世界史から学ぶ国際情勢(第5回)

なぜイスラム社会は西側諸国に対抗し続けるのか?

2015.02.04 Wed連載バックナンバー

 911に代表されるように、タリバンやアルカイダ、ISIL(いわゆる「イスラム国」)の蛮行のおかげで「イスラム教=テロ」という構図が世界中に広がりつつある。そして憎しみが憎しみを呼び、さらなる争いや差別につながっている。

 そしてこれまで当事者意識の薄かった日本人もグローバル社会の中で中立の立場を取ることは難しく、日本がいったいどこを目指すのか、その選択を迫られている。「日本を標的にする」というISILの宣言はそれを端的に示しており、日本もこの「憎しみの連環」に巻き込まれつつある。

 そもそもこの憎しみはどこで生まれたものなのだろう? なぜイスラム社会は西側先進国に対して厳しい態度を崩さないのだろう?

 今回は世界史の観点からイスラム教とテロの関係について解説する。

 

直線で区切られた中東の国境線

 まずは中東の地図を見てほしい。

 「中東」というのはイランやアフガニスタン辺りからトルコ、レバノンに至る中央アジア・西アジアの一部に加えて、エジプト、スーダン、モロッコといった北アフリカのイスラム諸国とパキスタンを加えた地域をいう。

 よく見ると、モロッコ、アルジェリア、リビア、エジプト、スーダン、イスラエル、ヨルダン、レバノン、イエメン、クウェートといった国々の国境の一部が直線で区切られているのがわかるだろう。中東とアフリカを除けばほとんど見られない形状だ。

 しかも、中東のこれらの地域はメソポタミアやエジプト文明以来の長きにわたって世界最先端を行く土地だった。たとえば14世紀以降、科学や芸術が飛躍するルネサンスも、15世紀以降、西欧列強が世界征服を成し遂げる大航海時代も、中東の学問や技術を導入してはじめて可能になった。

 いったい誰がそのような土地を侵略し、直線で切り刻んだのだろう?

 

イギリスによって刻まれたアラビア半島

 中東の歴史は世界で最も古いが、中東の国境は真新しいものだ。

 土地の多くは砂漠やステップ(草原)で、緑はごくわずか。石油等の資源が見つかっていない時代には多くは価値のない土地だったし、そうした土地を行き来する遊牧民にとって、土地は誰のものでもなかった。そんな厳しい土地で、人々は部族ごとに集まって暮らしており、それこそ無数の部族があった。… 続きを読む

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長谷川 大

長谷川 大

世界遺産&旅行ライター

横浜国立大学卒業後、出版社勤務。三国志・戦国時代・幕末・ギリシア神話など、歴史ものを中心に編集・ライティングを行う。世界一周の旅を経てフリーの編集者・ライターとして活動中。これまでの訪問国数は68か国、世界遺産は182か所。All About「世界遺産」公式ガイド。http://allabout.co.jp/gm/gt/563/

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