世界史から学ぶ国際情勢(第9回)

なぜウクライナで欧米とロシアが対立するのか?

2015.04.01 Wed連載バックナンバー

 世界終末時計をご存知だろうか? アメリカの科学雑誌 “Bulletin of the Atomic Scientists” が発表している数値で、0時を人類滅亡と定め、滅亡までの猶予を表したものだ。

 私が子供だった頃、終末時計は10分を切っていた。米ソ軍拡競争が激化した1984年には3分前となり、恐怖に震えたのを思い出す。

 1990年代に冷戦終結・ソ連崩壊等が起きて時計は17分前まで緩和された。しかし核拡散・環境破壊・原発事故等などによって終末時計は歩みを再開し、この2015年、ふたたび3分前に戻ってしまった。

 最近特に気になるのはシリアやウクライナ問題を巡って米ロの対立が新冷戦として蘇りつつある点だ。今回はウクライナ情勢と欧米・ロシアの対立について解説する。

 

欧米とロシアの間を揺れ動く政権

 まず、ウクライナ政権が親欧米派-親露派の間で揺れ動く様子を確認してみよう。

 両陣営の綱引きは2004年の大統領選にはじまる。親露派のヤヌコヴィチ氏が勝利を収めるが、不正のため最高裁は再選挙を命令。ユシチェンコ氏が逆転して親欧米政権が生まれた(オレンジ革命)。

 2010年の大統領選ではユシチェンコ氏の側近のティモシェンコ氏に対し、ヤヌコヴィチ氏が雪辱を晴らして親ロ政権が誕生。これに対してウクライナ西部で親欧米派による抗議活動が活発化する。2014年にはしばしば暴徒化し、欧米はこれをデモ、ロシアはテロであるとして互いに干渉を非難した(ウクライナ騒乱)。

 2014年になると議会は次々と反ロシア的な法改正を行い、大統領解任を決議して親欧米派による暫定政権を発足させる。憲法で定められた議会権限を超えているため大統領はこれを認めず、クーデターであると非難した。

 クリミアを中心とする東部・南部諸州はこれに反発し、今度は東部と南部でデモが頻発。クリミアでは3月にロシア編入に対する国民投票が行われ、賛成が約96%を占めたため編入を宣言した。ロシアもこれを認め、ロシア系住民の保護を名目に軍を展開。欧米はロシアの介入による不正選挙であるとして経済制裁を発動した。

 東部ではクリミアに続いてドネツク、ハリコフ、オデッサ、ルガンスクが独立を表明。暫定政権は分離独立運動をテロと断じて軍を送り、オデッサなどで犠牲者を出した。

 5月に暫定政権は大統領選を強行してポロシェンコ氏が就任。10月の最高議会選挙でも親欧米派が勝利したが、東部諸州では投票が行われていない。

 

東部・南部の住民がロシア語を話す理由

 親欧米派と親露派、あるいは西部と東部・南部はなぜこれほど仲が悪いのだろう?… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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