節分の夜に厄祓いとして行われる儀式。普段と違う服装で社寺参拝をした。現代では花街版ハロウィンとも言える仮装イベントになっている。

 今回は、あるお座敷の風景からお話を始めたいと思います。前回お話した「座持ち」の実例です。座持ちとは「興を削がないように客をもてなすこと」を意味する言葉ですが、芸舞妓さんたちは、場に応じた座持ちを瞬時に提供することができます。一体、どうしたらそんなことができるのでしょうか?

 

「お座敷遊びしまひょか」

 これはある企業のみなさんを京都の料理屋さんにご案内したときの様子を図式化したものです(図1)。国内外のお客さまをもてなしたりする場合もあり、日本文化に親しんでおきたいということで企画した、京都ならではのおもてなしを体験する実地研修のような場です。図のように数人の芸舞妓さんを囲むように、お膳を前にした十数人のお客さまがコの字型に座っておられます。

 

 図の右下に位置する芸妓さんA(実際には、宴席全体に向って座り、斜め後ろ姿になっています)がこの場面のプロジェクトリーダーです。20代前半の芸妓さんで、初めてお座敷遊びをするお客さまのそばについて教えています。その左側で三味線を弾いているのが、彼女とは数か月違いの芸妓さんBで、この人がサブリーダーです(同じく宴席に向かって座り、斜め後ろ向きの姿になります)。この2人が現場のビジネスマン十数人を見ながら、舞妓さん、芸妓さんと全員5名のプロジェクトチームを動かして、お座敷で「座持ち」を発揮していく形になります。

 さて、「お座敷遊びしまひょか(しましょう)」という声が聞こえたとたんに、チームメンバーは図のような位置に座りました。なぜこのような位置に座ったのか、座持ちのための重要なわけがここにあります。… 続きを読む

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西尾 久美子

西尾 久美子

京都女子大学現代社会学部教授

京都生まれの京都育ち。京都府立大学卒業後、民間企業勤務を経て、滋賀大学経済学部へ社会人入学。卒業後、神戸大学大学院経営学研究科博士課程へ進み、博士(経営学)を取得。京都女子大学現代社会学部准教授を経て、2013年より現職。著書『京都花街の経営学』(東洋経済新報社)『舞妓の言葉―京都花街、人育ての極意』(東洋経済新報社)『おもてなしの仕組み―京都花街に学ぶマネジメント』(中公文庫)。ホームページ『京都花街CMS』(http://kyotohanamachi.biz/)

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